音楽性豊かなバレエを一流のダンサーが踊った「NHK バレエの饗宴 2013」
- ワールドレポート
- 東京
掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
NHK バレエの饗宴2013
『コンチェルト』ケネス・マクミラン:振付 小林紀子・バレエ・シアター
『ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ』マニュエル・ルグリ:振付 橋本清香&木本全優
『春の祭典』モーリス・ベジャール:振付 東京バレエ団
『ラプソディ』からパ・ド・ドゥ 吉田都&ロバート・テューズリー
『コッペリア』から第3幕 石井清子:振付 東京シティ・バレエ団
『白鳥の湖』から「黒鳥のパ・ド・ドゥ」 マリスス・プティパ:振付 中村祥子&ヴィスラウ・デュデック
NHKとNHKプロモーションが昨年に続いて「バレエの饗宴2013」を開催した。全体の趣旨は特に述べられてはいないが、プログラムを見ると音楽的主題のクラシック・バレエもひとつの主題とされているようだ。
まず第1部の開幕は、小林紀子バレエ・シアターがケネス・マクミランの『コンチェルト』を上演した。1966年、ベルリン・オペラ・バレエ団の芸術監督に就任して間もないマクミランが、シェスタコーヴィチの「ピアノコンチェルト第2番 ヘ長調」(1957年作曲)に振付けた作品。アレグロ、アンダンテ、アレグロの三つの楽章に分かれ、第1楽章はパ・ド・ドゥを中心に男女のグループが交錯するもの。第二楽章は、イングリッシュ・ナショナル・バレエのジェームス・ストリーターと島添亮子がプリンシパルを踊った。とりわけ島添は見事だった。軸が揺るぎなくしかも細い。ポアントの最小点で全身を支えているので身体がじつに軽やかに感じられる。小柄ながら今最も安定感があり優れた音楽性を発揮するダンサーの一人ではないかと思う。第3楽章はプリンシパル・ガールを高橋怜子が踊り、3組のカップルと8人のboyそして16人のgirlが明るくリズミカル踊った。
撮影/瀬戸秀美
マニュエル・ルグリ振付の『ドニゼッティ・パ・ド・ドゥ』はウィーン国立歌劇場バレエ団のソリスト橋本清香と準ソリストの木本全優が踊った。華やかなウィーン風の衣装が栄えるしっかりとした古典をふまえた振付。木本が全盛期のルグリを彷彿させるような力強い踊りで印象を残した。
第2部冒頭の『春の祭典』は、いうまでもなくストラヴィンスキーの曲にモーリス・ベジャールが振付た傑作。戦後の世界の舞踊史に大きな刻印を記した作品である。世界の中でも数少ないベジャールの主要作品を継承発展させている東京バレエ団が、音楽と一体になって踊った。この舞台でしか表すことのできない、独特の群舞が強烈に惹かれ合いながらも激しく対決するダイナミックな美しさに魅了された。生贄を踊ったのは、吉岡美佳と宮本祐宣だった。
吉田都は、ロバート・テューズリーとフレデリック・アシュトン振付のラフマニノフ曲の『ラプソディ』からパ・ド・ドゥを踊った。曲は良く知られる「パガニーニの主題による狂詩曲」で、この有名な激しく変化する曲調を素速い動きと軽快なステップで表わす。さすが吉田都は乱調する動きにも細やかな情感を込め、楽々と踊り、観客に優しく語りかけた。
第3部は、石井清子が振付けた東京シティ・バレエ団の『コッペリア』第三幕。「時のワルツ」「曙」「祈り」「仕事の踊り」「戦いの踊り」「結婚の踊り」「平和の踊り」が次々とレオ・ドリーブのちょっと甘さのある爽やかで郷愁をも誘う曲にのせて踊られた。「平和の踊り」を踊ったのは志賀育恵とキム・セジョン。志賀の変わらぬ愛らしさが印象だったし、セジョンの音のしないソフトランデングが見事だった。3幕だけの上演とはいえ、セットもしっかり組まれ充実した踊りが繰り広げられて、なかなか見応えがあった。
最後はベルリン国立バレエ団のプリンシパル中村祥子が、同じベルリン国立バレエ団のプリンシパル、ヴィスラウ・デュデックと『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥを踊り、締めくくった。中村は出産を経て要所で優しさとその裏面を覗かせる巧みな踊りを見せた。
(2013年3月16日 NHKホール)
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美
撮影/瀬戸秀美