男性ダンサーの活気ある踊りと中川郁の演技が楽しかった牧阿佐美バレヱ団の『三銃士』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

牧阿佐美バレヱ団

『三銃士』アンドレ・プロコフスキー:演出・振付

牧阿佐美バレヱ団の『三銃士』は、冒頭から男性ダンサーたちが華々しく踊り、活気にあふれた舞台だ。ジュゼッペ・ヴェルディの音楽(ガイ・ウールフェンデン編曲)も威勢がいいので大いに盛り上がる。

菊地研は田舎から出てきたエネルギーに満ち満ちた剣士ダルタニアンを熱演。バレエ全体にも勢いをつける踊りだった。ダルタニアン+三銃士VS枢機卿護衛隊のチャンバラもなかなかパワフルで見応えがあった。男性ダンサーは、脇役には小島直也のルイ13世をはじめ、バッキンガム公爵の中家正博、リシュリュー枢機卿の保坂アントン慶、ロシュフォールの塚田渉が控え、全体にのびのびと踊った。三銃士のポルトス(清瀧千晴)、アトス(篠宮佑一)、アラミス(上原大也)も活気ある踊りで、それぞれのキャラクターも少し加味しながら闊達な踊りだった。

『三銃士』菊地研 撮影/山廣 康夫

菊地研 撮影/山廣 康夫

中川郁が演じた枢機卿側の女スパイ、ミレディは見せ場の多い役。第2幕の枢機卿の目の前で、アンヌ王妃(吉岡まな美)のネックレスを見つけ、それを奪い取ってついには殺すまで長い演舞を見せるシーンがあり、続いてロシュフォールに変装して現れたダルタニアンに、騙されてネックレスを奪い返されるシーンまで踊った。シーンとして登場人物の様々の局面を演じ、踊らなければならず、観客にストーリーを理解させなければならないというプレッシャーも感じただろうが、堂々と見事に踊りきった。女スパイらしい妖しさもしっかり表して魅力的だったが、敢えて欲を言えば、もう少しスパイとしてさり気なく振る舞ってみせている面も表わしてほしかった。少し力が入り過ぎていたのかもしれない。しかし、昨年末の『くるみ割り人形』で雪の女王に抜擢されたばかりの舞台だそうだから、じつにたいしたものと感心した。
コンスタンスに扮した青山季可は、ダルタニヤンに一目惚れされて強く愛される役どころ。よく踊っていたが、このロマンスのほうは剣戟の激しさに少し押され気味だった。
ストーリーの展開は爽やかで小気味良い。プロコフスキーの才能を感じさせる振付で、それにまた、牧阿佐美バレヱ団のダンサーが応えて元気いっぱいに踊り、良質のエンターテイメントを充分に堪能した。バレエならではのスペクタルが見られて満足だった。
(2014年3月9日 ゆうぽうとホール)

『三銃士』撮影/鹿摩隆司

撮影/鹿摩隆司

『三銃士』中川都 撮影/山廣 康夫

中川都 撮影/山廣 康夫

『三銃士』青山季可、菊地研 撮影/山廣 康夫

青山季可、菊地研 撮影/山廣 康夫

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