令和元年台風 19 号により、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、
被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

リュドミラ・パリエロが貧しい時からスポットライトが当たるまでを丁寧に演じた、ヌレエフ版『シンデレラ』

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

"Cendrillon" RUDOLF NOUREEV 『シンデレラ(サンドリヨン)』 ルドルフ・ヌレエフ:振付

11月27日から1月2日までバスチーユ・オペラでルドルフ・ヌレエフ振付の『シンデレラ』が行われた。例年のことながらダンサーの怪我(ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン 他)による配役変更があっただけでなく、昨年秋から毎週土曜日にフランス全土で広がっている黄色ジャケットの反政府デモが続いていて、12月8日は『シンデレラ』がマチネとソワレの二公演、ガルニエでは『椿姫』と「オペラ座バレエ学校のデモンストレーション」のすべてが中止になってしまった。(12月15日マチネに8日の観客のための追加公演があった)この結果として、わずか一配役だけしか見られなかったのは残念だった。
プルミエを踊ったドロテ・ジルベール(シンデレラ)とユーゴ・マルシャン(映画スター俳優)、リュドミラ・パリエロとジェルマン・ルーヴェ、ソフィー・サン=マルタンとフランソワ・アリュ、ヴァランティーヌ・コラサントとカール・パケットのうち、パリエロとルーヴェの組み合わせを見た。

OPB-cendrillon-3.jpg

© Opéra national de Paris/Yonathan Keller

OPB-cendrillon-5-.jpg

© Opéra national de Paris/Yonathan Keller

ヌレエフ振付の『シンデレラ』は1986年10月25日にガルニエ宮で初演されて以来、すでに30年以上の歳月が経過したにも関わらずいまだにレパートリーに残っている。今回は2011年11月にアニエス・ルテステュのシンデレラとステファン・ブリヨンの映画スターで見てから7年振りだ。
第1幕始めで、暖炉の前にほうきを手にして立ったところから、リュドミラ・パリエロの姿には寂しげな気配がそれとなく漂った。映画スタジオに行く準備をしている姉妹たちのバレエレッスンをうらやましそうに見やった後、目を落として自分の灰色の服に戻った視線には影が差した。一つ一つの所作やまなざし、表情が実にていねいに描かれて、掃除婦扱いされていたどん底から、映画のライトを浴びるまでの心の変化を見ていて自然に辿ることができた。
シンデレラに一目ぼれする映画スターはジェルマン・ルーヴェが演じた。どんな若い女性の目にも魅力的に映るすらりとした長身と美貌で役柄に合っていた。フィナーレでパリエロをリフトし、二人ののびやかな身体の周囲をシンデレラの白いショールが揺れる部分は実にきれいだった。

OPB-cendrillon-7.jpg

OPB-cendrillon-12.jpg

OPB-cendrillon-10-.jpg

OPB-cendrillon-11.jpg

© Opéra national de Paris/Yonathan Keller

初演ではヌレエフ自身が踊った映画プロデューサーは、ベテランのアレッシオ・カルボーネが持ち前の演技力を活かして踊った。ただし、髭に葉巻とメガネというグーチョ・マルクスを模した格好は現在の子どもたちにはぴんと来なかったようで、時代の流れを感じさせられた。この作品の喜劇的な側面で大きな役割を果たす継母はアレクサンドル・ガスが演じ、場内の笑いを誘っていたが、前回(2011年)のステファーヌ・ファヴァロンのような強い印象を与えるには至らなかった。意地悪な二姉妹はベテランのエミール・コゼットと若いイダ・ヴィキンコスキの組み合わせだったが、滑稽な演技と踊りによって純粋なヒロインのとの対照をきちんと描いていた。パブロ・ラガサはダンス教師らしい物腰と立ち振る舞いを見せて、カーテンコールで大きな拍手で迎えられた。コール・ド・バレエも熱の入った演技で舞台を盛り上げた。

OPB-cendrillon-2.jpg

OPB-cendrillon-4.jpg

OPB-cendrillon-1-.jpg

OPB-cendrillon-6.jpg

OPB-cendrillon-8-.jpg

OPB-cendrillon-9-.jpg

© Opéra national de Paris/Yonathan Keller

見られなかった配役では、確実なテクニックと華やいだ雰囲気を出したドロテ・ジルベールと長身を生かしたスケールのある踊りを見せたユーゴ・マルシャンの組み合わせも、バレエ批評家と観客から高い評価を得ていた。また、観客の一部に熱狂的なファンを持つフランソワ・アリュが映画スター役で舞台狭しと飛び跳ねて会場を沸かせたという。
12月31日の大晦日公演ではヴァランティーヌ・コラサントを相手にカール・パケットが映画スターを踊るアデュー公演となった。パケットは2009年の12月31年にエトワールに任命されてから9年間、安定した演技と長身の美貌を活かして、『ジゼル』のアルブレヒトのような王子役で活躍する一方、『白鳥の湖』のロットバルトのような悪役でも存在感を見せた。特にパートナーへの細かな配慮で知られ、アデューでは多くの女性エトワールたちが彼との別れを惜しんだ。

Karl-Paquette-1.jpg

Karl-Paquette-2.jpg

Karl-Paquette-3.jpg

Karl-Paquette-4.jpg

Karl-Paquette-6.jpg

カール・パケット引退の舞台より(C)Yonathan Kellerman /Opéra national de Paris

昨年夏日本で怪我をしたオニール八菜はその後リハビリを順調に進め、1月現在『白鳥の湖』のオディール/オデットの代役として連日リハーサルに励んでいる。久しぶりに元気な姿をバスチーユ・オペラで見てみたいものだ。
(2018年12月2日 バスチーユ・オペラ)

『シンデレラ』(仏題サンドリヨン)3幕のバレエ
シャルル・ペロー作「サンドリヨンあるいは小さなガラスの靴」による
音楽 セルジュ・プロコフィエフ(1945年)
アダプテーション/振付/演出 ルドルフ・ヌレエフ
装置 ペトリカ・イオネスコ
衣装 森英恵
照明 グイド・レヴィ
(パリ・オペラ座1986年10月25日初演)

配役(12月2日)
シンデレラ リュドミラ・パリエロ
スター俳優 ジェルマン・ルーヴェ
姉妹 エミリー・コゼット、イダ・ヴィキンコスキー
継母 アレクサンドル・ガス
プロデューサー アレッシオ・カルボーネ
ダンス教師 パブロ・ラガサ
父親 エルヴァン・ル・ルー

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る