白鳥の女王としての気品ある踊りを見せたエフセーワ、バレエ協会『白鳥の湖』
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ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
日本バレエ協会
アレキサンドル・ゴルスキー版『白鳥の湖』マリウス・プティパ/レフ・イワノフ:原振付、アレキサンドル・コルスキー:改訂振付、ワレンチン・エリザリエフ:監修
日本バレエ協会が2013都民芸術フェスティバル参加公演として、アレクサンドル・ゴルスキー版『白鳥の湖』を上演した。バレエ協会はかつて、小牧正英、島田廣、コンスタンチン・セルゲイエフ、ナターリヤ・ドゥジンスカヤ&アンナ・マリー・ホームズ、橋浦勇などによる『白鳥の湖』を上演してきた。
今回上演するゴルスキー版『白鳥の湖』は、アレクサンドル・ゴルスキーがプティパ/イワノフ版を改訂したもの。ボリショイ・バレエでは、アサフ・メッセレルが改訂したもの、およびグリゴレーヴィチ振付のヴァージョンが確立するまでは,ボリショイ・バレエ団で継承され踊られていた。道化役を初めて登場させたのもゴルスキーだったといわれている。
オデット、オディールは、マリインスキー・バレエ団のセカンド・ソリスト、エレーナ・エフセーワ、貞松浜田バレエ団の瀬島五月、酒井はな。ジークフリード王子はミハイロフスキー・バレエ団のソリスト、ミハイル・シヴァコフ、新国立劇場バレエ団の奥村康祐、新国立劇場バレエ団の厚地康雄。ロットバルトは藤野暢央、鈴木裕、河島真之というトリプル・キャストだった。私はエフセーワ、シヴァコフの組み合わせで観た。エフセーワは舞台で踊って描くラインがしっかりしており、身体のバランスもよい。何よりも白鳥の女王として、気品を保持して踊っていたところが良かった。オディールを踊るときは、薄く笑みを浮かべて踊っていたが、冷ややかな感じはあまりせず、むしろ人なつこく見えて人柄を偲ばせたのはあるいは計算違いかもしれない。シヴァコフはヴェテランらしく落ち着いて、終始、全体に配慮した安定感のある舞台だった。
演出は第1幕のパ・ド・トロワなど丁寧に細かく気を配って行われていた。第3幕冒頭は6人の花嫁候補が登場するシーンから始まり、無駄なくまとめられていた。道化は狂言回しというほどの役割は与えられておらず、宮廷の飾りに登場していてあまり効果的とは思えなかった。この演出であれば不要ではないかとも思った。ロットバルトは藤野暢央で、やや小柄ながら滑らかな動きなかなか迫力があった。しかしやはりロシア人は大きくやや分が悪かったかもしれない。
ラスト・シーンではオデットは人間の姿に戻ってジークフリード王子と結ばれる。ハッピーエンドであり、それなりに完結しており、カタルシスもあったから良かった。
(2013年3月15日 東京文化会館)