ジャン=クリストフ・マイヨー芸術監督(1960年生)が率いるモナコ公国のモンテカルロ・バレエ団が国立シャイヨ劇場で引越公演を行った。

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballets de Monte-Carlo モンテカルロ・バレエ団

"LE SONGE" Jean-Christophe MAILLOT『夢』ジャン=クリストフ・マイヨー:振付

ジャン=クリストフ・マイヨー芸術監督(1960年生)が率いるモナコ公国のモンテカルロ・バレエ団が国立シャイヨ劇場で引越公演を行った。
ジャン=クリストフ・マイヨーはシェークスピアの芝居を基に『ロメオとジュリエット』(1996年)、『夢(ル・ソンジュ)』(2005年)、『じゃじゃ馬ならし』(2014年ボリショイ・バレエ団)という三つの作品を振付けている。今回パリ公演に選ばれたのは「真夏の夜の夢」を原作とし、日本でも2006年に初演されている『夢(ル・ソンジュ)』だった。

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まず、ニック・ボトムを始めとする職人たちが可動性の照明器具を押して登場し、白い直方体の上で静止している貴族たちを眺める所から、プロローグがスタートする。職人たちはユーモアたっぷりに自己紹介してから一団となって出ていく。ここで、メンデルスゾーンの舞台音楽『真夏の夜の夢』の最初の和音4つが流れ、四人の若い貴族たちが順番に動き出す。

マイヨーの工夫は、込み入った劇を構成する三つのグループに異なる音楽を割り当てたことだろう。アテネの貴族たちにはメンデルスゾーン、職人たちには振付家の長兄ベルトラン・マイヨー、オベロンとタイターニアを中心とした妖精世界にはダニエル・テルッギ、と誰の耳にもはっきりと違う音楽を使うことで、観客は筋の展開を楽に追っていくことができた。この作品で用いられているダンスはクラシック、モダン、ヒップ・ホップときわめて多様だが、ハーミアとライサンダー、ヘレナとディミートリアスの二つの青年貴族のカップルのデュオを始め、貴族たちにメンデルスゾーンの音楽を背景に、クラシック・バレエの振付が行われている。
その一方、職人たちが演じる劇中劇「ピラマスとシィスビー」では、ダンスというよりも演劇的な側面が前面に押し出されていた。

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妖精たちの場面は巧な照明と装置によって、幻想的な雰囲気がかもし出されていたが、女性ダンサーのきれいなシルエットを前面に出したエロチックな舞台で、ダンスよりもショー的だったのはちょっと残念に思われた。

同じ『真夏の夜の夢』を主題とするバレエとしては、ジョージ・バランシンの振付(パリ・オペラ座バレエ団のレパートリーにある)があるが、バランシンがシェークスピアの物語を大幅に簡略化しているのに対し、ジャン=クリストフ・マイヨーの作品は原作をていねいに辿っているのが特徴だろう。
今回見たモンテカルロ・バレエ団のダンサーたちの中には、かつてタイターニアを妖艶そのものに踊って、観客の視線をくぎ付けにしたベルニス・コピエテルスのような突出したスターは目に付かなかったが、30人が一丸となって若々しいエネルギーあふれる踊りを見せ、広いシャイヨ劇場をうめた観客から大きな拍手で迎えられていた。
(2018年6月8日 国立シャイヨ劇場)

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『夢』 シェークスピア原作『真夏の夜の夢』
振付・演出 ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽 フェリックス・メンデルスゾーン、ダニエル・テルッギ、ベルトラン・マイヨー
装置 エルンスト・ピニョン=エルネスト
衣装 フィリップ・ギユテル
照明 ドミニック・ドリヨ
演出補佐 ニコラ・ロルモー
ダンサー モンテカルロ・バレエ団ダンサー30名

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