『ライモンダ』第3幕と『ボレロ』が踊られた牧阿佐美バレヱ団60周年記念第1弾「Unfogettable Nights」

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

牧阿佐美バレヱ団「Unfogettable Nights」

『ライモンダ』第3幕三谷恭三:改訂演出振付、テリー・ウエストモーランド:振付(マリウス・プティパ版による)、LE VELVETS+ASAMI MAKI BALLET ル・ヴェルヴェッツ:歌、三谷恭三:振付、『ボレロ』ピーター・ブロイヤー:振付

牧阿佐美バレヱ団60周年記念公演シリーズ1は「Unforgettable Evening」という題名の公演だった。これは文京シビックホール15周年記念公演でもある。

まずは、『ライモンダ』第3幕婚礼の場。この幕はしばしば独立して上演され、人気がある。とりわけ、チャルダッシュやマズルカの華やかな民族舞踊風の踊り、グラン・パの豪華絢爛のダンスが圧巻の見せ場となる。牧阿佐美バレヱ団の『ライモンダ』は、英国ロイヤル・バレエ団で踊ったテリー・ウエストモーランド版を、三谷恭三が改訂演出振付けたヴァージョン。古典的なスタイルを残す整然とした振付で通俗的な表現がなく、粛々と展開されるといった趣である。
伊藤友季子のライモンダと菊地研のシャン・ド・ブリエンヌだった。もう1組のキャストは、日高有梨とラグワスレン・オトゴンニャムで、ヴァリエーションは両日とも青山季可。

「ライモンダ」撮影/鹿摩隆司

「ライモンダ」撮影/鹿摩隆司

どの舞台もそうかもしれないが、特にこうした演出振付では観客は、主役のダンサーたちのリズムを感じながら、それに寄り添って物語世界を感じていく。そして要所でドラマを感じる。牧阿佐美バレヱ団は、NHKバレエの饗宴の『パキータ』もそうだったが、舞台に豪華さを現出する術に長けている。むろん、パ・ド・カトル、パ・ド・トロワも良かった。やはりそれだけの実力を秘めたソリストが多彩に揃っている、ということであろう。

青山季可 撮影/鹿摩隆司

青山季可 撮影/鹿摩隆司

伊藤友季子、菊地研 撮影/山廣康夫

伊藤友季子、菊地研 撮影/山廣康夫

日高有梨、ラグワスレン・オトゴンニャム 撮影/鹿摩隆司

日高有梨、ラグワスレン・オトゴンニャム
撮影/鹿摩隆司

続いてLE VELVETS+ASAMI MAKI BALLET 。ル・ヴェルヴェッツというテノール3人とバリトン2人の男性歌手のグループの歌と、バレエダンサーのパフォーマンスである。「'O Sole Mio」など6曲が歌われた。

LE VELVETS 撮影/鹿摩隆司

LE VELVETS 撮影/鹿摩隆司

撮影/鹿摩隆司

最後はピーター・ブロイヤー振付の『ボレロ』。オーストリアの医師で小説家のアルトゥル・シュニッツラーの戯曲『輪舞』に基づく全幕バレエの最後に踊られる曲だという。手元の資料によると、ブロイヤーは1985年の世界バレエフェスティバルにクラウディア・ユングとともに参加して『パリの炎』、自身が振付けた『運命』『バヴァリアより愛を込めて』を踊っている。ロンドン・フェスティバル・バレエ、ベルリン・ドイツ・オペラなどで踊り、振付作品は、『チャイコフスキー』『ペールギュント』『テレーズ・ラカン』など多数あり、最近では『マリー・アントワネット』、ロック・バレエ『ダンス・サティスファクション』を発表している。現在はザルツブルク・バレエ団のディレクターである。

「ボレロ」撮影/鹿摩隆司

「ボレロ」撮影/鹿摩隆司

『ボレロ』は2003年に、ザルツブルク・バレエ団のために振付けた。「人間のありとあらゆる関係性が、抽象的な昇華ではあるが、それが極めて官能的、感情的に表現されている」と自身で解説している。
客席に背を向けた状態で踊る振付を多用し、ダンサーは男性も女性も赤紫色のタイツを着けて踊る。マスで描くというか、ひとつひとつのグループの動きを構成して、『ボレロ』の音楽の世界と共鳴していく、という方法だった。動き自体はさほど特徴的なものは感じられなかったが、全体に上手くまとめられていた。
(2015年5月30日 文京シビックホール)

「ボレロ」撮影/鹿摩隆司

「ボレロ」撮影/鹿摩隆司

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