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待望のマルグリット役に挑戦したボーラックとガニオ、アバニャートとブリヨンによる『椿姫』

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

"La Dame aux Camélias" JOHN NEUMEIER 『椿姫』ジョン・ノイマイヤー:振付

12月4日から1月3日までガルニエ宮でジョン・ノイマイヤー振付の『椿姫』が19回行われた。1978年にシュツットガルト・バレエ団のマリシア・ハイデのために振付けられたこの作品は、パリ・オペラ座バレエでは2006年6月20日にレパートリー入りして以来、定期的に再演されている。ヒロインのマルグリット・ゴーチエはイザベル・シャラヴォラや、オーレリー・デュポン、この役をアデュー公演に選んだアニエス・ルテステュといったダンサーの演技はいまだに語り継がれている。
今回はマグリットをレオノール・ボーラック、エレオノーラ・アバニャート、ローラ・エケ、アマンディーヌ・アルビッソン、相手役のアルマン・デュヴァルをマチュー・ガニオ、ステファーヌ・ブリヨン、フロリアン・マニュネ、オードリック・ブザールが踊った。そのうちの、ボーラックとガニオ、アバニャートとブリヨンの二組を見た。

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

エトワール任命から二年を経過したレオノール・ボーラックは初めてネオ・クラシックの大役に挑戦した。前々から「ショパンの音楽を使ったこのバレエをぜひとも踊りたい」と望み、待望していた役だった。金髪のちょっと茶目っ気のある子供っぽい姿態を活かした演技は多少テクニックに未完成な部分があったにせよ、品があり、それなりにヒロインらしい雰囲気を出していた。しかし2幕でパリ郊外の田舎にアルマンの父親デュヴァル氏が訪れ、恋人との別れを自己犠牲を以て受け入れる場面で、マルグリットが苦悩の果てに諦めへと至る心の動きがもう一つだったように、細かな仕草や視線で表現していたルテステュやシャラヴォラの芸域には遠かった。マルグリットはジュリエットのようにただただ純粋に恋を生きるだけの若い娘ではなく、売れっ子の高級娼婦の艶麗さとその内面にある純粋さといった多面性を持つ。これから回を重ねることで、演技が深まることが期待される。若手エトワールを前に2006年からアルマンを踊っているマチュー・ガニオは安定感があり、むずかしいポルテでも相手に不安を感じさせない配慮が感じられた。
一方、マルグリットを何度も踊ってきたエレオノーラ・アバニャートは社交人士に囲まれた夜会や舞踏会では妖しいまでの艶やかさを漂わせ、デュヴァル氏との対決では唯一の愛を慟哭の裡に押し殺す苦悩をにじませた。一晩で11回衣装替えをする度に、場面に応じて前とは別の表情を見せることができたのは、やはり永年の経験の賜物だろう。若者らしい恋にひたすら燃え上がるステファーヌ・ブリヨンとのパ・ド・ドゥには情熱があふれ、観客を一気にドラマの中に引き込んだ。

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

ノイマイヤーのこの作品の特徴の一つは、ヒロインが自分の運命をマノン・レスコーに重ね合わせたことだ。ヒロインがアヴェ・プレヴォーの小説を愛読していたことにインスピレーションを受けて、振付家が作品に取り込んだ。マノン役のセ・ウン・パクはいつもながら優れたテクニックで安定した演技を見せたが、マルグリットの運命を導くかのようなマノンの存在感という点で艶麗なエヴ・グランスタインに一日の長があった。
秋の昇級試験で進級を果たしたオペラ座期待のビアンカ・スキュダモアとエロイーズ・ブルドンがオランピア役で溌剌とした舞台姿を見せ、ヤン・サイーズがヒロインに対し最初は冷ややかだったデュヴァル氏の気持ちが次第に同情と悔悟へと変わっていくのをていねいに演じ、ドラマの展開を明瞭にしていた。ベテランのミュリエル・ジュスペルギも表情豊かにヒロインの親友プリューダンスを演じていた。
(2018年12月7日、10日 ガルニエ宮)

