『スターズ & ストライプス』と平山素子他の新作、バラエティに富んだトリプルビル、NBAバレエ団

NBAバレエ団「Stars abd Stripes」

『Essence of the Enlightened』ダレル・グランド・ムールトリー:振付、『あやかしと縦糸』平山素子:振付、『Stars abd Stripes』ジョージ・バランシン:振付

NBAバレエ団の「スターズ & ストライプス」公演を見た。多くのバレエ団が、レパートリーの定期公演を中心に活動しているが、ここのバレエ団は、常に新しい試みに挑戦しようとしているので、注目している。観客にとっては安定したレパートリー公演も魅力的だが、未知の振付家による新作や初めて新しい作品に挑戦して、どのようなダンスの局面をみせてくれるか、を期待することも大きな楽しみのひとつである。
今回公演では、久保綋一芸術監督がコロラド・バレエ時代に交流のあったダレル・グランド・ムールトリーと平山素子の新作、さらにジョージ・バランシンの『Stars abd Stripes』というトリプルビルが上演された。

ダレル・グランド・ムールトリーの新作は『Essence of the Enlightened』。啓発されたエッセンスとでもいえばいいのだろうか。ムールトリーはジュリアード音楽院出身。コロラド、ミルウォーキー、シンシナティなどのバレエ団や各地の大学などで振付や指導に当たっている。また、ブロードウェイ・ミュージカルの『ヘアー・スプレイ』などにもダンサーとして出演している。ムールトリーによると、ダンサーから受けるインスピレーションこそが、彼のダンス創造の源、だという。

「Essence of the Enlightened」

「Essence of the Enlightened」

幕開き冒頭は、上手・下手からダンサーが様々な格好でスピーディに往き来し、無音で始まった。女性4人男性2人の6人ソリストが踊る。衣装はレオタード、チュチュ、ショートスカート、トウシューズも着けている。デュオ、男性の群舞、そして女性の群舞とスピードに乗って、明るく弾けるような群舞へと展開していく。ダンサーそれぞれの個性と全体の動きのバランスが、スピーディな展開の中でも良く整えられていた。

「Essence of the Enlightened」

「Essence of the Enlightened」

「Essence of the Enlightened」

「Essence of the Enlightened」

続いて平山素子の新作『あやかしと縦糸』が上演された。ゲストダンサーとして2014年にローザンヌで受賞し、昨年、ジュリー・ケントが芸術監督に就任したワシントン・バレエのスタジオ・カンパニーに入団が決まった二山治雄が出演した。
ダンサーはそれぞれレオタードに蔦が絡みつくような飾りを着け、あやかしを感じさせる。舞台に半分くらいまで出入り可能な紗幕を張って前後に分け、あの世とこの世あるいは現実と魔界を表している。ダンサーは頻繁に入れ替わり、憑依したり、ふっと消えたり、手や足だけの部位を現したり、蛍光グリーンの光りがあやかしを照らし出したり、様々の変幻が次々と展開していく。縦糸とは時間を現しているのだろうか。群舞全員が丸くまとまって、スローモーションで動き「妖怪ブロック」みたいなものを作る、などなどあらゆる妖怪のイメージが動員されて形成されていた。人間それぞれが内面に持っている、あやかしのイメージが動きとなってダンスが創られていくのが楽しかった。二山の動きは集団の中でも目立つ俊敏さがあった。 音楽は映画音楽で活躍している茂野雅道が初めてダンス音楽を作曲したもの。

「あやかしと縦糸」

「あやかしと縦糸」

「あやかしと縦糸」

「あやかしと縦糸」

「あやかしと縦糸」

「あやかしと縦糸」

最後はジョージ・バランシンがジョン・フィリップ・スーザの音楽に振付けた『スターズ・アンド・ストライプス』。1958年ニューヨーク・シティ・バレエ団がシティ・センターで初演している。
全体は、3つのソリストとコール・ド・バレエのグループとメインカップル、そして全員という5つのCampaignで構成されている。グラン・パ・ド・ドゥを踊るメインカップルは二山治雄と竹内碧。
星条旗を表す、男性の端正な軍礼服と女性の赤とブルーの鮮やかな衣装が躍動して、アメリカ合衆国への忠誠を誓う闊達な踊りが、流れるような展開で繰り広げられた。
全体を通して見て、なかなかバラエティに富んだ見応えのあるトリプルビルだった。
(2016年12月3日 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)

「スターズ&ストライプス」

「スターズ&ストライプス」

「スターズ&ストライプス」

「スターズ&ストライプス」

「スターズ&ストライプス」

「スターズ&ストライプス」

ワールドレポート/東京

[ライター]
関口 紘一

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