西田佑子が大活躍する楽しくかわいい『不思議の国のアリス』
- ワールドレポート
- 東京
掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
IMA Ballet Festival
『不思議の国のアリス』松崎すみ子:演出・振付
松崎すみ子の演出・振付、西田佑子、橋本直樹、小出顕太郎が主演して、『不思議の国のアリス』が上演された。
アリスは西田佑子、うさぎは小出顕太郎、そして原作にはないアリスが憧れる青年役と黒猫役を橋本直樹が踊った。第一幕でアリスは、爽やかな青年と出会った後、木洩れ日の中で読書しているうちに夢の中に落ちる。夢の中でうさぎを追いかけて深い穴に落ち、小さくなったり、花の女王やミツバチ、いもむしと出会ったり、クレイジー・ティーパーティに巻き込まれたりする。そして「ほのかな想い」のシーンでは、青年と叙情的な素敵なパ・ド・ドゥを踊る。西田佑子は一段とほっそりとして少女らしい軽さがあってとても良かった。ヴィジュアルの役創りも巧みで、そうか、と思わず頷くようなアリス像を描いた。彼女自身のキャラクターを「不思議の国のアリス」に溶け込ませて、魅力的だった。橋本直樹も優しさのある踊りで応え、とても好感のもてるデュエットを創った。初共演だと思うがこれからももっと踊ってほしいペアだ。
撮影/塚田洋一
第二幕の「トランプ王国」はハートの女王、ハートの王様とその兵隊、ジョーカー、ダイヤ、スペード、クローバーのキング、クィーン、王子とその兵隊そしてアリスとうさぎが入り混じっての大スペクタクルだった。客席も使って劇場全体にトランプが溢れ出して、ちょっとはらはらさせられる楽しさいっぱいの、とてもおもしろい時間を楽しむことができた。
エピローグではうたた寝から目覚めたアリスが、あまりに静かな現実にちょっと驚いたようでもあって、可愛らしいエンディングが印象に残った。明るく闊達で不思議が大好きな少女しか持ち得ない奔放な空想の世界を、西田アリスが見事に演じ踊って、忘れた難い公演になった。
(2014年8月10日 光が丘 IMA ホール)
撮影/塚田洋一(すべて)