ディアギレフのバレエ・リュスが甦るフォーキンの4作品をNBAバレエ団が上演

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

NBAバレエ団

『ル・カルナヴァル』ミハイル・フォーキン:振付、セルゲイ・ヴィハレフ:復元
『ポロヴェッツ人の踊り』オペラ「イーゴリ公」より ミハイル・フォーキン:振付、セルゲイ・ヴィハレフ:復元(ロプホフ版による)
『ショピニアーナ』ミハイル・フォーキン振付、セルゲイ・ヴィハレフ:復元(ワガノワ版による)
『クレオパトラ』ミハイル・フォーキン:振付、アレクサンドル・ミシューチン:再振付

NBAバレエ団の「ディアギレフの夕べ」を観た。『ル・カルナヴァル』『ポロヴェツ人の踊り』オペラ「イーゴリ公」より、『ショピニアーナ』『クレオパトラ』というプログラムだったが、いずれもミハイル・フォーキンが振付けたものに基づいt舞台だ。作品的には「フォーキンの夕べ」だが、これらの作品がどれもバレエ・リュスの初期に初演されたものなので、その時代の雰囲気や現在のバレエに与えた影響を表すためにディアギレフなのだろう。実際これらの新作を次々と発表するようなバレエ団が、現在もし活動していたら、バレエはそのジャンルを越えて大きな影響を与えるものになったかもしれない

まず上演されたのは『ル・カルナヴァル』。ドイツの作曲家ロベルト・シューマンのピアノ曲『謝肉祭』をフォーキンが舞踊化したもの。ピエロやパンタロン、アルルカン、コロンビーヌ、さらにオイゼビウス、フロレスタン、キアリーナ、エストレラなどが登場。ラストはシューマンの空想した架空の団体ダビット同盟の行進となる。それぞれのキャラクターが可愛らしく楽しい衣装を纏って、カルナヴァルが繰り広げられる中、愛と孤独に関する様々なエピソードを踊る。蝶々なども登場して、軽やかな詩情とペーソスを漂わせた作品である。セルゲイ・ヴィハレフが復元している。

「ル・カルナヴァル」撮影/高橋忠志

「ル・カルナヴァル」撮影/高橋忠志

次はアレクサンドル・ボロディンのオペラ『イーゴリ公』で踊られる「ポロヴェツ人の踊り」。これもロプホフ版をヴィハレフが復元した。ボロディンのロシアに侵入した遊牧民の大草原のエネルギーに満ち満ちた音楽を、力感あふれる群舞で縦横無尽に表した。隊形を整えたいくつかのグループの群舞を次々と重ね合わせて、重層的な効果を出し、いまにも異民族が侵略してくるかのようなスリルとエキゾティックな臨場感で、初演時にパリの観客を圧倒した迫力の片鱗が感じられた。
『ショピニアーナ』は、文字通りショパンの曲によりフォーキンが振付けた夢みるバレエ。バレエ・リュス初演の翌年、マリインスキー劇場では、アンナ・パヴロワやタマラ・カルサヴィナ、そしてヴァツラフ・ニジンスキーが踊った。ヴィハレフの復元はワガノワ版によるもの。

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

『クレオパトラ』は、1908年マリインスキー劇場で『エジプトの夜』として、アントン・アレンスキーの音楽とフォーキンの振付により初演された。翌年。ディアギレフはこれを『クレオパトラ』と改題し、グラズノフやグリンカほかの曲を加えてパリ・シャトレ座で上演した。アモン役はフォーキン自身が演じ、婚約者ビリニカをパヴロワ、クレオパトラをイダ・ルビンシュタインが演じている。
今回のミシューチンの再振付版では、クレオパトラをキエフ・バレエ団のソリスト、エリザヴェータ・チェプラソワが踊り、ビリニカは峰岸千晶(23日は田澤祥子)、アモンはジョン・ヘンリー・リード(23日はソ・ドンヒョン)だった。

物語は婚約者がいるのに、クレオパトラに完全に魅了されてしまったアモンの悲劇的愛を描いている。強烈なエキゾティズムが醸す、愛の魔力を描いたバレエだった。
ディアギレフのバレエ・リュス作品には、様々な芸術的なチャレンジがあり、それが時代を隔てて観るとまた、いっそう興味深く感じられる。このスピリットを感じて、新たな創作への意欲を燃え立たせてもらいたい、と思った。
(2013年2月24日 ゆうぽうとホール)

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

「クレオパトラ」撮影/高橋忠志

「ショピニアーナ」撮影/高橋忠志

「ショピニアーナ」撮影/高橋忠志

「ポロヴェッツ人の踊り」撮影/高橋忠志

「ポロヴェッツ人の踊り」撮影/高橋忠志

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