若々しいダンサーたちが躍動した「世界名門バレエ学校の饗宴」、オーチャード・バレエ・ガラ
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「オーチャード・バレエ・ガラ〜世界名門バレエ学校の饗宴〜」
オーストラリア・バレエ・スクール、ウィーン国立歌劇場バレエ学校、カナダ国立バレエ学校、ハーグ王立コンセルヴァトワール、ハンブルク・バレエ学校、ワガノワ・バレエ・アカデミー
世界の名門バレエ学校では、かつてはボリショイ・バレエ・アカデミーやパリ・オペラ座バレエ学校などが日本公演を行っていた。英国ロイヤル・バレエ学校の公演が行われたことがある。ボリショイ・バレエ・アカデミー(当時はボリショイ・バレエ学校)は、ウラジーミル・マラーホフが在学していた当時に来日して大いに人気を博した。パリ・オペラ座のダンサーたちもバレエ学校時代から見ていて時期もあった。しかし、近年ではワガノワ・バレエ・アカデミーが定期的に日本公演を行っているほかには、バレエ学校公演はみられなくなってしまった。今回は、世界のバレエ学校6校が集まって「世界名門バレエ学校の饗宴」と銘打った公演が開催され、久しぶりに若々しいバレエの舞台に触れることができた。
この「オーチャード・バレエ・ガラ〜世界名門バレエ学校の饗宴〜」は、2015年に開催された「オーチャード・バレエ・ガラ〜JAPANESE DANCERS〜」の姉妹企画という。オーチャード・ホールの芸術監督である、熊川哲也の「世界中のバレエを志す若者が一堂に会し、切磋琢磨する場を」という趣旨のもとに開催された公演である。
ウィーン国立歌劇場バレエ学校 撮影・瀬戸秀美
ウィーン国立歌劇場バレエ学校 撮影・瀬戸秀美
チャイコフスキーの音楽を使った山本康介の構成によるオープニングの後、ウィーン国立歌劇場バレエ学校の『プルチネッラ』で第1部が開幕した。ウィーン国立歌劇場バレエ学校は、ジョルジュ・ノヴェールにより設立され、現在はマニュエル・ルグリが校長を務める。実際の運営は副校長のシモーナ・ノヤがあたっている。今回は7名が来日し、3演目披露した。『プルチネラ』は、ヴェルディの曲にベッラ・ラチンスカヤが振付けたもの。チャイニーズ系の小柄なダンサー、丁子蒼が道化役を踊った。さすがに冒頭から若さの溢れ出るような舞台だった。同校は、第2部ではボリス・ネビラ振付によるブルノンヴィル・スタイルの『ラ・ダンス・デ・トロワ・フィーユ 3人の少女の踊り』(音楽H.S.バウリ)と『ブルノンヴィルへのオマージュ』(音楽H.S.レーヴェンショルド)を上演した。3作品ともこの公演のために振付けられた新作。ウィーン国立歌劇場に出演する機会もある、という学校だけに、品の良い古典的踊りがよく整えられていた。
続いて登場したカナダ国立バレエ学校はカナダ国立バレエ団の付属校で、メイビス・スティンズが校長を務める。第1部でゴルスキー版『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(音楽P.L.ヘルテル)のパ・ド・ドゥ。中国系の男性ジェイソン・チェンの脱力した踊りが目を引いた。もう一つの演目は、ロバート・ピネー振付『Three Images of Hope』よりデュエット(音楽O.パレット)。おおらかな伸びやかな作品で、女性は身体から発するものがあり、なかなか見ごたえがあった。
ハーグ王立コンセルヴァトワールは、クラシックと21世紀の様々な振付家のスタイルを理解できるダンサーを育てる、という目標を目指す。校長はヤン・リンケンス。ハンス・ファン・マーネンとイリ・キリアンというオランダを代表する振付家の2作品を上演した。第1部ではファン・マーネン振付の「無言歌集」より(音楽F.メンデルスゾーン)を上演。落ち着いた振付で、アンサンブルがよく整っていた。パ・ド・ドゥは江田有伽と氏原瑠之介の日本人ペアだった。第2部ではイリ・キリアン振付の『Evening Songs』(音楽A.ドヴォルザーク)。清楚で美しい情感の溢れる作品で、若さが輝いた。
カナダ国立バレエ学校 撮影・瀬戸秀美
オーストラリアン・バレエ・スクールは、かつては日本でも踊ったリサ・パヴァーヌが校長を務める。第1部ではペロー、プティパの改訂振付、音楽はR.ドリコによる『海賊』よりパ・ド・ドゥを上演。第2部で上演された『VITAE』は、レジデンス・コレオグラファーのマーガレット・ウィルソンの振付、音楽はB.デスナーによるコンテンポラリー作品。上半身にひねりのアクセントを加えた動きが印象に残った。
第1部の最後はワガノワ・バレエ・アカデミーが登場。ニジンスキーやパヴロワ、バリシニコフなどを輩出したロシア・バレエの伝統を継承する名門バレエ学校で、現在の校長は元ボリショイ・バレエのプリンシパルダンサー、ニコライ・ツィスカリーゼ。第1部ではの『フローラの目覚め』(M.プティパ振付、R.ドリコ音楽)、第2部では『人形の精』(セルゲイ・レガート、ニコライ・レガート振付、R.ドリコ音楽)を上演した。『フローラの目覚め』は、当然ながらワガノワ・スタイルが指先いたるまで身体にしっかりと行き渡っているので、躍動的でありながら、豊かな表情を見せる舞台となった。人間の誰にでも訪れる目覚めのドラマが、観客の胸に染み込むような踊りで、バレエ学校の生徒のパフォーマンスとは思われないほど表現力に溢れていた。第2部では、ワガノワ・バレエ・アカデミー公演ではおなじみの『人形の精』。一人の美しい少女をめぐって、二人のピエロが競い合って踊る。演技的表現もしっかりとできなければ、観客から厳しい反応が現れる可能性がある演目をしっかりと踊った。
第2部の最後に踊ったのはハンブルク・バレエ学校。校長はジョン・ノイマイヤーだが、かつてのハンブルク・バレエ団の名花で世界バレエフェスティバルでも踊ったジジ・ハイヤットが、副校長として運営している。日本人の鈴木愛理を含む8人のダンサーが、ノイマイヤー振付の『バッハ組曲2』よりを上演した。ノイマイヤーらしい整えられた若々しい動きがバッハの曲に躍動した。
(2018年2月12日 Bunkamura オーチャードホール)
カナダ国立バレエ学校 撮影・瀬戸秀美
ハーグ王立コンセルヴァトワール 撮影・瀬戸秀美
ハーグ王立コンセルヴァトワール 撮影・瀬戸秀美
オーストラリアン・バレエ・スクール 撮影・瀬戸秀美
オーストラリアン・バレエ・スクール 撮影・瀬戸秀美
ワガノワ・バレエ・アカデミー 撮影・瀬戸秀美
ワガノワ・バレエ・アカデミー 撮影・瀬戸秀美
ハンブルク・バレエ学校 撮影・瀬戸秀美
撮影・瀬戸秀美
ワールドレポート/東京
- [ライター]
- 関口 紘一