堀内元・堀内充がそれぞれ楽しい2作品披露した、「バレエ・コレクション2014」

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

堀内元・堀内充 Ballet COLLECTION 2014

『ジャズコンポとオーケストラの会話』『Flow song』堀内充:振付
『Once in a Blue Moon 』『More Morra』堀内元:振付

「堀内元・堀内充 バレエ・コレクション2014」公演は、男女18名のダンサーのシルエットで幕が開いた。ふたりの父・堀内完のお気に入りの『ジャズコンポとオーケストラの対話』(ハワード・ブルーベックの曲)を基に、堀内充が振付けた作品で、堀内元と堀内充が20年ぶりに同じ舞台に立つ公演が始まったのだ。

スタッカートな動きをアクセントにした、モダンで明るく颯爽とした動き。背景が、昼から月明かり、星空、そして暗闇というふうに変化する中で、1対3や3組のペアによる踊りなどが、軽快なテンポで繰り広げられる。力みや無理がなく、滑らかでスムーズな踊りだ。ダンサーたちは、前半の白に黒いラインが入った衣装から、後半は黒に白いラインが入った衣装に着替えた。オーケストラに合わせたフォーメーションの華やかな動きもよかったが、やはりジャズの自由な心が楽しくなる動きが良かった。構成にも適度の変化が感じられて飽きさせず、音楽と動きのバランスがとれており、洗練された自由が心地良かった。ただひとつひとつのシーンの重さが同じくらいだったので、テンポは良かったが少し物足りない気もしないではなかった。全体のバランスが難しいところだが、元々が父上の作品だったから、少し気を使い過ぎたのかもしれない。

『ジャズコンポとオーケストラの会話』撮影:木本 忍

『ジャズコンポとオーケストラの会話』撮影:木本 忍

『Flower song』は、ジョルジュ・ビゼーの曲を使ったデュエット。ブランコに揺られていた女性(行友裕子)が垣間見た幻影だろうか、闇の中から黒い衣装の充が現れて踊る。速いピルエット、充の俊敏な速い動きに魅せられた。ちょっと『薔薇の精』を思わせる小品だが、もっと大人の愛のメルヘンという印象だった。

堀内元と堀内充 撮影:木本由紀子

撮影:木本由紀子

サティの曲で踊る『Once in a Blue Moon』は、堀内元が一人で気分良く踊っていると、バレリーナが現れる。一緒に踊るうちに彼女は消え、また現れる......。ダンスに没頭していたら、ダンスの精に出会った、といった堀内元の人生のひとときを、さり気なくユーモアを織り込んで見せた素敵な作品だった。堀内元のダンスを踊ることの喜びが、自然にあふれる踊りがこの上なく楽しかった。バリシニコフを彷彿させるディテールまで神経が行き届いた細やかな表現が作る踊りが見事。あの小柄な身体でゆうゆうとソロを踊って、舞台全面を充実した空間に変貌させ、観客を魅入らせた実力はさすが。

最後は堀内元振付の『More Morra』。音楽はJoe Morra。プリンシパルは小川友梨、持田耕史。パーカションを主体とした音楽。3つのパートに分かれていたが、最初は1組対6組のペアなど豪快な踊りが見られた。そして音楽がドラムのソロになると、舞台中央のスポットに浮かび上がった小川のソロ。ここも思い切った変換が成功している。このパートでは1対6の編成を組んだ女性ダンサーの踊りが印象に残った。
最後のパートは、真っ赤な照明の中の踊りが、強烈な音とともに舞台全面が白色灯の照明に変わり、再び真っ赤な光に戻る、という、際立ったコントラストを見せ、日常と非日常、現実と幻想といった二元的な往来の中でダンスを展開した。休憩前に踊られた、『Once in a Blue Moon』とはまた、趣の異なった力感が漲る振付だった。Morraの音楽を超える大胆な動きの構成を創って、友人の音楽家Morraに、さらにクリエイティヴな刺激を与える舞台だった。
堀内元・堀内充の舞台を観るたびに思うのだが、これ見よがしの演出や振りがなく、無駄な力の抜けたダンスで気持ちが良い。人間やはり余裕である。
(2014年5月30日 めぐろパーシモンホール)

『More Morra』撮影:木本 忍

『More Morra』撮影:木本 忍

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