鋭く洗練されたコンテンポラリーな動きが際立った、東京シテイ・バレエ団の創作公演

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

TOKYO CITY BALLET LIVE 2015 東京シティ・バレエ

『ボレロ』石井清子:振付、『WITHOUT WORDS』小林洋壱:振付、『鏡の中で』中島伸欣:振付、『死と乙女』レオ・ムジック:振付

東京シティ・バレエ団が創作バレエ公演「TOKYO CITY BALLET LIVE 2015」を開催した。振付家は東京シティ・バレエ団の3人とべジャール・バレエ・ローザンヌの舞踊学校ルードラ出身で、ベルリン国立バレエ団やシュツットガルト・バレエ団に作品を提供しているレオ・ムジック。

開幕は石井清子が33年前に有名なモーリス・ラベルの名曲『ポレロ』振付けて、現在もしばしば上演される人気作『ボレロ』。この曲独特のユニークな音楽構造に基づいて構成したダンスだ。20人の女性ダンサーが絢爛と踊る群舞で創られている。
最初は1人にスポットがあたり、2人、4人、5人、8人と増えていくオープニングはなかなか洒落ている。5人ずつ4組に分れ、えんじがかった赤、グレイ、ブルー、淡いグリーンの4色の無地のワンピースを身に着けたグループが、フォーメーションを組んで踊り、ボレロの空間を創っていく。二つのメロディの繰り返しが次第に高まり、終幕のクライマックスへと至る。女性群舞の小気味よい美しさが響いて、思わず踊り出してしまいそうなダンスだった。

「ボレロ」撮影:鹿摩隆司

「ボレロ」
撮影:鹿摩隆司(すべて)

続いて小林洋壱がグスタフ・マーラーの交響曲第5番4楽章アダージェットを使って振付けた『Without Words』。初演は2009年で志賀育恵とチョ・ミンヨンだったが、今回は佐々晴香とチョ・ミンヨンが踊った。女1人と男1人のパ・ド・ドゥのスタイルで踊られるが、最初はお互いに上手と下手に離れてそれぞれがスポットを浴びて踊り始める。やがて二人は絡み合ってドラマティックな関係を描いて静かに終わる。そして言葉では簡単に表すことのできない静謐な深い関係が舞台の上に示された。
中島伸欣の新作は『鏡の中で』世界初演。アルボ・ペルトの美しいピアノとヴァイオリンのデュエット曲『鏡の中の鏡』に振付けたもの。ポワントの志賀育恵と黄凱が踊った。背景の8割りくらいは白い幕がある。コスチュームは、白い全身タイツにブルーのベルトがデザインされていてヘアも白く塗られている。そのコスチュームを着けた現実感の薄く感じられた二人が踊ると、二人のシルエットが背景に少し歪んで映ったり消えたりする。その二面性というか二重性の儚さが、この素晴らしい曲とマッチしていてとても良かった。

「鏡の中で」志賀育恵/黄凱 撮影:鹿摩隆司

「鏡の中で」志賀育恵/黄凱

「Without Words」佐々晴香/チョ・ミンヨン 撮影:鹿摩隆司

「Without Words」佐々晴香/チョ・ミンヨン

「ボレロ」撮影:鹿摩隆司

「ボレロ」撮影:鹿摩隆司

最後の演目は『死と乙女』は、レオ・ムジックがT.A.ヴィターリの『シャコンヌ』とフランツ・シューベルトの弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』を使って振付けた新作の世界初演。バリバリとガラスの破片を踏み歩く音から始まる。人間が宿命として避けることができない「死」を暗示し、何ものをも傷つけずにおかないガラスの鋭さが少女の研ぎ澄まされた感覚を思い起こさせるかのような衝撃的な幕開けだ。そして中幕が開くとシャンデリアの下、ポワントを履いた7組のカップルの踊りが始まる。カップルを中心として動きはシャープで厳しく無駄が無く、現代的感覚で貫かれている。シーンをつぎつぎと変えて様々な表現を創っていく。叫び声のような台詞も入る。ただ表現がやや主観的で一方的に感じてしまうところもあった。
東京シティ・バレエ団のダンサーは、このところの公演でコンテンポラリー・ダンスの動きが一段と良くなった、と思う。特に志賀育恵を筆頭に女性ダンサーの動きが、シャープで見応えのあるものとなってきたように感じられる。洗練されたクラシックの動きと、大胆で挑戦的なコンテンポラリーの動きを磨いて、次のダンスの新しいステージ向かっていってもらいたい。
(2015年2月15日 ティアラこうとう大ホール)

「死と乙女」大石恵子/佐々晴香 撮影:鹿摩隆司

「死と乙女」大石恵子/佐々晴香

「死と乙女」 撮影:鹿摩隆司司

「死と乙女」

「死と乙女」 撮影:鹿摩隆司

「死と乙女」
撮影:鹿摩隆司(すべて)

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