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米沢唯と井澤駿が踊ったアシュトン版『シンデレラ』の率直で美しい踊りが見事だった

新国立劇場バレエ団

『シンデレラ』フレデリック・アシュトン:振付

新国立劇場バレエ団の優れたレパートリーのひとつフレデリック・アシュトン振付の『シンデレラ』。しばしば年末に上演されることが多く、新国立劇場バレエ団では『くるみ割り人形』と隔年で交互に上演していたと記憶する。今年は、イーグリング振付の『くるみ割り人形』を新制作したが、やや早い時期の初演となったので、『シンデレラ』も上演されることになったのであろう。

今回、アシュトン版の『シンデレラ』を観て今更ながら改めて感じたが、音楽が実に素晴らしい。(マーティン・イェーツ指揮、東京フィルハーモニー交響楽団)細やかにしかし過剰にはならず、とても表情豊かにこの魔法の物語を描いている。このセルゲイ・プロコフィエフの音楽に、ダンサーたちが乗れば乗るほど観客は楽しく、魔法の世界に心を解放してもうひとつの人生を情感豊かに生きることができる。
というのも舞台の中心に米沢唯と井澤駿が芯となって、しっかりと安定感のある美しい演舞みせていることが重要な要素であることは言うまでもない。やはり、米沢唯の名前を一番に挙げなければならないだろう。無駄な動きや所作がまったくなく伸びやかで美しい。身体全体がきちんと有機的に機能しているので、存在感が心地良く感じられるのである。小野絢子のシンデレラも可愛らしく大好きだが、米沢の描いた人物像もヴィヴィッドで魅力的だ。そして井澤駿もまた見事。安心してみていられるパートナーシップを築いていた。とりわけ、宮殿で踊られる出会いのパ・ド・ドゥは素晴らしかった。生き生きとした出会いの魔法の時間の耀きが劇場全体に溢れるようだった。井澤の素直な表情が米沢の純粋な心とがバランス良くひとつになったことが、客席までまっすぐに伝わってきた。ただ貧乏なシンデレラの方はもう少し悲しさが表れても良いのではないか。悲しみが深ければそれだけ、純粋な心が美しく輝く。人物像のコントラストが少しだけ弱かったようにも感じられた。

シンデレラ/米沢唯 撮影/瀬戸秀美

『シンデレラ』シンデレラ/米沢唯
撮影/瀬戸秀美

もちろん、アシュトンの緻密で周到な演出により、それらは実現したのであるが、四季の精などのソリストたちもしっかりとした舞台をつくった。そのほかの役では、かつてK バレエカンパニーで踊っていたということだが初見の井澤駿の兄、諒がダンス教師に扮していて、なかなか演技が上手いと感じた。駿よりは少し小柄だが、他日公演では道化に扮して、評判が良かったと聞く。こうした演技に優れたダンサーが活躍するようになると、舞台はいっそう味わい深くなってドラマも引き立つことになるだろう。

シンデレラ/米沢唯

『シンデレラ』シンデレラ/米沢唯
撮影/瀬戸秀美

シンデレラ/米沢唯、王子/井澤駿

『シンデレラ』シンデレラ/米沢唯、王子/井澤駿
撮影/瀬戸秀美

アシュトン版『シンデレラ』は、新国立劇場バレエ団のレパートリーとしてよく踊りこまれていることもあり安定しているし、舞台全体にこれ見よがしのところがない。ダンサーたちは率直に踊っていて、若々しさが溢れ好感の持てる公演だった。
英国ロイヤル・バレエの元プリンシパルで、名ダンサーの故マイケル・サムスの夫人でもあるウェンディ・エリス・サムスと、スウェーデン・ロイヤル・バレエ団で踊り、英国でノーテーションを学んで指導者となったマリン・ソワーズが監修・演出に当たった。
(2017年12月16日昼 新国立劇場 オペラパレス)

シンデレラ/米沢唯、王子/井澤駿 撮影/瀬戸秀美(すべて)

『シンデレラ』シンデレラ/米沢唯、王子/井澤駿
撮影/瀬戸秀美

ワールドレポート/東京

[ライター]
関口 紘一

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