5回目を迎え、子どもも大人もバレエを楽しめるイベントとして成果をあげている「めぐろバレエ祭り」
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「めぐろバレエ祭り」〈バレエ・コンサート〉
東京バレエ団
『パキータ』マリウス・プティパ:振付ほか
毎夏恒例の「めぐろバレエ祭り」も第5回を迎え、子どもも大人も一緒に楽しめるバレエのイベントとしてすっかり定着したようだ。第1回の「めぐろ子どもバレエ祭り」は、子どもにバレエの楽しさを知ってもらおうと企画されたものだが、第2回から現在の名称に改め、バレエの公演のほか、幅広くバレエに親しんでもらおうと、子どもや大人を対象にした多彩な体験型の催しも提供している。主催は東京バレエ団を運営する日本舞台芸術振興会で、本拠としている東京・目黒区に社会貢献しようと始めたもの。目黒区芸術文化振興財団との共催だが、これも、目黒区が歴史のある「全国舞踊コンクール」(東京新聞主催)の開催地で、またバレエ教室の多さは"全国でもトップレベル"だからだろう。
今年は5日間の会期中に、これまで最多の25のイベントがめぐろパーシモンホールで繰り広げられた。子どものための『眠れる森の美女』の公演をはじめ、様々なバレエのレッスン、親子で体験するバレエやリトミック、ピラティスやヨガの講習会、「ティアラをつくろう!」、コンドルズが指導する「スーパーバレエMIX BON踊り」といった具合だ。今年は、東京バレエ団による〈バレエ・コンサート〉を観た。
「めぐろバレエ祭り」〈バレエ・コンサート〉Photo :Kiyonori Hasegawa
第1部は、古典バレエの世界へ誘うような『パキータ』。冒頭、赤いチュチュで登場する女性群舞が華やかな雰囲気を醸し出す。
プリンシパルのペアは二瓶加奈子と宮川新大。二瓶は身体やアームスをなめらかに操り、ダブルを入れたフェッテも安定していた。宮川はしなやかなジャンプをみせ、着地も気持ちよくきれいに決めた。ヴァリエーションを踊った中川美雪、伝田陽美、崔美実も卒のない演技だった。
第2部は〈The Tokyo Ballet Choreographic Project Ⅱ〉。東京バレエ団ではダンサーが振付に挑戦する新たなプロジェクトを始めたが、6月に発表された作品の中から2作品が上演された。
岡本壮太振付の『The Door』を踊ったのは秋山瑛と樋口祐輝。離れて置かれた机の椅子に座っていた男女が、互いの心の内に入り込み、触れ合い、寄り添おうとする様を心理的に掘り下げて描いたような内面な作品だった。対照的に、岡崎隼也振付の『Scramble』はムーヴメントの面白さを追求するような作品。岡崎と伝田陽美のほかに2組のペアも加わり、デュエットやソロなど次々に組み合わせを変え、動きも更新しながら、生き生きと交錯させていった。
第3部は再びクラシックの作品集。『パリの炎』よりのパ・ド・ドゥを明るく快活に踊ったのは足立真里亜と井福俊太郎のフレッシュなペア。足立は高く脚を振り上げ、端正な身のこなしで、ダブルを入れたフェッテは勢いがあり、安定していた。井福は思い切りの良いダイナミックなジャンプや力強いピルエットが際立った。二人とも今後が期待される若手だろう。
『ジゼル』からは第1幕のパ・ド・ユイットのほかに、第2幕のパ・ド・ドゥを渡辺理恵と秋元康臣が情感を漂わせて踊った。渡辺は透明感のある踊りをみせ、秋元は様々な跳躍を美しいフォームでこなした。最後の『エスメラルダ』のパ・ド・ドゥは、上野水香と柄本弾のトップスターのペアが華やかに締めた。上野はバランスを長く保ち、しなやかに脚を操ってタンバリンを打ち鳴らし、コケティッシュな魅力を出していた。柄本の鮮やかな回転技やパワフルなマネージュは見応えがあった。今回の〈バレエ・コンサート〉では、古典バレエの名場面集を中心に、ダンサー自身による創作が初めて取り上げられ、伝統と現代というそれぞれの違いがより際立つ形になった。作り手が著名な振付家ではなく、バレエ団のダンサーということで、バレエをより身近に感じた人もいるかも知れない。ダンサーの側も創作意欲をかき立てられたかも知れない。プログラム構成に試行錯誤はつきものだが、次は一体どのような〈バレエ・コンサート〉になるのか、見守りたい。
(2017年8月20日夕方の部 めぐろパーシモンホール)
「めぐろバレエ祭り」〈バレエ・コンサート〉
Photo :Kiyonori Hasegawa
「めぐろバレエ祭り」〈バレエ・コンサート〉Photo :Kiyonori Hasegawa
「めぐろバレエ祭り」〈バレエ・コンサート〉Photo :Kiyonori Hasegawa
ワールドレポート/東京
- [ライター]
- 佐々木 三重子