愛のファンタジーに仕上がったキミホ版『美女と野獣』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

ユニット・キミホ DANCE PLATFORM 2012

『Skin to Skin』『MANON』『Beauties and Beasts(美女と野獣)』キミホ・ハルバート:演出・振付

2012年には新作『マノン』を発表するなど、バレエをベースとした意欲的な創作活動を展開している、キミホ・ハルバートが主宰するユニット・キミホの3作品が上演された。

キミホと平原慎太郎が踊った『Skin to Skin』(他日公演は佐藤洋介)は、2006年に韓国で初演されたもの。人の出会いの中で皮膚が触れ合う感覚を描いたデュオである。
次は2012年3月に発表した『マノン』全幕の中から、最後のデュオ。追いつめられたマノンとデ・グリューの最後のデュオを、酒井はなと福岡雄大が踊った。身体能力の高い二人のダンサーにより、一段とダイナミックな踊りが展開されて、愛の悲劇がいっそうの高まりを見せた。

『Skin to Skin』撮影/鹿摩隆司

『Skin to Skin』撮影/鹿摩隆司

最新作は『Beauties and Beasts(美女と野獣)』。『美女と野獣』の物語にはシェイクスピアの『リア王』のような寓話的な物語の側面が含まれているが、キミホはそうした部分を強調せず、「人間はそれぞれ自分の中に美しさと醜さが混在している」「誰もが美女であり、野獣でもある」として、愛のファンタジーというか、叙情詩的な舞台に仕上げた。登場人物はフローラ、ローズ、ベルの3人姉妹とフローラの夫、ルドヴィック、ベルに恋してる男、アヴノンそして野獣。
野獣の住む森に迷い込んだ5人のうちの一人、ローズが野獣が大切にしていた一本のバラを摘んでしまう。ベルは野獣の怒りを鎮めるために館に入り、ベルに恋するアヴノンもまたベルを探しに館へ。フローラとルドヴィックは、フローラが攻撃することでしか愛せなくなっている。一本のバラを摘んだことから6人の登場人物たちの美しさと醜さのドラマが始まる......。
『美女と野獣』の物語を素材として、再構築してそれぞれのダンスはよく踊られているのだが、もうひとつ分りにくかった。
(2012年11月29日 新国立劇場 小劇場)

『マノン』撮影/鹿摩隆司

『マノン』撮影/鹿摩隆司

『美女と野獣』撮影/鹿摩隆司

『美女と野獣』撮影/鹿摩隆司

ページの先頭へ戻る