存在の形態としての円軌道が重なり合って「時の渦」が現れる、深遠なムーヴメントを見せたローザス&イクトゥス

ローザス&イクトゥス

『時の渦-Vortex Temporum(ヴォルテックス・テンポラム)』アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル:振付

アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル/ローザスが来日し、『ファーズ Fase』と『時の渦ーVortex Temporum(ヴォルテックス・テンポラム)』を上演した。私は日本初演となるローザス&イクトゥス『時の渦 Vortex Temporum』を観た。

このダンスは、フランスの現代音楽作曲家、ジェラール・グリゼーの同名の曲『時の渦』に振付けたもの。グリゼーはスペクトル楽派と呼ばれ、音楽を音波として捉え、倍音のスペクトルに着目して作曲している。ここでは、ローザスのダンサー7名と室内アンサンブル・イクトゥスの演奏家と指揮者7名が、舞台上で共演する。
まずは、イクトゥスのメンバーが登場し、舞台中央で演奏(ピアノ、フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)を行う。ジェラール・グルゼーの『時の渦』は、激しいピアノ演奏からはじまり、想像を越えるような音を弦楽器や管楽器から捻り出す。そして演奏家は退場し、ピアノの演奏者一人が残るがやがて去っていく。

photo:Arnold Groeschel(すべて)

photo:Arnold Groeschel

次にダンサーたちが登場して、今、演奏していたイクトゥスのそれぞれの楽器に対応して無音の中で踊る。やがてピアノと対応していたダンサー以外は退場する。するとピアノの演奏者が登場し演奏を始め、ダンサーが動き出す。それぞれの楽器の演奏者たち、指揮者も舞台に現れて、ダンサーとともに演奏する。渾然となった舞台に次第に円を回る動きが現れる。照明が落ちて、演奏者たちは舞台の背後に退いて、演奏を続ける。
舞台のフロアーには、大小の円が重なって描かれていたが、ダンサーたちはそれぞれが様々な動作をしつつ小走りに、時計とは逆回転に円を描いて回る。そして舞台空間にいくつもの時間軸が生まれ、それがランダムに重なりあいながら渦が形成されていく・・・・。
宇宙の存在の形態は、結局は大小様々な円の軌道に収斂され、無限に重なり合っている。そこにはそれ自体で完結した時間軸があり、まさに「時の渦」を形成している。
そうした思想に、音楽家と振付家が共鳴しているかのようなダンスであった。
(2017年5月5日 東京芸術劇場プレイハウス)

photo:Arnold Groeschel

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インタビュー

[インタビュー]
関口紘一

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