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

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© Opéra national de Paris/ Svetlana Loboff

『椿姫』プロローグと3幕のバレエ
(1978年11月4日 シュトゥットガルトバレエ団により初演
 2006年6月20日 パリオペラ座レパートリー入り)
原作 アレクサンドル・デュマ・フィス 戯曲『椿姫』(1848年)
音楽 ショパン
演出・振付 ジョン・ノイマイヤー
装置・衣装 ユルゲン・ローズ
照明 ロルフ・ワルター
ピアノ演奏 エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニッター
ジェームス・タッグル指揮 パリオペラ座管弦楽団
配役(12月7日・10日)
マルグリット・ゴーチエ レオノール・ボーラック/エレオノーラ・アバニャート
アルマン・デュヴァル マチュー・ガニオ/ステファーヌ・ブリヨン
デュヴァル氏(アルマンの父親) ヤン・サイーズ/アンドレ・クレム

プレリュード パリのアパルトマン内部
「ピアノソナタロ短調」作品58より「ラルゴ」
マルグリット・ゴーチエ、アルマン・デュヴァルと父親
配役 プリュ―ダンス・デュヴェルノワ ミュリエル・ジュスペルギ
侯爵 ローラン・ノヴィス
ナニーヌ(マルグリットの侍女) ニノン・ロー
N伯爵 シモン・ヴァラストロ
ピアニスト フレデリック・ヴェス=クニッター

第1幕 ヴァリエテ座
「ピアノ協奏曲第2番へ短調」作品21
マルグリット・ゴーチエ、ナニーヌ、アルマン・デュヴァル、プリューダンス・デュヴェルノワ、侯爵、N伯爵
バレエ『マノン・レスコー』の登場人物
配役
マノン・レスコー エヴ・グランスタイン/セ・ウン・パク
デグリュー マルク・モロー/ファヴィアン・レヴィヨン
マノンに恋する三人の男たち ヤン・シャイユー、アクセル・イボ、ファビアン・レヴィヨン/ヤン・シャイユー、アクセル・マリアーノ、アントニオ・コンフォルティ

舞踏会の招待客
オランピア エロイーズ・ブルドン/ビアンカ・スキュダモア
ガストン・リュー ポール・マルク
マルグリットに恋する三人の男たち ルー・マルコー=ドルアール、サミュエル・ミュレーズ、ニコラ・ディ・ヴィーコ
仮面舞踏会 サブリナ・マレム、ロクサーヌ・ストヤノフ、アデル・べレム他/エロイーズ・ブルドン、ロクサーヌ・ストヤノフ、ナイス・デュボスク他

第2幕 田舎
「華麗なる円舞曲」作品34より「第1番変イ長調」、「3つのエコセーズ」作品72、「華麗なる円舞曲」作品34より「第3番へ長調」、「ソナタロ短調」作品58より「ラルゴ」、「24の前奏曲」作品28より「第2番イ短調」「第17番変イ長調」「第15番変ニ長調」、「ソナタロ短調」作品58より「ラルゴ」、「24の前奏曲」作品28より「第2番イ短調」「第24番ニ短調」
マルグリット・ゴーチエ、アルマン・デュヴァル、デュヴァル氏、プリューダンス・デュヴェルノワ、ガストン・リュー、侯爵、ナニーヌ、ピアニスト、マノン、オランピア、N伯爵、マノンに恋する三人の男たち

第3幕 シャンゼリゼ
「ポーランド民謡による大幻想曲イ長調」作品13より「ラルゴ・マ・ノン・トロッポ」「アンダンティーノ」「アレグレット」「ヴィヴァーチェ」、「バラード第1番ト短調」 「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調」作品22、「ピアノ協奏曲第1番ホ短調」作品11より第2楽章、「ソナタロ短調」作品58より「ラルゴ」
マルグリット・ゴーチエ、アルマン・デュヴァル、プリューダンス・デュヴェルノワ、ガストン・リュー、オランピア、侯爵、N伯爵、ナニーヌ、マノン、マノンに恋する三人の男たち、騎士デグリュー

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