パリ・オペラ座バレエ団が2021・22年シーズンラインアップを発表した
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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko
ロック・ダウンによって、公演がしばしば中止された2020・21年シーズンは、間もなく始まる「ローラン・プティへのオマージュ」(ガルニエ宮)とヌレエフ振付『ロメオとジュリエット』(バスチーユ・オペラ)によって、かつて経験したことのないシーズンの幕を閉じようとしている。こうした中で、パリ・オペラ座バレエ団は2021・22年のシーズンラインアップを発表した。
オペラ座バレエ団のシーズンは、9月24日19時30分から恒例となったガルニエ宮でのデフィレ付の「ガラ公演」で開幕する。オペラ座バレエ団の154人のダンサーとダンス学校の生徒が参加するデフィレを、新たに音楽監督となったグスターヴォ・デュダメルが指揮する。それから三つの作品が踊られる。昨年10月に「今、作品を創作すること」と題された夕べで世界初演された「クラウズ・インサイド」はテス・フォルカーの作品。テス・フォルカーはネザーランド・ダンス・シアター(NDT)所属の女性ダンサーだ。歩くことを初めとする日常の動作を取り入れてきれいにまとめた作品として評価された。彫刻家の名和晃平との共作もあるダミアン・ジャレが振付けた『防波堤(Brises-lames)』。かつてパリ・オペラ座のダンサーたちにクラシック・バレエを厳格に教えたハロルド・ランダー振付の『エチュード』がこれに加わる。
通常公演はアレクサンダー・エクマン振付『プレイ』の再演(ガルニエ宮、9月28日から11月6日)で始まり、2022年7月16日にバスチーユ・オペラでのバランシン振付『真夏の夜の夢』(6月18日初日)とガルニエ宮でのジャン・コラリとジュール・ペロ振付の『ジゼル』(6月25日初日)で閉幕する。
テス・フォルカー振付「クラウド・インサイド」
© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
アレクサンダー・エクマン振付「プレイ」
© Opéra national de Paris/ Ann Ray
今シーズン最も注目されるのは、スタンダールの小説『赤と黒』を原作にしたピエール・ラコット振付の新作だ。野心的な青年ジュリアン・ソレルとレナール夫人、貴族令嬢マチルドの恋愛模様が展開され、エトワール9人が参加(「ル・モンド紙」)する。フランスの日刊経済誌「レゼコー」のダンス欄を担当しているベテランのフィリップ・ノワゼットによれば、美貌の野心家であるジュリアンにはマチュー・ガニオ、ユゴー・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェが起用される。『ラ・シルフィード』や『コッペリア』といったロマン派バレエを現代に蘇らせた89歳のベテラン、ラコットは、台本と振付だけでなく、衣装と装置も手掛ける。19世紀フランスの作曲家マスネの華麗な音楽を使用する3幕の豪華なネオクラシック・バレエは、『椿姫』(ノイマイヤー振付)や『マノン』(マクミラン振付)の系列に連なることになるだろう。
新作ではイスラエルのダンサー、シャロン・エヤルが初めてオペラ座バレエ団で振付ける『牧神の午後』にも興味がそそられる。衣装はディオールの芸術ディレクターを務めているマリア・グラツィア・キウリ。かつてニジンスキーが振付けた題材を、エヤルがどのように舞台化するのか、今から楽しみだ。ミリセント・ホドソンとケネス・アーチャーが復元したニジンスキー振付の『春の祭典』も同時に演じられる。
その一方、『ラ・バヤデール』『ドン・キホーテ』というヌレエフ振付作品と閉幕公演の『ジゼル』とクラシックが3作品並んでいる。バレエ監督のオーレリー・デュポンは「『ドン・キホーテ』をクリスマス公演に選んだのは、お祭り気分にぴったりで、さらに役の数が多いので若手ダンサーが舞台に立つ機会になるからです」と語っている。クリスチャン・ラクロワが装置と衣装を担当した、バランシン振付『真夏の夜の夢』というネオクラシック作品もあり、総じてクラシックの比重が大きいのが新シーズンの特徴だろう。
コンテンポラリー・ダンスではホフェッシュ・シェクターとマッツ・エックという対照的な振付家の夕べがあるとともに、人気のクリスタル・パイトによる『ボディ&ソウル』も再演される。
「ドン・キホーテ」©Opéra national de Paris/ Svetlana Lobof
「ドン・キホーテ」© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff
「ラ・バヤデール」© Opéra national de Paris/Svetlana Loboff
「ジゼル」© Opéra national de Paris/Svetlana Loboff
「真夏の夜の夢」© Opéra national de Paris/Agathe Poupeney
「真夏の夜の夢」© Opéra national de Paris/Agathe Poupeney
●開幕ガラ公演 9月24日 デフィレ、テス・フォルカー振付『クラウド・インサイド』、ダミアン・ジャレ振付『Brises-lames』、ハロルド・ランダー振付『エチュード』
●アレクサンダー・エクマン振付『プレイ』(9月28日から11月6日)
●ピエール・ラコット振付『赤と黒』(世界初演、10月16日から11月4日)
●フレデリック・アシュトン振付『ラプソディー』、シャロン・エヤル振付『牧神の午後』(世界初演)、ヴァスラフ・ニジンスキー振付『春の祭典』(ミリセント・ホドソンによる再現振付)(12月1日から1月2日)
●ルドルフ・ヌレエフ振付『ドン・キホーテ』(バスティーユ・オペラ)(12月9日から2022年1月2日)
●クリスタル・パイト振付『ボディ&ソウル』(2022年1月30日から2月20日)
●ホフェッシュ・シェクター振付『アップライジング』『イン・ユア・ルームズ』(レパートリー入り)(2022年3月15日から4月3日)
●ルドルフ・ヌレエフ振付『ラ・バヤデール』(バスティーユ・オペラ)(2022年4月3日から5月6日)
●パリ・オペラ座バレエ学校公演
「デモンストレーション」(2021年12月4、12、18日)
ジョージ・バランシン振付『夢遊病の女』、ヴィオレット・ヴェルディ振付『ヴァリエーション』、ナイルズ・クライスト振付『三楽章の交響曲』(4月12、14、15、16日)
●マッツ・エク振付『カルメン』『アナザー・プレイス』『ボレロ』(2022年5月7日から6月5日)
●ジョージ・バランシン振付『真夏の夜の夢』(バスティーユ・オペラ)(2022年6月18日から7月16日)
●ジャン・コラリ&ジュール・ペロ振付『ジゼル』(2022年6月25日から7月16日)
(バスティーユ・オペラ以外はすてガルニエ宮)
「ラ・バヤデール」© Opéra national de Paris/Svetlana Loboff
「ラ・バヤデール」© Opéra national de Paris/Svetlana Loboff
「ジゼル」© Opéra national de Paris/Svetlana Loboff
「真夏の夜の夢」© Opéra national de Paris/Agathe Poupeney
パリ・オペラ座バレエ学校「ヴァリエーション」
© Opéra national de Paris/ Fanchette Levieux
「ボディ&ソウル」© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
ダミアン・ジャレ振付「Brises-lames」
© Opéra national de Paris/ Julien BenhamouVwxyz
ホフェッシュ・シェクター振付「イン・ユア・ルームズ」
© Opéra national de Paris/ Filip Van Roe
「ボレロ」(マッツ・エク)© Opéra national de Paris/Ann Ray
「ボレロ」(マッツ・エク)© Opéra national de Paris/Ann Ray
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