令和元年台風 19 号により、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、
被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

パリ・オペラ座ダンサー・インタビュー:アンドレア・サーリ

ワールドレポート/パリ

大村 真理子(在パリ・フリーエディター) Text by Mariko OMURA

Andrea Sarri(アンドレア・サーリ) カドリーユ

昨年末の『プレイ』でプルミエ・ダンスールのフランソワ・アリュとのデュオで、毎晩大活躍したアンドレア。2016年に入団したてのカドリーユだが、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの『grosse fugue』『浄夜』でも、その切れの良い動きと敏捷さで一際輝いていたダンサーだ。9月から始まるオペラ座の新シーズンでは開幕プログラムの『デカダンス』にも配役され、目下、連日ハードなリハーサルを重ねている。

2016年の学校公演で『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』で徒刑囚を踊った際に、猫科の動物を思わせる体つきや、熱のこもった力強いダンスのアンドレアにジェレミー・ベランガールを重ねた観客は少なくなかった。初参加した3月のコンクールではあいにくと昇級は叶わなかったが、話を聞けば聞くほど入団以来配役にとても恵まれていることに驚かされる。これからどのように成長してゆくのか将来が楽しみな男性ダンサーの一人である。踊るのが嬉しくてたまらない。そんなダンサーをオペラ座の舞台でみつけたら、それがアンドレアだと思って間違いないだろう。

04_Andrea-Sarri-Photo-Julien-Benhamou.jpg

photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

Q:オハッド・ナハリンの『デカダンス』のリハーサル中ですね。

A:はい。これは最高ですよ。踊りがたくさんあり、しかもそれぞれが異なることなので。『デカダンス』というのがタイトルで、これは複数の小品で構成されているんです。彼が過去に創作した作品のコラージュといった感じ。リハーサル中にパ・ド・ドゥがプラスされたり、変更があったり・・・といったように、構成する要素はオハッドが決めるんです。配役されているのは、前シーズン中にあったオーディションで選ばれたダンサー。オーディションにはとても大勢が参加しました。

Q:オーディションはコール・ド・バレエのダンサーだけが参加できたと聞いています。

A:そうです。ソリスト、つまりプルミエとエトワールはこの作品を踊りません。ソリストたちは10月のロビンスの公演、年末の『シンデレラ』『椿姫』のリハーサルがあるということもあるけれど、このオハッドの作品はグループで踊るものだから。もちろんソリストがグループに入り込めない、という意味ではないですよ。

Q:『デカダンス』は何名のダンサーによって踊られるのですか。

A:複数の作品があって、作品によって踊る人数は異なります。19名が踊るものもあれば、もっと大勢のもあるし・・・それに、リハーサル・コーチあるいはオハッドの希望によって日々人数も変わってゆくのです。22名でリハーサルしたものを26名でやってみたり、というように。もうじきオハッドがパリに戻ってくるので、多くのことが確定されるのはそれ以降です。

Q:彼のメソッド "ガガ" は、以前から知っていましたか。

A:いいえ。6月から『デカダンス』の稽古がスタートし、そこで初めて彼の動きを学び始めました。オーディションの時に、彼はこのバレエの中の動きを僕たちにやらせた、ということがリハーサルが始まってわかりました。これ以前は、彼の仕事については全然知らず、映画『ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス』も封切られたときには見ていません。彼がどのように新しいダンスのテクニックをみつけたのかとか、リハーサルで彼の仕事を理解するのに、この映画はとても役立っています。ただステップを覚える、という仕事ではないので、時々、難しいんですよね。リハーサル・スタジオでは普通、僕たちは向かいの鏡を見ながら仕事をするけど、今スタジオではカーテンを閉めて鏡を隠しています。自分の中に生まれるセンセーションを求める仕事なので・・・。

Q:鏡がないのは、ダンサーたちには仕事がしにくいのではないでしょうか。

A:いえ、これがいいんですよ!自分の動きが生むイメージ、つまりフォルムですね。それに集中するのではなく、自分が身体で発したいこと、動きそのものに集中できるので。それに、動きによっては奇妙というか笑ってしまうようなものもあって、鏡を見ずに自分の内側に集中するほうがやりやすい。新しい動きばかりで、全身をものすごく使います。それからスピードが求められます。即興もあるし・・・すごく素速い動きをしたと思ったら、そのまま静止したり・・・ニュアンスの仕事です。簡単にはみつけられないので難しいけれど、自分のしていることに集中できるので鏡がないことで音楽やコーチの言葉を頼りに、求められる動きを探すのには役立ちます。オハッドはオーディションに来て、そして7月にオペラ座に来ました。もうじきオハッドがきますけど、今は彼のカンパニーのダンサーたちとリハーサルをしています。最初に2名がきて、彼らの後に別の2名がきて・・・と。複数の人がいろいろ話してくれるので、僕たちにはすごい情報量となります。各人異なる方法で説明をしてくれるのは、悪くないですね。ある人の説明では理解できなかったことが、他の人の説明で理解できたりします。複数の意見を知るというのは、悪くない。

