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長期のストライキで交通機関も止まる中で行われた、イスラエル・ガルバンの『春の祭典』

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Israel Galvan Compagny イスラエル・ガルバン・カンパニー

Israel Galvan "La Consagracion de la Primavera" 『La Consagracion de la Primavera』
『春の祭典』イスラエル・ガルバン:振付

パリ・オペラ座では相変わらず昨年の12月5日に始まった年金反対の活動が収束しておらず、1月31日『ジゼル』初日に続いて、2月3日に予定されていたバランシンの初日、さらに2月6日の『ジゼル』とバランシンが休演となった。17世紀にルイ14世が創設して以来、最も長いストライキとなっている。それでも、1月末になってからはようやく断続的ながら公演が再開され(オペラは1月25日のオッフェンバック『ホフマン物語』で再スタート)、『ジゼル』は2月1日、2日(マチネとソワレの二公演)に続いて4日と5日に公演が行われた。
2月4日の午後7時。開演30分前のガルニエ宮はすでに荷物検査を受ける人々の行列ができていた。客席がほぼ満員となり、19時30分の開演時間が過ぎてパドルー管弦楽楽団がオーケストラピットで演奏開始の用意ができたところで、袖からオペラ座の女性職員が現れた。当夜の公演は行われるが、ダンサー、裏方、オペラ座管弦楽団、同合唱団、事務職員たちからのメッセージが映写されることが告げられると、場内の数か所から観客のブーイングや野次が飛んだ。数分間でメッセージの映写が終わってようやくコーン・ケッセルズが指揮台に上り、アドルフ・アダム作曲の音楽が流れ出すと、次第にとげとげしい雰囲気が和らいでいった。そして幕が上がり、後方の山上にお城、舞台の左にジゼルの家があるドイツの森に囲まれた村の広場が見え、村人に扮したダンサーたちが登場して無事公演が開始された。

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© Jean Louis Duzert

ところで、オペラ座がストをしている期間もパリの他の劇場ではダンスや演劇、コンサートが交通機関が止まっているにも関わらず行われ、観客は自転車、徒歩、車の相乗り、ローラー・スケートといった思い思いの手段で会場に足を運んでいた。
現在シャトレ広場に面した本来の建物が工事中のパリ市立劇場は、市内や郊外の会場を間借りしてダンス公演を継続しているが、1月7日から15日までパリ左岸13区のイタリア広場近くにある13 ème ART劇場でイスラエル・ガルバン・カンパニーによる公演を企画した。
この公演は、フラメンコダンサーで振付家としても活動しているイスラエル・ガルバンがソロで『春の祭典』を踊り、音楽はほぼ十年前からガルバンと共演しているピアニストのシルヴィ・クルヴォワジエが担当した。
クルヴォワジエはインタヴューでガルバンについて「彼はきわめて身体能力の高いダンサー、特にリズム感覚が抜きんでています。ガルバンの踊りは動きと空間の移動、重心の変化、生き生きとしたエネルギーとの関係が一体になっています。これと同じような感覚を私はピアノや音楽との関係で感じています。そのために、彼といっしょに作品を演じると、私は彼の振付けた動きの延長にいるようにします」と語っている。
ガルバンはずっと前からダンサーとしてのニジンスキーに魅了されていた。そして、『春の祭典』はニジンスキーの振付を通して見出だした。「ニジンスキーはストラヴィンスキーが音楽に託した視点に沿って『春の祭典』を作ることで、緊迫感が生まれた。ダンサーは特に身体のリズムを表現するように求められている。ガルバンはフラメンコのリズムに依拠することで、作品の原点に戻ろうとした。

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© Jean Louis Duzert

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© Jean Louis Duzert

舞台の中央から左側にグランドピアノが二台あり、短い黒のシャジューブルを来たガルバンは脚を外して右手奥に立てかけられたピアノの弦の前に立っていた。片足は裸足、もう片足には赤い長いソックスに膝当て。客席からはあたかも、皮がむけているかのように見えた。クルヴォワジエによってピアノ二台に編曲された『春の祭典』の音楽に乗って靴のかかとが機関銃のような速度で床に打ち付けられて、サパテアードによる一風変わった儀式が始まった。床と一口に言っても、木材、鋼鉄、砂、球といった数種類の素材によってできているので、場所によって打音が違ってくる。オーケストラの音楽ではなくピアノを使ったのは、フラメンコが踊られたアンダルシアのキャバレーで当初ひんぱんに使われたからだという。ピアノの速い打鍵とあいまってガルバンの指が宙で素早く動いて、彼の身体全体が燃え立つ炎と化したかのような異様な雰囲気が周囲を包んだ。ピアニスト二人がしばしば立ち上がっては、楽器の内側の弦をはじいて音を出すというパーフォーマンスも加味されていた。
弾けるようなガルバンの身体の動きは激烈で、打楽器に変貌していた。約60分のパーフォーマンスが終わると舞台には沈黙が広がり、やがて客席から割れるような拍手が沸き起こった。
(2020年1月7日 13ème Art劇場)

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© Jean Louis Duzert

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© Jean Louis Duzert

『La Consagracion de la Primavera』(『春の祭典』)
振付・演出・ダンサー:イスラエル・ガルバン
音楽監督:シルヴィー・クルヴォワジエ
照明:ルーベン・カマチョ
装置:パブロ・プジョル
衣装アドヴァイザー:レイエス・ミュリエル・デル・ポーゾ
音楽:
「コンスピラシオン」作曲&ピアノ シルヴィー・クルヴォワジエ&コリー・スマイス
「春の祭典」作曲 ストラヴィンスキー 4手ピアノへの編曲 シルヴィー・クルヴォワジエ
「スぺクトロ」作曲 ソフィー・クルヴォワジエ

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