オペラ座ダンサー・インタビュー:エレオノーラ・アバニャート

ワールドレポート/パリ

大村 真理子(在パリ・フリーエディター) Text by Mariko OMURA

Eleonora Abbagnato エレオノーラ・アバニャート(エトワール)

オペラ座のシーズン2018/19年の話題の1つは引退宣言をしたマッツ・エクの復活だった。その公演に際してレパートリー入りした『カルメン』でイタリア生まれらしくラテン女の炎を燃やし、情熱的ヒロイン役を踊ったエレオノーラ。強烈な個性を存分に発揮し、公演ごとに会場から大きな拍手を贈られていた。1978年6月30日生まれの彼女は、来シーズン、『ル・パルク』で12月23日にアデュー公演を行う。

かつてはバンジャマン・ペッシュが率いる「エトワール・ガラ」の一員として定期的に来日していたので、日本でも多くのファンをもつ彼女。2015年にローマ歌劇場バレエ団の芸術監督に就任して以来、エトワールとして舞台にたつパリとローマを往復する暮らしを送っている。芸術監督として素晴らしい結果を出している彼女とローマ歌劇場バレエ団との契約が、2021年まで更新されたそうだ。一人の職業人として、そして元サッカー選手の夫フェデリコ・バルザレッティとの間に二人の子供を得た彼女は一人の女性としても、充足の人生を送っている様子だ。美しいだけでなく、人間的にも魅力をますますと増しているエレオノーラ。このように華と輝きのあるエトワールがオペラ座を去るのは、バレエ団から太陽が消えてしまうような感がある。

Q:アデュー公演の作品にアンジュラン・プレルジョカージュの『ル・パルク』を選んだのはなぜでしょうか。

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photo Opéra national de Paris

A:オーレリー(・デュポン芸術監督)によるシーズン2019/20のプログラムの中で、これは私が過去に踊ったことがある作品で、とてもポエジーにみちていて、オペラ座で最後に踊る作品として、とっても美しい作品だと思うからよ。ローラン・プティあるいはジョン・ノイマイヤーの作品というのも最後の作品として考えられるけれど、あいにくとこのシーズンのプログラムにはないので・・・。私は『ル・パルク』を振付けたアンジュランとは、とっても強い関係にもあるの。彼の『メディアの夢』の創作ダンサーの一人でもあったし、過去に彼の作品をオペラ座で多数踊っています。おまけに彼はローマ歌劇場バレエ団の仕事も助けてくれているのよ。現存のコレグラファーの作品を踊ってアデューというのは、私のオペラ座におけるキャリアにも結びつくことでもあるので。

Q:公演は12月23日ですね。パートナーは決まっていますか。

A:この作品、過去にはヤン・ブリダー、ステファン・ブリヨンと踊っています。バンジャマン・ペッシュのアデュー公演のときは、パ・ド・ドゥを彼と踊りました。でも、今シーズンの『ル・パルク』は、誰と踊るかがまだ未定なのよ。

Q:オペラ座を42歳で去ることは終わりではなく、新しい人生の始まりだとダンサーが言うのをよく耳にします。

A:私の場合はノンね。だって、幸いなことに芸術監督の経歴がすでに始まっているのだから。これはとても好きな仕事よ。でも何よりもイタリアのバレエ団からの提案だったということが、受け入れた大きな理由なの。芸術面で困難に陥っているイタリアを助けるために、自分の国に戻る必要を感じていたのね。私はダンスを愛している。フランスとイタリアで生まれたダンス。イタリアの複数のカンパニーがクローズしてしまったことを、すごく残念に感じていたの。スカラ座は別として、どこも財政面で困難を抱えていて、しかも観客を教育する必要がある。すべてやり直しの必要があるの。芸術監督の声がかかったとき、この機会を逃すわけにはいかなかった。ローマは美しい町よ。イタリアの首都でもある。そのローマ歌劇場がバレエ団のダンサーもレパートリーも、すべてに再構築が必要な状況に陥っていて・・・。それでオペラ座でのキャリアを続けつつ、祖国に戻ることにしたの。私が始めたときダンサーはいたけれど、契約のあるダンサーは少なかったので1年の契約を結ぶシステムを作ったわ。70名のカンパニー。もう少し増やせればと思って、来週はオーディションを行うことになってる。ローマとパリで働く・・・このオーガナイズはなかなか大変よ。

