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男性ダンサーと女性ダンサーが競い合うかのように闊達に踊った、熊川哲也版『海賊』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

K バレエ カンパニー

『海賊』熊川哲也:演出・再振付、マリウス・プティパ:原振付

K バレエ カンパニーが熊川哲也版『海賊』を15周年記念公演のクライマックスとして3年振りに上演した。初演は2007年だった。
『海賊』というバレエは、メドーラとアリのパ・ド・ドゥだけが踊られてきて、決定的なヴァージョンが残されておらず、歴史的資料も少ないといわれる。K バレエ カンパニーの『海賊』は、1955年にサンクトペテルブルクのマールイ劇場で初演されたスロニムスキーとグーセフの台本を熊川が改訂した。また、アダン、ドリーブ、ドリゴ、オルデンブルク公爵、プーニ、ミンクスら6人の音楽家の楽曲を再構成している。舞台美術・衣裳は、ヨランダ・ソナベント、レズリー・トラヴァース。

私は、白石あゆ美のメドーラ、宮尾俊太郎のコンラッド、福田昂平のアリで観ることができた。今回の公演では、このキャスト以外にもニーナ・アナニアシヴィリ(2013年に『白鳥の湖』にも出演した)と中村祥子(2012年にメドーラを踊った)がゲストプリンシパルとして出演している。そのほかにもグルナーラを浅野真由香、小林美奈、アリを池本祥真、井澤諒が踊るというフレッシュなキャストも組まれていた。

熊川哲也版の『海賊』は、メドーラとグルナーラを姉妹として設定するなど巧みに改訂されているが、全編を通して若手の男性ダンサーたちの力感溢れる踊りが、ひとつの特徴となっている。

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

撮影/小川峻毅(すべて)

特に第2幕の最初のシーンは際立っていて、男性のコール・ド・バレエとソリストが大活躍だった。中でも兼城将がくせ者ぶりをなかなか良く表現したビルバンドの、ピストルを放埒に放ちながら踊るヴァリエーションは出色だった。そして最大の見所であるアリ、コンラッド、メドーラのパ・ド・トロワが盛大に踊られる。
また、その間に踊られた女性ダンサーのパ・ド・トロワ(新居田ゆり、戸田梨沙子、小林美奈)もとても良かった。清新な若さと弾けるような心地良いリズム感覚、上手くアクセントを付けた振付が魅力をいっそう高めた。そして勇猛な男性ダンサーたちの踊りと鮮やかなコントラストを描いて、このシーン全体のバランスを上手く整えていた。
福田昂平のアリは素晴らしい。若々しいラインが美しく描かれ、身体のリズムが音楽と共振しているのが脈々と伝わってきた。ただ、このアリという登場人物は、初期の『海賊』には登場しておらず、後世につけ加えられた、ともいわれている。だとすると、『海賊』という作品が発展していく途上につけ加えられて、今日まで踊り続けられているわけなので、さらに掘り下げて描けば、いっそうおもしろいのではないか、と思う。つまり、『海賊』という作品のひとつの問題点として、アリの精神の気高さは友情なのか、コンラッドへのロイヤリティなのか、あるいはメドーラへの胸中に密かに秘めた想いによるのか、ということがあるのではないか、とも思う。熊川版では、アリはロイヤリティ(loyarity)を遵守する、気高く美しい精神の象徴として、極めてドラマティックに描かれていた。
(2015年5月30日 オーチャードホール)

K バレエ カンパニー『海賊』宮尾俊太郎 撮影/小川峻毅

宮尾俊太郎

K バレエ カンパニー『海賊』福田昂平 撮影/小川峻毅

福田昂平

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』白石あゆ美 撮影/小川峻毅

白石あゆ美

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅

K バレエ カンパニー『海賊』 撮影/小川峻毅(すべて)

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