Q:配役はファースト・キャストだけですか。セカンドもありますか。

A:これも曖昧なんです。さっきも話したように同じ作品でも人数を変えて試してる段階なので、オハッドがどのヴァージョンを選ぶかによります。僕たちは変更が今後もありえると知りつつ、リハーサルを進めているんです。作品によってはキャストが複数あるのかもしれないし・・・わかりません。

Q:どのような衣装で踊るのでしょうか。

A:これは仮縫いがあったので知っています。まずTシャツとジーンズ。ピンク、ボルドーなど、人によって色が違っていてとてもカラフルなコスチュームですね。別の作品では全員が黒のスーツ、白いシャツ、帽子。また、まだ試してないけれど白と黒のバイカラーのアカデミックなタイツもあるんですよ。ほとんどの作品は裸足で踊り、2つの作品では靴をはきます。もちろんダンス用に作られたものですけど。

Q:今からちょうど1年前に、エクマンと『プレイ』のクリエーションが始まったのですね。

A:そう、最初のグループの稽古がスタートしたのが9月で、僕もそこに含まれていました。稽古は3か月続き、12月の公演は毎晩あって・・・。

Q:フランソワ・アリュと一緒に踊るのは最初から決まっていたのですか。

A:いえ、これは途中で変更があったからで、デュオはもともとはフランソワとアドリアン(・クーヴェ)にクリエートされていました。僕はマルク(・モロー)とデュオの代役。といっても、エクマンに創作過程で提案もできたりして、クラシック作品の代役とはちょっと違いました。最終的に僕はフランソワだけでなく、アドリアンともデュオを踊ることになって・・・。フランソワは先輩で、それに僕のプティ・ペールなので、昔からよく知っています。その彼とステージを共にできて、面白かった。もうじき『プレイ』のDVDが発売されるので、とても楽しみです。

01-C-Francette-Levieux-OnP.jpg

学校公演『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』エリザベット・プラテル校長とリハーサル
photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris

Q:2016年に入団し、2シーズン目でこの役を得られたのは幸運なことですね。

A:はい。最高です。舞台に立てる機会に恵まれていることに。とても満足しています。踊る機会が得られず、辛い思いをしているダンサーがいる一方で、僕は入団以来常に舞台がありますから。

Q:入団最初のシーズンは何を踊りましたか。

A:バランシンの『ヴァイオリン・コンチェルト』があって・・・それから何があっただろう。あ、シェルカウイの『ボレロ』も最初の年だったと思います。これ、最初は代役だったのですね。僕ともう一人がこの作品にプラスされて、他のダンサーがすべて稽古を終わったところで、急遽、振付を覚えることになりました。ある晩、ヴァンサン・シャイエが怪我をしてしまい、「今晩、舞台で踊って!」といわれて・・・。このバレエ、とても複雑なんですよ。舞台上に大勢がいて、舞台のあちこち移動があって、照明は暗いし鏡はあるしで・・・「オー・マイ・ゴッド!」となったのですけど、ソロも踊れて最高でした。これまでの舞台の中でも、記憶に残る1つです。

Q:クラシックよりコンテンポラリー作品に多く配役されているようですね。

A:ネオ・クラシック作品も踊ってますよ。ミルピエの『ダフニスとクロエ』。それからバランシンの「ダイヤモンド」も。でも、コンテンポラリーが確かに多いですね。僕の希望は両方です。コンテンポラリー、好きですよ。だけどクラシック・バレエが大好きなんです。これは学校で8年間学んだことで、この間にクラシック・ダンスを踊る楽しみを学びました。