Q:オペラ座の舞台があるとき、ローマの仕事はどのようにしているのですか。

A:ローマにはバンジャマン(・ペッシュ)がいて、私を助けてくれているの。右腕?そうね。私がいない間は彼が物事を進めていてくれる。でも、それは芸術面だけのことであって、それ以外の問題の解決などは私の役目なので、彼はその代役はできないけれど。私とバンジャマンって、まるで兄妹のような関係でしょう。彼は芸術的には私と同じヴィジョンの持ち主。彼がローマにいてくれるおかげで、私はパリで心穏やかに踊れることができるのよ。

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「シルヴィア」photo Icare/ Opéra national de Paris

Q:ローマ歌劇場の仕事を始めたのはブリジット・ルフェーヴルが芸術監督の時代でしたか。

A:いいえ、バンジャマン・ミルピエが芸監の時代よ。とりわけリスネール(総監)が私をこのプロジェクトへとプッシュしてくれたの。それは私にとって幸運なことだった。ミルピエもとてもオープンなヴィジョンの持ち主でしょ。彼は''頑張れよ、これはとても大切なことだ''って言ってくれた。本当にラッキーよ。だって、他所でたくさん仕事をすることを認めてくれる芸術監督なんて、滅多にいないのだから・・。42歳になる前にこうして新しい経歴をスタートするって、ダンサーにとって良いことだと思うし、実際、定年を迎える前に次の進路のための研修を受けているダンサーが増えているわ。オペラ座を去った後、別の人生があるのだから、もし準備しておかなければ厄介なことになってしまうでしょ。定年後、もちろん舞台は恋しく感じることになるとは思う。舞台の上では素晴らしい時間を過ごせるのだし、それに観客からの反応も感じられて・・。オペラ座にはどんな作品にも拍手を送り、どんなコレグラファーの作品も評価をする素晴らしい観客がいる。イタリアではそれはとても難しいことなのよ。オペラ座のように複雑なプログラムを提案したら、成功は期待できないのだから。

Q:ではローマのプログラムは、ネオクラシックとクラシックがメインということですか。

A:観客が好むのはクラシックなので、クラシック作品をできる限り提案するようにしている。例えば来シーズンは『白鳥の湖』、『イン・ザ・ナイト』『コンサート』『グラスピーシーズ』のロビンズ・プログラム、『白の組曲』、そしてパストールの『ボレロ』。ジョゼ(・マルチネーズ)が新しく『海賊』を創作するのよ。来季のプログラムはダンサーの進歩ということも念頭において考えたものなの。ポワントで踊ることが彼らには必要なので・・・。

Q:オペラ座のダンサーをローマにゲストで招くこともあるようですね。

A:そう。毎年、ゲスト・ダンサーを招いているのだけど、とりわけオペラ座の仲間が踊りにきてくれるのを私は期待してるの。芸術監督になって以来ずっとマチュー(・ガニオ)に声をかけているのだけど、スケジュールの都合が全然つかなくって・・・。来季のバンジャマン・ペッシュの『白鳥の湖』ではアマンディーヌ(・アルビッソン)とジェルマン(・ルーヴェ)が踊ることになっているわ。アマンディーヌは過去にもマチアス(・エイマン)と一緒に来て『ジゼル』を踊ってるのよ。ジェルマンも今度の『白鳥』が二度目ね。フランソワ・アリュが来る予定だったのだけど、結局だめになってしまったのが残念。でも、いつか彼にはぜひ来て欲しいと思ってるわ。ジョゼだけでなくローラン・イレール、アニエス・ルテステュも助けに来てくれるし・・・オペラ座の仲間とは、引退したダンサーも含め、とっても良い関係があるの。

Q:12月23日でオペラ座を去った後は、ローマ歌劇場の仕事に集中するということですね。

A:そう。それにバレエ団以外にも、多くのプロジェクトがイタリアで待ってるのよ。例えば映画。シシリアの小さな女の子、ママのブティック、ダンス・・・私の人生にインスパイアーされた映画の予定があるの。イタリア映画だけど全世界で公開されるものよ。この小さな少女のキャスティングも私がするのだけど、私自身は出演しないわ。ダンサーとしての映像が最後に入るかもしれない・・・。

