酒井はなのジュリエッタと浅田良和のホフマンが魅力的な物語世界を表した『ホフマンの恋』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

「Ballet クレアシオン」バレエ協会

『ホフマンの恋』伊藤範子:振付

バレエ協会主催「Ballet クレアシオン」公演の伊藤範子振付の『ホフマンの恋』を見た。2014年に世田谷クラシックバレエ連盟公演で初演された作品の、キャストを一部替えた再演である。
伊藤は13年の『道化師〜パリアッチ〜』、14年『ホフマンの恋』、今年に入ってからは『Ballet Princessーバレエの世界のお姫様たち』、9月の谷桃子追悼公演の『追憶』などの振付作品を発表し、今回は『ホフマンの恋』が再演されるなど、新進の振付家として活発に活動している。現在は文化庁海外特別研修により、ミラノ・スカラ座で腕を磨いている。

『ホフマンの恋』はそのタイトルからもわかるように、19世紀のドイツに生まれフランスで活躍した作曲家、ジャック・オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』に基づいて創作されたバレエ。音楽は、オッフェンバックが作曲した楽曲から選んだ曲を、伊藤が新たに構成し、物語は、『ホフマン物語』に登場するホフマンの三つの過去と現在進行形の恋を描いている(アントニアとホフマンのパ・ド・ドゥだけはチャイコフスキーの曲を使用) 。
踊りは、悪魔(コッペリウス=堀登)が作った人形のオランピア(宮嵜万央里)とは人形振り、悪魔(医者)にそそのかされて歌手として命を絶つアントニア(佐藤麻利香)とは、クラシカルなパ・ド・ドゥ。ジュリエッタ(酒井はな)とは身も心も誘惑される踊り、と変化に富んで魅せた。特に、終盤にオッフェンバック作曲のバレエ音楽「ゲテ・パリジェンヌ」を使って盛り上げ、酒井はなが遺憾なく実力を発揮して、観客を魅了した振付は見事だった。

「Ballet クレアシオン」バレエ協会『ホフマンの恋』 堀登、浅田良和、酒井はな(左から) 撮影/根本浩太郎 スタッフ・テス

堀登、浅田良和、酒井はな(左から)
撮影/根本浩太郎 スタッフ・テス

ホフマン(浅田良和)が過去の三つの恋を失った物語を語り終わった時に、現在進行形だった恋も終わりを告げる、といういささか自虐的とも言える結末となる。さらに、これらの失恋を糧に詩人として創作に生きていこう、というエンディングが付与され、冒頭から終始ホフマンに付き従ってきた友人(天使=堀沢悠子)の存在がうまく生きた。初演のキャストでもある浅田良和の落ち着いた踊りと、巧妙な演技が見事に物語を説得力あるものとしている。オッフェンバックのオペラに基づいているのだが、なかなか洒脱な展開だった。
(2016年11月5日 メルパルクホール)

「Ballet クレアシオン」バレエ協会『ホフマンの恋』 撮影/根本浩太郎スタッフ・テス

撮影/根本浩太郎 スタッフ・テス

「Ballet クレアシオン」バレエ協会『ホフマンの恋』 撮影/根本浩太郎 スタッフ・テス

撮影/根本浩太郎 スタッフ・テス

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