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中村祥子のカルメンと宮尾俊太郎のドン・ホセが圧巻の熱演をみせた、熊川版『カルメン』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

K BALLET COMPANY

『カルメン』熊川哲也:演出・振付

K BALLET COMPANYの熊川哲也演出・振付による『カルメン』。この作品は、2014年10月にK BALLET COMPANYの創立15周年記念として世界初演された。今回は最初の再演である。
『カルメン』は1845年フランスのプロスペル・メリメによって書かれたスペインを舞台とした小説。これに基づいてアンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィが脚色したオペラ全4幕が良く知られる。作曲はもちろん、かのジョルジュ・ビゼー。原作小説では、カルメンは盗賊団の首領の情婦であり、ホセの婚約者ミカエラは登場せず、スペインの風土色が強く、プリミティブな愛憎劇が展開する。
熊川哲也版『カルメン』は、ビゼーのオペラに基づいて創られている。

中村祥子のタイトルロールと宮尾俊太郎のドン・ホセというキャストで観た。
冒頭は頭に拳銃を突きつけて、まさに引き金を弾かんとするところで思いとどまったドン・ホセのシーンがプロローグ風に描かれる。
生真面目な性格のホセはカルメンを愛し、すべてを捨て密輸業者たちに加わるるが、倫理観やミカエラ(浅野真由香)に表されている家族との絶縁に苦悩する。しかし、エスカミーリョ(ヴィスラフ・デュデック)の登場で、カルメンに見捨てられ、絶望の果てに銃の引き金を引き彼女を射殺する、という物語だ。
第1幕の登場シーンで長い説得力のあるヴァリエーションを踊るカルメンや、ラストシーンのホセのすべてを投げ打つてカルメンに迫る熱演は圧巻だった。
第2幕の密輸業者のアジトでは、彼らに拉致されたホセのかつての同僚の兵士たちの殺害、婚約者ミカエラがホセの母親の危篤の知らせを持っての登場、さらに闘牛場に出演し牛と闘うエスカミーリョが、カルメンへの贈り物(黒い髪飾り)を持って現れるなど、次々と話が展開する。
そして第3幕では、カルメンの愛と同時に人生のすべてを失って、ホセは絶望の弾丸を発射する。
熊川版『カルメン』は、スペインの濃度の濃い風土性をあまり強調することなく、ギリシャ悲劇風の物語として描いている。

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

カルメン(中村祥子)
撮影/瀬戸秀美(すべて)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

カルメン(中村祥子)、ドン・ホセ(宮尾俊太郎)

初演は、ロベルタ・マルケス/熊川哲也、佐々部佳代/宮尾俊太郎、神戸里奈/福田昂平、というペアで観た。今回は。中村祥子/宮尾俊太郎のペアも観ることができた。中村祥子のカルメンは、全身から気が溢れている。小手先のテクニックではなく、生き方そのものがカルメン、と主張しているような演舞だった。宮尾のホセは苦しみと絶望を、まるで指先までが震えているかのように密度濃く表わしていた。演技力が深まっていることが感じとられる舞台だった。4組とも見応えのあるペアであり、K BALLET COMPANYのソリストの充実振りが感じられた公演だ。
(2015年10月10日夜 オーチャードホール)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

ドン・ホセ(宮尾俊太郎)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

ドン・ホセ(宮尾俊太郎)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

メルセデス(山田蘭)、エスカミリーリョ(ヴィスラウ・デュデック)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

カルメン(中村祥子)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

カルメン(中村祥子)、ドン・ホセ(宮尾俊太郎)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

メルセデス(山田蘭)

K BALLET COMPANY『カルメン』 撮影/瀬戸秀美

カルメン(中村祥子)、ドン・ホセ(宮尾俊太郎)

撮影/瀬戸秀美(すべて)

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