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身体の活力が鳴動し、その極限が見えてくる黒田育世の2作品、BATIKレパートリーズ公演

ワールドレポート/東京

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi

BATIKレパートリーズvol.3

『テトラへドロン』『ラストパイ』黒田育世:振付・演出

黒田育世のダンスグループ、BATIKが3回目のレパートリーズ公演を行い、2014年に初演した『テトラへドロン』と、2005年初演の『ラストパイ』を上演した。
『テトラへドロン』は、前半は二人のダンサーがライヒの曲に力み返った子どもが何かを伝えようとして、一心にジェスチャーを作っているような所作がいろいろと表される。思わず、大相撲の<初切(しょっきり)>を思い起こしてしまった。<初切>は、コミカルなショーだからギャグを発するためのストーリーがあるのだが、『テトラへドロン』は身体自体に興味を持っている。
後半はもう一人ダンサーが加わって、渋柿を我慢して食べているような表情。そして様々なおどけたポーズが繰り広げられ、やがて三宅一生の布を使った頭からすっぽり被ることができる服(歌舞伎の幕の色使い)が現れる。布の服のオブジェと戯れているうちに、それぞれに嬉しさが生じてくる。やがて3人は共に喜びの一体感を持つ。そして動きは一つのスタイルを持ったダンスとなった。その種明かしでもあるかのように、巾着と一足の赤い靴が観客にしめされた。そして私は、それを着ていたのは舞台の精、ピエロだったのか、と思った。

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「テトラへドロン」撮影/関瑠惟

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「テトラへドロン」撮影/関瑠惟

『ラストパイ』は真っ暗闇な舞台に激しく鼓動が脈打って始まる。ズシン!ズシン!ズシン!。下手手前から対角線上に照明灯が向けられてあり、そのすぐ前で一人のダンサーが、「永遠に踊ります」という意志を持っているように踊り続けている。黒い衣裳に腰に赤い房を下げ、踊り続ける。

舞台上手よりの奥には高くパイプが組み立てられていて、赤い衣裳の松本ジロがギターを抱え、同じメロディーを口ずさみながら繰り返し演奏を続けている。
まず4、5名のダンサーが登場し群舞。やがて一人が群舞から抜け出し、照明の前で踊り続けているダンサーの前に身体を倒す、額ずいているかのように。すると他のダンサーたちに元の位置まで引き摺り戻される。戻されるとすぐに走って戻り額ずく。するとまた引き摺り戻される、しばらくこの作業が繰り返され、さらに多くのダンサーも加わって、同じ作業が繰り返され、みんな大喜びしながら引き摺り戻す。時折、絶叫がひびき、殺人が起こったのか、という状況もあった。その間、ずっと激しい鼓動が響き、ジロの歌とメロディーが流れ、照明の前のダンサーは踊り続けている。
人間の社会的行動を極限まで突き詰めていくと、このようなダンスの営為に還元できるのだろうか。命の証しである鼓動を強度にして、地球の自転のように永遠に巡る音楽により、身体そのものの存在に迫っている、と思わせた舞台だった。
(2018年5月5日 六行会ホール)

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