Q:ダンスはいつ習い始めたのですか。

A:これについては、最初からお話ししなくては ! 僕の母は20歳くらいまで、自分の楽しみのためにクラシックやジャズダンスをやっていました。僕がお腹にいるときに彼女がクラシック音楽をかけると僕がお腹の中で動き始め、で、音楽をとめると、僕も動くのをやめて、となったそうです。小さいときからすごく活動的でいつもエネルギッシュに動き回っていました。姉がダンスを習っていて、彼女がレッスンから帰ってくると習ったことを僕に見せてくれるんですね。それで僕もいっしょになって真似をして・・・。6歳のとき、僕はブレークダンスやモダンダンスを学び始めました。学校の先生から「すべてのダンスのベースだから、クラシックを学びなさい」と言われて、では試してみましょうと行ったものの、最初のクラスの後、僕は泣きながら家に帰って、二度とそのクラスには行きませんでした。規則は多いし、すべてが四角四面に感じられたのでしょうね。それまで頭を地面にくっつけてブレークダンスとか踊ってたので、もっともっと動きたかったんでしょう。でも、しばらくしてクラシック・バレエの教室に通うようになり、そして、クラシックが気に入ったのですね。そうしたら、先生が「パリ・オペラ座を試してみない?君には何かがある、私は思うの。試してみるだけでもいいじゃない」って。まだオペラ座も、パリすらも知らない時代ですが、先生の言うように僕はオペラ座のバレエ学校の試験を受け、そして合格しました。僕はシチリア島のパレルモで生まれ。つまりこうしたことは、すべてパレルモでのことです。イタリア人は家族の結びつきが強いので、学校に入った当初は家族と遠く離れて、とても辛かったですね。両親にしても同じでした。彼らはいつも僕を支えてくれて、もし帰ってきたくなったらそれでもいいよ、と言ってくれていました。バカンスのたびに僕はシシリアに帰り、家族と過ごしています。両親はパリまで僕の舞台を観にきてくれるので、会う機会はけっこうあります。もちろん『デカダンス』にも彼らは来ますよ。

Q:エトワールのエレオノーラ・アバニャートもパレルモ出身ですね。

A:はい。彼女が僕のプティト・メールです。パレルモには本格的なバレエ学校はなく、小さなバレエ学校がたくさんあって、僕と彼女の学校は同じではありません。でも入学して同じパレルモ出身ということで、彼女に会いました。プティット・メールという以上に、とても僕を助けてくれて、今では友だちのような関係です。彼女の家族、子供たち・・・みな知り合いなんです。

Q:入学したのは何歳のときですか。

A:9歳半でした。オペラ座の学校に入る前、クラシック・バレエは1年しかやってませんでした。まず研修期間があって、それから第6ディビジョンに入り、最後まで。途中、第2と第1ディヴィジョンはそれぞれ2年やっています。今まだ20歳ですけど、僕たちダンサーの人生って、この年齢にしてはたくさん語ることがありますね。

Q:クラシック・ダンスの何が気に入ってるのでしょうか。

A:コンテンポラリーを踊ることが多いので、実はそれについて考えたことがあるんです。クラシック・ダンスは厳しく辛いのに、なぜ好きなのだろうかって。それはコンテが厳しくないという意味ではないですよ。クラシックは総合的なもので、とても興味深い。それに僕の身体のラインを作り上げてくれ、そして洗練してくれます。僕は肩が大きく、クラシック・ダンサーの体型をしてないんです。それにクラシック作品の何よりも良いところは、役を演じられること。これを僕は夢見ているんです。

Q:3月の昇級コンクールの自由曲は『リーズの結婚』でした。これは踊ってみたい役の1つですか。

A:いえ、これは違いますね。僕が踊りたいのは例えば『白鳥の湖』。これは音楽にものすごくインスパイアーされます。『ロメオとジュリエット』の音楽 !! これも、とてつもなく素晴らしい。ロメオ役は踊ってみたいですね。ストーリーを語れる役が好きです。誰か別人になるという点に惹かれています。学校公演で『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』を踊ったとき、僕は徒刑囚役ですっかり役の世界に入り込んでいて、自分の出番でないときに袖から舞台を見ていて音楽も美しいし、素晴らしいので泣いてしまいました。 「ああ、これから僕はソロを踊るというのに !!」って。

02Piege-de-lumiere-C-Francette-Levieux-OnP.jpg

学校公演『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』 photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris


Q:では『ジゼル』はいかがですか。

A:アルブレヒト役はもちろん踊りたいけれど、自分がこの役に向いているとは思わない。これはクラシック・バレエの美しい役で、僕はもっとドラマッチックな役に興味があります。何が踊りたいかな・・・オペラ座にはクラシック・バレエだけでなく、コンテンポラリーだって、ネオ・クラシックだって踊り作品がたくさんあります。オペラ座の良い点は、コンテンポラリーもクラシックも踊れることで、どちらかに自分を限ってしまうことはしたくない。いつかソリストになったら・・・どちらにも良い作品があるのだから、両方を踊りたい。これが僕の願いです。あ、踊りたい作品をもう1つ思い出しました。ピナ・バウシュの『春の祭典』です。この音楽を聴くとなぜか涙が出てしまって・・・これも夢の1つです。