Q:シシリアの少女はいかにダンスを始めたのですか。

A:それは映画でも明らかに語られることだけど、私の家族には誰もダンスに関係のある人はいないの。父はサッカーとモードの仕事でしょ。彼、パレルモのサッカー・チームの経営者だったのよ。それが縁で私はサッカー選手と結婚したわけだけど・・・。母はファッション・ブティックをやっていて、というようにダンスとは無縁。母の友達がそのブティックの上でクラシック・ダンス教室を持っていて、そこに母は私を子守がわりに預けていたのね。3歳のころよ。教室で行われることを、私は目を大きくして見ていて・・・これが私がダンスを始めることになるきっかけ。運命ね。自分を前に出して一人で踊る、これが気に入ったの。自宅では家具を部屋の隅に追いやって、家族を集めてダンスして見せたり。表現をすることが好きだったから、歌も歌って・・・。一人でショーをやっていたの。娘のジュリアも今同じようなことをしてる。今7歳なのだけど、この間ローマ歌劇場でプレルジョカージュの『白雪姫』で踊ったのよ。そう、私がローラン・プティのカンパニーで子供時代に踊ったようにね。ローランは『眠れる森の美女』のための子供を探していて、私をみつけ、彼の本拠地のマルセイユまで連れていったのよ。その後、カンヌ、モナコ、パリで踊って、そこでクロード・ベッシー(当時のオペラ座バレエ学校の校長)と出会い、オペラ座バレエ学校に入ることになって、と、それはあっという間のことだった。

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「春の祭典」
photo Agathe Poupeney/ Opéra national de Paris

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「春の祭典」
photo Agathe Poupeney/ Opéra national de Paris

Q:その当時はパリ・オペラ座について知っていましたか。

A:全然。『眠れる森の美女』を踊るためにローランと一緒にパリに来ただけで、ドミニク・カルフーニのこと以外、オペラ座のことは何も知らなかった。彼女はローランのミューズだったでしょ。オペラ座バレエ学校に入ったのは14歳のとき。オペラ座で成功したら、それは最高のことだってローランに言われて・・。

Q:1996年の入団後、2001年にプルミエール・ダンスーズに昇級するまでハイスピードでした。エトワール任命は2013年ですね。

A:そう、その間とても長かったわ。ブリジット(・ルフェーヴル当時の芸術監督)が私を待たせたの(笑)。でも、エトワールでもプルミエールでも私には同じことだった。待ったのは確かだけど、その間私はエトワール並みに配役されていたのだから。任命前にあらゆる役に配されていたし、プルミエールなのに第一配役で初日も踊ってと、良い配役を得られていたのだからブリジットを恨むということはないわ。おまけにコレグラファーたちは私を選んでくれて・・彼らには心から感謝している。舞台数の少ないプルミエール・ダンスーズがいる一方、私は彼らのおかげで舞台で踊る数がどんどん増えていったの。舞台で踊ることが大切なのだから、私は幸せだったわ。しかも、マニュ(マニェエル・ルグリ)やニコラ(・ルリッシュ)といった素晴らしいダンサーが私のパートナーで・・。

Q:精神的にはいかがでしたか。

A:精神的にはとても辛かった。私の任命をブリジットは先送り、先送りしていたので、これには苦しい思いをしました。その間に私よりも舞台経験も少ないダンサーが任命されていくし、いったい何が起きているのか理解できないまま私はずっと待っていたの。今でこそオペラ座は全員がまるでイタリア人のようだけど(笑)、私の時代、学校でたった一人のイタリア人だったのよ。任命されないのは、私が外国人だからかな、と思うこともあったけど、ジョゼだってスペイン人でけどすでにエトワールだったし、その後アルゼンチンのリュドミラ(・パリエロ)が任命されて・・・。私は怪我なしにずっと踊っていて肉体的に頑丈。一度も怪我で休んだことがなく、今に至るまでもそうなの。これってチャンスね。怪我をしないダンサーって珍しいのだから。で、私はこうしたパーソナリティだし、エネルギーに溢れていて、パワフルで・・・ブリジットは私を精神的にも強い人間だと思ったのかもしれない。他のダンサーよりも苦痛に耐えられるだろうって、思ったのか・・・というように想像するけど、わからないわ。

Q:13年間、任命を待つ間に精神的に強くなりましたか。

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マッツ・エク『カルメン』
photo Anne Ray/ Opéra national de Paris

A:もちろん。1年、そして半年とオペラ座を離れて、イタリアで映画や舞台に出ていたの。ダンスをやめる気は全然なかったけれど、オペラ座と距離を置きたいと思ったから。その間に結婚。2011年、パレルモの小さいけれど素晴らしいカペラ・パラティナという教会で両者の家族だけを集めて、ごく内輪な式を挙げたのよ。そして第一子を出産し・・・。その後オペラ座に戻ってニコラをパートナーにローラン・プティの『カルメン』を踊ったところで、任命されたのよ。私の人生には、『カルメン』がついて回っているといえるわね。

