男女4人のダンサーが描く絶妙なバランスとリズムが素晴らしい、伊藤郁女の『ASOBI』
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掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
Dance New Air 2014 ダンスの明日
『ASOBI』伊藤郁女:演出・振付・出演
伊藤郁女(かおり)は、フィリップ・ドゥクフレやアンジュラン・プレルジョカージュ、シディ・ラルビ・シェルカウイなどヨーロッパの気鋭の振付家だちのグループで踊り、作品も発表している。最近ではアラン・プラテルのles ballets C de la Bで創作活動を行っている。2012年にはアラン・プラテルの『OUT OF CONTEXT - FOR PINA』を青山円形劇場で上演した際に踊っていた。(一番先に観客席から舞台に登場した)
『ASOBI』は2013年にベルギーのゲント(les ballets C de la Bの本拠地)で初演された。今年の5月にはパリのシャイヨ劇場でも上演されている。今回は日本初演となる。
ホリゾント全面が鏡面となっている素の舞台。女性2人男性2人の4人のダンサー(フランス人とハンガリー人だそうだ)が踊る。開幕当初から視線を強調した動き、ドレスが脱げそうだったり、ヒールを脱いだり、鏡に写して動きを真似たり、観客の好奇心をしきりに刺激する。やがてそれらの動きがユニゾンしたりしてダンスの動きとなる。自由な身体が動き出してやがて他人を意識し、ダンスのように見えてくる。次第に動きが激しくなりひとつの頂点にまで至る。ダンサー個々の動き(鏡の自分と交流したり、セックスしたり、自身の局部にこだわったり)と全体の動きが無原則のように見えるが、4人の集団はそれなりに自律している。そこにひとつのリズムが見えた気がした。
撮影/塚田洋一
アラン・プラテルの舞台のように、ダンサーが何かに囚われて身体のコントロールがきかなくなり、やがて暴発する、といった動き方ではない。身体は自由であり、意識的でも無意識でもコントロールはできている。全体にとても興味深く見られ、エキサイティングだった。特に4人のバランスというか、ダンサー同士の取り合わせが絶妙。4人で一つの世界を描くことに成功している、と思う。
(2014年9月13日 スパイラルホール)
「ASOBI」撮影/松本和幸(すべて)