エル・フンコと石井智子がロルカを踊り圧巻だった、「カンテ・ホンドの詩」

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

石井智子スペイン舞踊団

『Lorca---Poema del Cante Jondo--- ロルカII カンテ・ホンドの詩』石井智子:振付・構成・演出・脚本、「ファンダンゴス」エル・フンコ:振付

石井智子スペイン舞踊団公演『ロルカ II カンテ・ホンドの詩』。ロルカをテーマにした舞踊公演は前回の『ロルカ---ロマンセロ ヒターノ イ ジャント』に続く第二騨だ。前回も出演したバイレのエル・フンコ、そしてギターのオスカル・ラゴ、カンテのマティアス・ロペス、エル・ガジが出演した。
全体は5部構成で、I.サエタの詩、II. 二人の乙女、III. ジプシーのシギリーヤの詩、IV.ペテネーラの図解、V. ソレアの詩、そして最後は全員で踊る「夜明け」。このうち石井智子は「二人の乙女」「叫び声」(シギリージャ)「ソレア」などを踊った。エル・フンコは「ギター」(ファルーカ)を踊り、石井智子とともに「出会い」(ファンダンゴス)を踊った。

Photo:Hiroyuki Kawashima(すべて)

Photo:Hiroyuki Kawashima(すべて)

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今回は祭りの夜から始まった。闇の中にキャンドルの光とカンテラ、蛍。美しい幕開けだった。そしてセビーリャ、黎明へと続く。「二人の乙女」では、石井がローラとアンバーロを踊り演じ分ける。しかしやはり、圧巻はエル・フンコが登場してからだろう。狼のように舞台上で精悍に動く。一見、アントニオ・ガデスに似た風貌だが、踊りはもっと素朴に直截な表現だ。ガデスには様式性、言うなればスタイリッシュなところがあったが、フンコはもっと単純だが、根源的に踊る。観客を渾身の目力で睨みつけ、可能な限りの力を込めてサパテアードを踏む。回転は稲妻のごとく素早く、身体には緩んだところが一切見えない。

Photo:Hiroyuki Kawashima(すべて)

このフンコの眼光炯々の狼の踊りが加わると、石井智子の艶やかさが一段と輝いた。そして石井もまたまけずと渾身の踊りをみせる。激しい動きの中に女性的なるものが、しっとりとたおやかに立ち昇る。そこに感じられる美しい魂が、幕開きでみたキャンドルの光りの残像なのだろうか、確かに煌めいてみえたのである。

そしてカーテンコール。フラメンコのカーテンコールでは、歌い手が独特の踊りみせて、観客を楽しませてくれる。二人の歌手とギタリストがかわいい踊りを披露した後、本番では迫真の踊りで観客を圧倒したフンコが、唄ったのだ。素晴らしい声の響きだったが、意外と高い声で少し驚いた。しかし声を聴いたことにより、何かとても人間らしく親しみが沸き、フンコの人間性を感じさせてくれてとても楽しい気持ちになった。
(2014年11月6日 日本橋劇場)

Photo:Hiroyuki Kawashima(すべて)

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