Q:カルメンという女性をどのように見ていますか。

A:私、この人物がとても好きよ。男性に対してとても率直で、パワーがあって。でも同時に曖昧さもあるわね。愛、情熱・・深淵さも持ち合わせてる。女性として好きだわ。彼女、自分が人に思いを抱くことなどないと思っていたのに、そうではないと発見するの。こうした面をダンスで表現するのは楽しいわ。マッツ・エクの『カルメン』はローラン(・プティ)のとはとっても異なるの。後者のカルメンはとてもフェミニンでセンシュアルだけど、マッツ・エクのカルメンは強くてマスキュリンな女性ね。私の中にあるシシリア女の強さ、エネルギーを出せるわ。マッツ・エクの『カルメン』は役柄に入るのがローランのに比べると難しいの。ローランのは酒場、パーティ、出会い、愛、情熱、死というようにダイレクトなので楽に役柄に入れるけれど。

Q:ジョゼ・マルチネーズ創作の『カルメン』をローマ・バレエ団で公演する予定はありますか。

A:今のところはないけれど、これは観客が好む人気作品なので・・。以前イリ・ブベニチェクにローマ・バレエ団のために『カルメン』を作ってもらったのよ。私自身についていえばマッツ・エク、ローランの『カルメン』、それに過去にアルベール・アロンソの『カルメン』も、アメデオ・アモディオの『カルメン』も踊ってるのよ。この作品は大勢のコレグファラーが取り組んでいて、どれも美しい。ヨハン・インガーのも好きだわ。

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マッツ・エク『カルメン』
photo Anne Ray/ Opéra national de Paris

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ローラン・プティ『カルメン』
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

Q:オペラ座で『カルメン』の他に、キャリアの中で大切な作品は何でしょうか。

A:『椿姫』ね。ジョン・ノイマイヤーは私を早くから登用してくれていたのよ。彼の『真夏の夜の夢』が最初で、19歳のときだった。難しかったけれど、素晴らしいバレエなので、いつかこれをローマ・バレエでも上演できたらって思っているわ。『椿姫』のヒロインは、パートナーとの関係がとても強く、得られる中でもっとも美しい役といえる。私はバンジャマン(・ペッシュ)、そしてステファン(・ブリヨン)と踊りました。パートナーが変わると関係も違ってくる作品で、バンジャマンのはとても強くって、誠実な男性で、ステファンは神秘的で、深くて、センシブル。このようにパートナーと分かち合える役というのは美しい。パートナーと一緒につくりあげる作品ね。そういう点で『ル・パルク』も好きなの。パートナーとのコネクションがとても強いから。クラシック作品の中にはあまりストーリーがないバレエがあるでしょ。『ドン・キホーテ』、これは強い個性の主人公なので踊るのを楽しんだけど、例えば『眠れる森の美女』ではしっかりしたストーリーがあるわけじゃなく好きになれなかった。『アルルの女』や『若者と死』のように、私、強い主人公の作品が好き。舞台の上で女優のように、という役が好き。でも女優には興味がないわ。以前、オペラ座から離れて舞台や映画で女優の仕事を試してわかったのだけど、女優って思いの他身体を使わないから・・・。

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「椿姫」
photo Svetlana Loboff/ Opéra national de Paris

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「椿姫」
photo Svetlana Loboff/ Opéra national de Paris

Q:オペラ座でのキャリアを振り返って、思い残すことは何かありますか。

A:何もないわ。多くの作品を踊ったし、踊りたい作品はすべて踊ったし。偉大なコレグラファーたちに会うことができた。キリアン、フォーサイス・・ピナ・バウシュとは18歳のときに知り合い、25年間『春の祭典』を踊ったのよ。信じられないことばかり。これほどのことを経験できるのはオペラ座だけね、他のカンパニーではありえない。実はジョンのカンパニーに行きたいって考えたことがあったの。スカラ座に行きたいとも思った・・任命されずにいたから、いつもオペラ座から出て行こうって思っていたのね(笑)。でも他所のカンパニーではこれほどレパートリーはヴァラエティーに富んでいず、きっと不幸せに感じてしまうに違いないって、思いとどまったのよ。

Q:ローマ歌劇場バレエ団のダンサーたちにもレパートリーの多様性を与えたいと思っていますか。

A:もちろんよ。もしスタイルの多様性、踊る人物の変化がなかったら、役から得るセンセーションも生まれない。それがなかったら前進できないでしょ。進化できないのよ。

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「若者と死」
photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

