パリ、シャトレ歌劇場がリニューアルし、バレエ・リュスの記念碑的作品にちなんだ『パラード』を上演する

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Paris en Parade : le Châtelet reouvre ses portes au public

シャトレ歌劇場がスペクタクル『パラード』でリニューアル・オープン

パリに新たなダンスの拠点が誕生へ。
シャトレ歌劇場はパリの中心シテ島を臨むシャトレ広場にある。オスマン男爵の都市計画に従って、1862年にテアトル・アンペリアル(帝国劇場)の名前で開場した。
1909年、ベル・エポックが華やかな頃、ディアギレフ率いるロシア・バレエ団(バレエ・リュス)がこのシャトレ歌劇場に登場し、6週間にわたってバレエとオペラを公演した。これが「20世紀芸術史の大事件」と言われたバレエ・リュス公演の幕開けである。この時の出演者にはヴァツラフ・ニジンスキー、アンナ・パヴロワ、タマラ・カルサヴィーナ、ミハイル・フォーキンなど、20世紀バレエ芸術の花を大きく咲かせた錚々たる舞踊家たちがいた。その後もバレエ・リュスのパリ公演が開催される。

Chatelet--Parade--1-ateliers-percussions-Maputo-(c)-Thomas-Amouroux.jpg

ateliers percussions Maputo © Thomas Amouroux

Chatelet-Parade-3-DakhaBrakha.jpg

DakhaBrakha

1970年までシャトレ歌劇場はオペレッタ専用劇場だったが、1980年の大改装以降はオペラとオペレッタ公演が中心となる。しかし、1988年に総監督に就任したステファン・リスナー(現・パリ・オペラ座総監督)がウイリアム・フォーサイスをレジデント・コレグラファーに任命して、フォーサイスの絶頂期の作品の多くがこの歌劇場で上演されている。2017年からは改修工事に入っていたが、2019年9月に工事が終わり、リニューアル・オープンする。ルース・マッケンジーとトマ・ローリオ・ディ・プロヴォの共同総監督はプログラムを一新し、バレエ、ミュージカル、コンサート、オペラと多彩なジャンルがとり上げられることになった。

Chatelet-Parade-2--Boite-Noire-©Sebastien-Lozé.jpg

Boite Noire © Sebastien Lozé

そしてシャトレ歌劇場リニューアル・オープン記念公演が9月13日から15日まで行われる。そのスペクタクルは『パラード』。これはもちろん、1917年5月18日にシャトレ歌劇場でディアギレフが率いるバレエ・リュスによって初演された記念碑的作品『パラード』にちなんだ舞台である。バレエ・リュスの『パラード』は、レオニード・マシーンが振付け、ピカソが衣装・舞台幕・装置を考案し、ジャン・コクトーが筋書きを考え、エリック・サティが作曲した。これは当時の最先端の芸術家たちによる一大コラボレーションとも言うべきスペクタクルだった。作品は見世物小屋の呼び込みを舞台化した前衛的なもので、当時のバレエの概念を超える画期的な試みだった。そのため当時のヨーロッパ芸術界に大きな論争を巻き起こしている。

今回のシャトレ歌劇場のスペクタクル『パレード』は4幕構成だ。
第1幕は市役所前広場で行われる子供のためのアトリエ(参加費無料)。パリ郊外に拠点を置くサーカス団、アカデミー・フラテリーニのメンバーが子供たちにサーカスの初歩を教える。

第2幕はモザンビークから来る巨大な人形を操るマプートのメンバーが10数名の打楽器奏者とともに、パフォーマンスを繰り広げる。(無料)

_Chatelet-Parade-5--Las-marionetas-gigantes-de-Moçambique(c)Thomas-Amouroux---18.jpg

Las marionetas gigantes de Moçambique © Thomas Amouroux

_Chatelet-Parade-4-Las-marionetas-gigantes-de-Moçambique-(c)Thomas-Amouroux---11.jpg

Las marionetas gigantes de Moçambique © Thomas Amouroux

第3幕は「サティの世界」と銘打たれ、シャトレ歌劇場内部のフォワイエ、大劇場、サロン、階段といったさまざまな場所でマーティン・ダンカンが演出したサプライズが観客を待ち受けている。約40名の俳優がフランシス・オーコナーが考案した奇抜な衣装をまとって、サティのクレイジーな世界が浮かび上がらせる。(無料)

第4幕 劇場にベルが鳴り、入場券を持った観客が大ホールに入り、3部構成の第4幕を見る。(有料)
第1部 モザンビークの巨大な人形と打楽器により開幕セレモニーが行われる。
第2部 ステファーヌ・リコルデル サーカス団のメンバーがウクライナのグループ、ダカブラカの音楽伴奏で舞台に登場。
第3部 It's about Time--Small Rise--Landscapeの3つからなり、エリザベス・ストレブ指導のアクロバットが演じられる。音楽はシャトレ歌劇場が委嘱したピエール・イヴ・マセ作曲の新曲がマチアス・ピンチャー指揮のアンサンブル・アンテルコンタンポランによって演奏される。

シャトレ歌劇場の2019・20年シーズンの開幕公演後のダンスは以下の通り。
⚫︎『ダンスの静かな夕べ』A quiet evening of dance ウイリアム・フォーサイス振付
11月4日から10日
⚫︎『サマースペース』Summerspace、『エクスチェンジ』Exchange、『シナリオ』Scenario マース・カニンガム振付
ヨルゴス・ルーコス振付 リヨン国立オペラバレエ団引越公演
11月14日から20日
⚫︎『パリのアメリカ人』Un Américain à Paris クリストファー・ウィールドン振付 ガーシュイン作曲
11月28日から1月1日
⚫︎『七つの大罪』Les sept péchés capitaux ピナ・バウシュ振付 ヴッパタール舞踊団
クルト・ヴァイル音楽 ブレヒト台本
3月24日から29日
⚫︎ パリ夏季ダンスフェスティヴァル 7月2日から18日
『シンデレラ』Cendrillon クリストファー・ウィールドン振付 オランダ国立バレエ団
『ジゼル』Giselle アクラム・カーン振付 イングリッシュ・ナショナル・バレエ団

シャトレ歌劇場の新しいプログラムにより、パリ・オペラ座(ガルニエ宮、バスチーユ・オペラ)、シャイヨ劇場、パリ市立劇場(現代改修工事中でエスパス・カルダン劇場、シャイヨ劇場などで公演)に加えて新しいダンスシーンがパリに生まれることになる。

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る