Q:コンテンポラリー作品を踊ることで、筋肉のつきかたが変わりますか。

A:はい。身体のラインのためにもクラシック・バレエをやりたいのです。クラシックを踊らないでいると、コンテンポラリー作品によっては、脚が膨らんでしまう。ふくらはぎの形が変わってしまうのです。体重が増えるとかではなく。そんな自分を見るのは辛いので・・。

Q:仕事をしてみたい振付家は誰でしょうか。

A:フォーサイス、キリアンの作品を踊りたいのに、どちらもまだなんです。フォーサイスは、踊りたい作品がたくさんあります。キリアンのミックスプロがあったとき、僕は配役されなかった。フラストレーションですか?いえ、それはないですね。ただ待てばいいだけ。いつかくるでしょう・・・。すべてをすぐに手にすることはできません。僕は自分がしたことに満足して、毎晩帰宅します。フラストレーションを抱える必要はないのです。

Q:前シーズンのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルのプログラムでは、2作品に配役されていました。

A:彼女の作品はこのとき初めて踊ったのだけど、肉体的にとてもきつい作品でした。でも、素晴らしい経験ができたと思っています。

Q:『Grosse Fugue』では、飛ぶ、転がるといった動きの中に楽しんでいる様子が見えました。

A:動くことが僕には必要なんです。だけどそれは、同時に僕の欠点でもあるんです。エネルギーがあり余っているので、ときどきそのエネルギーを他の方向にもってゆくように、と指摘されます。努力はしますけど、そう簡単にはできないことなんですね。

Q:公演のあった晩は眠りにつくのが難しくないですか。

A:いろいろですね。公演の後、まったく話す気がなく押し黙ってしまうこともあるし、時には自分が思うように踊れずにイラついていたり・・・。家に帰ってパタンと寝てしまうこともあれば、もう24時に近いというのに眠れない、とかさまざまです。 でも、よくあるのは黙ってしまうことですね。『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』のような作品ではその世界に入り込んでるんで、舞台の後、そこから出るのが難しかった。

Q:オペラ座のイタリア人ダンサーのグループの一員ですね。

A:はい。イタリアからパリに来て、11年になります。9歳のときに学校に入った時は、最初の半年ぐらいはフランス語がまったく話せなくって・・。このグループはオペラ座の団員の中のイタリア出身者を集めてアレッシオ・カルボーネが作り、ガラ公演を行っています。踊る作品は彼と一緒に選んでいます。こちらの希望に彼が意見をくれたり、相談したり・・・。よく踊るのは『オーニス』、ブルノンヴィルの『ラ・シルフィード』かな。『オーニス』は学校時代から公演のたびに踊る機会に恵まれています。イタリア人グループのこのガラではフランチェスコ・ムラとシモーヌ・ヴァラストロの3人で踊ります。この夏はニューカレドニアにグループで行ったんですよ。ダンサーのグループであり、ステージ外では友だちという関係なので、互いに励ましあったり、家族のようで全員がとても良い関係なんです。最初の1週間がガラで、次の1週間がバカンス・・・いいでしょ!夏はニューカレドニアの観光シーズンではないので、観客はほとんどが現地の人々。とても暖かく歓迎されました。

Q;日本には行ったことがありますか。

A:2010年か11年かな・・学校公演で『スカラムーシュ』『ペッシェ・ドゥ・ジュネス』『ヨンダリング』というプログラムでした。日本はとっても気に入りました。それ以降訪日の機会がないのだけど、素晴らしい思い出があります。人は親切だし、何もかもが清潔で・・。公演のあと劇場を出ると大勢が待っていてくれ、写真をくれたりして面白かった。熱狂的に迎えられて・・パリではこういうことないので良い思い出ですね。お寺とか、少しだけど東京の街も見学できました。大人になった今、また日本にいってみたいですね。次にオペラ座のツアーがあれば、ぜひ参加したいです。

03-C-Francette-Levieux-OnP.jpg

学校公演『ピエージュ・ドゥ・リュミエール』
photo Francette Levieux/ Opéra national de Paris

05Andrea-Sarri.jpg

コンクール
photo Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

Q:舞台が続いていますが、余暇があったら何をしたいですか。

A:休養 !! オペラ座の仕事の後は、疲れ切っていますから。でも、いろいろなことに興味は持っていますよ。例えば写真。風景写真や花のクローズアップとか、あるいは人物とか。自宅は30平米と狭いのだけど、仕切りをおいて簡単な照明をして人物撮影したこともあります。僕、被写体に寄った写真をとるのが好きですね。それからピアノ。学校時代はよく弾いていました。自分で即興して弾くんです。パレルモの家には電動ピアノがあるけれど、パリでは自宅にないのでリハーサル・スタジオのピアノを・・・といっても、ここのところはあまり弾いていませんけど。スポーツはオペラ座で体を動かすだけで、もう十分 !ではあるけれど、ジャイロ・トニックは少しします。これは筋肉を細長くする必要がある僕には、とても有効なのです。