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「アプロクシメイト・ソナタ」セバスチャン・ベルトーと
photo Ann Ray/ Opéra national de Paris

Q:エトワールとしてオペラ座の舞台で踊り、ローマ歌劇場オペラ団を立て直し、家庭生活も、と大変充実した人生を謳歌しているように感じられます。

A:私、とっても幸せに感じているのよ。オペラ座での素晴らしい経験。それを若いダンサーたち、真のダンスに飢えているダンサーたちに伝承することができるのだもの。本当にこれは幸せなことよ。イタリアにいると自分の国なのでエネルギーがより強く感じられる。それに家族!子供たちは素晴らしいわ。彼らからもらうことがとても多いのよ。長女のジュリアも4歳の息子も、私がたくさん仕事をしなければならないのだって、わかってくれている。私がダンサーとして舞台で踊るのを見るのを二人とも楽しみにしてるのよ。芸術監督として私が秘書を相手に話してるところをジュリアが真似してみせたり・・・これには笑わされるわ。アデュー公演が12月23日なのは、その後家族で一緒にクリスマスが祝えるからなのよ。その後ずっと二人で一緒の時間が増えることになるって、ジュリアは私のアデューをすごく喜んでるわ。

Q:12月23日までパリとローマを往復する暮らしが続くのですね。

A:そう。飛行機でたった1時間40分なので、この暮らしにはすっかり慣れたわ。それに家族もよくパリには来るのよ。とても異なるけれどパリもローマもどちらも素晴らしい町なので、子供たちはパリが大好き。下の子は父親のようにサッカーをするべく生まれたの。娘のジュリアはダンス向きなので、うまくできてるでしょ。でも、最近テレビで女性のサッカー試合を彼女はよく見ていて、''パパ、私も試してみたい !!''って言い出したの。私は''だめ、あれは女性向けじゃないわ''って(笑)・・・。

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「白夜」フリードマン・フォーゲルと
photo Julien Benhamou/ Opéra de Rome

A:最近、ローマ歌劇場バレエ団の新作『白夜( nuit blanche)』がディオールによる衣装のバレエということもあって、世界的な話題となりました。

Q:ディオールのマリア・グラツィア(・キウリ)とは、彼女がヴァレンティノのクリエーティヴ・ディレクターだった時代に知り合ったの。ヴァレンティノ氏は2010年に私とニコラ(・ルリッシュ)がウィーンのニューイヤーコンサートで踊ったときに、コスチュームをデザインしてくれたのね。それ以来、彼とは親しくしていて、私がローマ歌劇場バレエ団の監督になったと知って、すぐに会いに来てくれたわ。彼はローマ歌劇場ではオペラ『ラ・トラヴィアータ』の衣装を担当し、これ、とっても好評だった。こうした繋がりで、私はマリア・キウリとも親しくなって・・。その後、彼女がディオールのクリエーティヴ・ディレクターに就任してフランスで仕事をすることになり、私同様にパリと家族のいるローマを行ったり来たり。飛行機で顔をあわせることがしょっちゅうなの。よく一緒に話す中で、『白夜』のプロジェクトについても彼女に説明したのよ。そして創作するセバスチャン・ベルトー(オペラ座スジェ)と二人で彼女にコスチュームをお願いしにいったら、2つ返事でOKしてくれた。ディオールとのコラボレーションというのはローマ歌劇場にとって、とても大きな幸運だったわ。

A:クチュリエの仕事とバレエ衣装の仕事は同じではないとよく言われますが・・。

Q:彼女はダンスに興味を持っていて、イサドラ・ダンカンを始めとする歴史に名を残す女性舞踏家たちにインスパイアーされたプレタ・ポルテ・コレクションも作っています。このコレクションで彼女は伸縮性のある素材を使っていて・・・そうしたことを知っていたので、彼女に『白夜』の衣装をお願いするのはパーフェクトだわ!と思ったわけです。彼女は私たちの要望にもじっくりと耳を傾けてもくれて、素晴らしいコスチュームを作ってくれました。この秋、『白夜』をニューヨークで踊る機会があるのよ。

Q:日本で踊る予定はないのでしょうか。

Q:残念ながら、今のところは・・。暫く行ってないので、日本が恋しいわ。ローマ歌劇場バレエ団の公演をいつか日本で実現できたら、って夢みているの。

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「白夜」フリードマン・フォーゲルと photo Julien Benhamou/ Opéra de Rome

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