元エトワール、カデール・ベラルビ(トゥールーズのカピトル歌劇場バレエ団の芸術監督)が新たに財団を発足させた

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Démarrage de la Fondation Kadar Belarbi

「カデール・ベラルビ財団」が発足

10月13日にパリ市内のダンス施設カロー・デュ・タンプルでまず記者会見が行われた。ジャン・グラヴァニ財団総裁(元農水産大臣)から財団の誕生の経緯とその目的についての説明があり、それから具体的な内容についてカデール・ベラルビが話した。二人の周囲にはクルヌーブ市のジャン・ヴィラール中学の学生二名がいて、ベラルビ、グラヴァニ総裁、記者団からの質問に答えた。

カデール・ベラルビ財団はダンスによって社会的な人の絆を推進し、生活困窮世帯や農村地域の子弟にもダンスの世界が開かれることを目指している。そのために、パリ北方の郊外都市クルヌーブの中学校で、10歳から14歳までの有志の17名の中学生(男子3名、女子14名)にベラルビが週四回(一回は6時間)のアトリエ「身体とグラフィティ」を一ヶ月間にわたって開いた。レッスンを通じて、ベラルビはダンスには規則があり、規律に従うことが必要なことを教えた。この試みはパリ近郊だけでなく、今年12月からベラルビが芸術監督を務めているカピトル歌劇場バレエ団のあるトゥールーズ市のミュライユ地区でも開始され、7歳から77歳までの老若男女が参加して、三年間という長期間にわたって実施されることが決まっている。
ジャン・ヴィラール中学校では体育教師やドキュメンテーション担当教師も協力した。

生徒たちがそれまでに踊っていたのはヒップ・ホップをはじめとする多様な現代のダンスで、クラシックのダンスに触れるのは初めてだった。「初日にはおしゃべりが止まなかったものの、二日目になると他人の言葉に耳を傾けるようになり、三日目には敬意とは何かが生徒たちは理解した」とベラルビは語っている。「ダンスによって自分の人生を語ることができる」という確信は生徒たちに明瞭に伝わったようだ。
アトリエで生徒たちは身体のレッスンを受け、動きを繋いで一つの「作品」を自分たちだけで作っていき、記者会見の後に施設にある舞台でお披露目公演が行われた。

こうした実践活動を通じて、ダンスをより広い層に広げ、観客の多様化も視野に入っている。
財団はこうしたアトリエだけでなく、新しい振付作品の誕生を後押しすることにも力を入れ、来年4月13日から15日までパリのシャンゼリゼ歌劇場でベラルビ振付の『トゥールーズ・ロートレック』の公演が「トランサンダンス・シリーズ」(TranscenDanses)として行われる。
次世代にダンスの喜びを伝えたい、というベラルビの思いから生まれた財団によって、過去の豊かな遺産と現代の新たなエネルギーとが結び合わされることが期待されている。

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ベラルビ振付「トゥールーズ・ロートレック」
© David Herrero

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ベラルビ振付「トゥールーズ・ロートレック」
© David Herrero

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ベラルビ振付「トゥールーズ・ロートレック」
© David Herrero

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ベラルビ振付「トゥールーズ・ロートレック」
© David Herrero

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