Q:スニーカーで通うダンサーが多いですが、あなたなはとても綺麗に磨かれた革靴を履いていますね。

A:装いには気を使っています。毎朝、何を着て行こうかと服選びには時間をかけています。ずらりと並んだ服を眺め、天気に応じ、その日のインスピレーションで。今日はシックだね、とか仲間から言われることもあります。自宅とオペラ座の往復のためだけ、つまり自分のためにオシャレを楽しんでいるのです。香水もいろいろ持っていて、その日の気分で変えています。本日はテール ド エルメスで、これはどちらかというと夏用の香り。ドルチェ&ガッバーナのThe One for Menも使います。ブルード シャネルは冬に・・・。

Q:舞台に出る直前はどういったことをしますか。

A:決まったことは特にないけれど、左の鎖骨のあたりを右こぶしでたたくことがよくあります。これは緊張をほぐすためなのです。それから脹脛の緊張をとるために、ぶるぶると震わせます。そして集中に努めます。舞台で踊るのはうれしいけれど、その前のストレスをうまく管理できないことがあるんです。ぼくのストレスは弛緩のストレス。これから体を動かさなければならないというのに・・。このストレスを鎮めて、良いエネルギーを得られるように、ということが舞台に上がる直前に大切なことなんです。だから、誰からも話しかけられたくないこともあります。祖母、家族を思うこともあります。

Q:何かお守りを持っていますか。

A:叔母から18歳のときに贈られた指輪が楽屋に置いてあって、これが僕のお守りです。この指輪をみると、2014年に亡くなった祖母をなぜか思うんですね。それから右手首の内側の星のタトゥー。星・・・夜空を見上げて、1つだけ一際輝いてる星があると、祖母や祖父など亡くなった大事な人を思います。そして左肩下のシシリア島のタトゥー。これは僕の故郷なので・・。

Q:星(エトワール)というタイトルを夢見ていますか。

A:僕の夢、それは踊ること。踊りたいという意欲を失いたくないのです。語ることのある役を踊りたい。肩書きとしてのエトワールは追及しないけれど、そうした役へのアクセスが得られるのなら・・・。プルミエ・ダンスールになって、ソリストの役にアクセスができたら、それで十分に素晴らしいと思います。大切なのは意欲を失わないこと。ときに意欲をなくしてしまう、忘れてしまうダンサーがいます。エトワールになりたいという意欲が僕にあるかどうかわからないけれど、何かを成し遂げたいという気持ちはあります。踊りたい、演じることのある役を踊りたい、という意欲はあります。それがプルミエとしてかエトワールとしてなのか、あるいは他所のカンパニーでのことか・・・とにかく僕は踊りたい。それだけです。

Q:2018〜2019年のプログラムは何を踊りたいですか。

A:『デカダンス』の後は『シンデレラ』が待っています。『デカダンス』のメンバーは、自動的にみな『シンデレラ』なんですよ。同時に『椿姫』があって・・・これは素晴らしいバレエですよね。音楽が信じられないほど美しくて、心を揺さぶられます。これもいつか踊って見たい作品の1つです。でも『シンデレラ』もぼくには合っていると思うから・・・。ピュアなクラシック・バレエを踊れるので嬉しいです。その後は『白鳥の湖』がありますね。この作品はコール・ド・バレエをすでに経験ずみです。今シーズン、どうしても配役されたい !というのは来春のソル・レオン&ポールライトフットの作品。オーディションが前シーズンにあって、そのときに彼のスタイルがとっても気に入りました。でも、まだオーディションの結果が知らされてないんです。マッツ・エックとも仕事ができたら、面白いだろうと思います。彼のスタイルが僕にあうかどうかはわからないけど、彼と仕事をするということが素晴らしいと思うんです。僕が誰よりも一緒に仕事をしたかったのは、ピナ。でも彼女はいません。そしてベジャールとも仕事をしたかったのに、彼もいません。ローラン・プティも・・・。彼の作品は何と言っても『若者と死』。絶対にこれ。信じられないバレエで、もし踊れる機会があったら最高です。

ページの先頭へ戻る