堀内元と堀内充によるソフィスティケイトされて楽しく美しい3作品の花が咲き競った

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

堀内元・堀内充 BALLET COLLECTION 2015

『Lights』『夕星(ゆうづつ)のうた』堀内充:振付、『Romantique』堀内元:振付

3年目を迎えた堀内元と堀内充による「バレエコレクション」公演が、めぐろパーシモンホールで開催された。毎回、オーディションで募られたダンサーたちによる公演である。今回は堀内充振付の2作品と堀内元振付の『Romantique』が上演された。

まず、堀内充振付の『Lights』。若手ダンサーたちのために大学の舞踊公演などで踊られていた作品を、さらに改訂振付した舞台だそうだ。淡いブルーのメタリックのレオタードを着けた4人の女性ダンサーとベージュの衣装を着けた20人のダンサーが交互に登場して踊る。音楽はヴィヴァルディとバッハだが、それぞれの曲想を生かした踊りが展開する。レオタードのダンサーは暗く悲哀を秘めた情感を湛え、ベージュの衣装のダンサーたちは軽快に生きる喜びを表す踊りだが、終局で混じり合って輻輳したダンスシーンを見せた。

「Lights」 撮影/木本由紀子

「Lights」撮影/木本由紀子

『夕星(ゆうづつ)の星』は1997年初演。堀内充が振付けて、行友裕子と二人で踊った。ワーグナーのオペラ『タンホイザー』第3幕から、ヴォルフラムが夜空の夕星に向かって愛するエリザベートの旅の無事を祈るアリアを踊った作品である。ダイヤモンドを散りばめたような美しい夜空を背景に、夢みるような優しさの溢れるデュエットだった。

最後は堀内元が自身が芸術監督を務めるセントルイス・バレエ団に振付けたヒット作品『Romantique』。音楽は堀内元の友人でもあるクロード・ボーリングの曲で、クラシックやジャズ風の曲がメドレーのように速いテンポで次々と展開する音楽。
まず、ショートパンツにハイソックスを履いた主役の堀内元が、幕前に現れステージの中央に向かって歩くと幕が開く。そして1人、暗闇の中に横たわると上手奥より、彼が想い描いていたかのような女性ダンサー(谷口愛海)が姿を現す。やがて二人はデュエットを踊り、彼の喜びが溢れてくると、それを表すように彼と同じスタイルの6人の男性ダンサーがいっせいに舞台に現れ、男性7人の踊りとなる。同じように女性も6のダンサーが登場して7人の踊りとなる。そして後半は、カップルや男性、女性が次々と踊る。バランシン譲りのスピード感溢れる展開で、爽快感に満ちた舞台で、いわば「万華鏡的愛の幻想」をじつに巧みに表しているのだ。音楽との一体感もまた見事。時折まじえられるモダンジャズ調のリズムが、素晴らしいアクセントとなって踊りをひきたてて立体感ある舞台を作り、観客をどんどん引き込んでいく。めくるめくうちに時が刻まれ、嵐のような喝采か浴びせられた。
以前にも書いたが、私は「孫悟空の分身の術」のように、さっと主人公の6人の分身が舞台に現れる冒頭部分がとても好き。 まさに『Romantique』 というタイトルに相応しく、見事にソフィスティケイトされた魅惑的表現である。
(2015年5月28日 目黒パーシモンホール)

「夕星のうた」行友裕子、堀内充 撮影/木本 忍

「夕星のうた」行友裕子、堀内充 撮影/木本 忍

カーテンコール 堀内元、堀内充 撮影/木本由紀子

カーテンコール 堀内元、堀内充 撮影/木本由紀子

「Romantique」 撮影/木本由紀子

「Romantique」 撮影/木本由紀子

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