エトワールのフランソワ・アリュがパリ・オペラ座バレエ団を退団する

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

Départ du danseur Etoile Françoias Alu du Ballet de l'Opérta national de Paris
エトワールのフランソワ・アリュがパリ・オペラ座バレエ団退団

パリ・オペラ座は11月23日にコミニュケで、エトワールのフランソワ・アリュがオペラ座バレエ団を間もなく退団する、と発表した。
今年4月23日に『ラ・バヤデール』のソロル役を踊ってエトワールに任命されたフランソワ・アリュは、オペラ座バレエ団との契約書に署名しないまま、アレクサンドル・ネーフ総監督と七ヶ月近く交渉を続けていた。アリュはオペラ座以外で「コンプレットマン・ジュテ」と銘打ったワンマンショーを企画・出演しており、12月4日にトゥールーズ、12月11日にはトゥール、来年2月5日にはパリのオランピア劇場に登場する。このため、現在リハーサルが進行中のオペラ座の年末公演『白鳥の湖』ロットバルト役の出演はなくなった。

ネーフ総監督は「この決定は数ヶ月にわたるフランソワとの協議の結果で、今後は12月5日に就任するジョゼ・マルティネス新舞踊監督が彼と将来の共同プロジェクトについて話し合うことになります。フランソワが今後よりいっそうダンサーとして活躍することを期待しています」と述べている。
フランソワ・アリュは独自に声明を出し、「十二年間を過ごした栄光のパリ・オペラ座から、今、新たなスタートを切ります。アレクサンダー・ネーフとマルタン・アジャリとの密接な意見交換を経て、私の退団について合意に達しました。二人が私の話を開かれた精神を持って聞いてくださったことに感謝します。<コンプレットマン・ジュテ>を続ける他、映画や演劇にも出演し、執筆活動も行いたいと思っています」と抱負を語っている。

こうして自ら求めた「完全な自由」をアリュは手に入れることになるが、「フィガロ紙」のバレエ評論家アリアーヌ・バヴリエは「リスクのある選択」だとみなしている。オペラ座との新しい関係は、かつてシルヴィ・ギエム、ギレーヌ・テスマー、パトリック・デュポン、エリック・ヴ=アンといったダンサーたちがオペラ座との間で結んだ招聘ダンサーの契約になる見込みだ。しかし、バルリエ記者によれば「ヌレエフとソリが合わず、国外の有名バレエ団から引っ張りだこだった(上記の)当時23歳から25歳の国際的なスターダンサーと国外で知名度の低いアリュとは違う」とし、「ワンマンショーは身体を消耗させるので、いつまで続けられるかわからない。テレビのダンス番組に出演しても、栄誉は得られない。29歳という年齢を考えれば、オペラ座バレエ団に留まって、ダンスの芸をいっそう磨き、新たな役に取り組むことでダンサーとして成長する方が良かっただろう」とアリュの決断に疑問を投げかけている。
「アリュがオペラ座バレエ学校の生徒だった時に跳躍とピルエットの破格の才能を認めて、『スカラムーシュ』を彼のために特別に振付けたジョゼ・マルティネスの元で成長できたろう。アリュはオペラ座以外での活動のための特別な自由と自分で役を選択すること、特別な報酬を要求した。オペラ座にとって受け入れることが不可能な要求であり、他のダンサーたちに対しても不当である」としている。
マルティネス新舞踊監督は任命された日に「オペラ座は年間180公演を行っている。バレエ団員はオペラ座のために奉仕しなければならない」と語っており、これからアリュがオペラ座バレエ団とどのような関係になっていくのかについては、今の時点では未知数だ。

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© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

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© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

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