今を時めく6人の女性ダンサーと笠井叡が競演した、ダンスの極北に到達する試み「今晩は荒れ模様」
- ワールドレポート
- 東京
掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
『今晩は荒れ模様』
笠井叡:構成、演出、振付
笠井叡、上村なおか、黒田育世、白河直子、寺田みさこ、森下真樹、山田せつ子:出演
笠井叡の構成・演出・振付による最新作『今晩は荒れ模様』を観た。6人の今を時めく「希有な」女性ダンサーと笠井自身が踊る、という今日的な意欲溢れる舞台である。
笠井は「戦争とは、過去の男性文化の最も醜悪な遺物」であり、「これを乗り越え、歴史に新しい地平を拓くのは、すべての文化民族をつなぐことの出来る女性の生命的な力」であるという。まさにその「生命的な力」を舞台に体現することができる、女性ダンサーたちと笠井自身が花々しく競演し、ダンスのひとつの極北を描こうする試みだった、といってもよいのではないだろうか。
まずは、客席に控えていた白いスーツ姿の笠井が踊り、「黒い太陽が支配する云々」と言った台詞を叫んで、「くろだ」「いくよ!」と呼び出すと、黒いトップと黒いチュチュの黒田育世が燃え盛る太陽のような激しい運動を踊り、この世のすべてを暗黒に包んだ。続いて寺田みさこはポワントを履いて関節を極度に使って、屈折し傷ついた命を表す踊り。黒田が再び登場して、寺田はワンピースに着替え二人が踊る。黒い太陽と月の相克だろうか。
そして金髪の森下真樹と黒髪の上村なおかが華やかな衣装を着けて踊った。時折、断片的な言葉を叫ぶ。(タイトルとこれらの言葉は白石かずこの詩集からの引用 ) ここでは女性の「生命的な力」こそが唯一、暗黒の太陽に立ち向かうことができると主張しているよう。
続いてロングドレスを着けた白河直子の踊り。白河の本格的な踊りは久しぶりに見たが、素晴らしい。豪壮な音楽とともに現れた驚異的な圧巻の踊りだった。これはいわば死の踊りだ。そう死の踊りこそがこの世で最も美しく輝き、終末を言祝ぐのであろう。
次は髪から全身真っ白な衣裳を着けた山田せつ子の登場となる。世界が終末を迎えた後に、背景には雲が浮かび、立ち現れた天使、イノセント、無垢の命の踊りだろうか。そして6人の女性ダンサーが現れ、それぞれスポットライトを浴びて踊り、観客に終焉を告げた。
黒田育世 photo/bozzo
だがしかし、私のようなうっかり者の観客は忘れていたが、「今晩も、荒れ模様」だったのだ。世界が終焉を迎えた後のダンスの舞台には、キンキラの真っ赤な獅子のような衣装を纏った笠井叡が、踊り狂い、狂乱の宴となったのである。
(2015年3月26日 世田谷パブリックシアター)
寺田みさこ
白河直子
笠井叡
上村なおか、森下真樹
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