アリス・ルナヴァンとフランソワ・アリュが踊った『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』、アリュのエネルギッシュな跳躍に客席が沸いた

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

"La Fille mal gardée" Frederick ASHTON (Jean DAUBERVAL)
『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(リーズの結婚)フレデリック・アシュトン:振付(ジャン・ドーベルヴァル:原振付

パリ・オペラ座バレエ団の2017・18シーズンの閉幕公演はフレデリック・アシュトン振付の『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(リーズの結婚)だった。6月25日から7月14日(慈善団体対象の無料公演)まで12回公演が行われ、アリス・ルナヴァン(コーラスはフランソワ・アリュ)、ドロテ・ジルベール(ジェルマン・ルーヴェ)、レオノール・ボーラック(ポール・マルク)、ミリアム・ウールド=ブラーム(マチアス・エイマン)という四人のエトワールがリーズを踊った。

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ドロテ・ジルベール ©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

そのうち、初日を踊ったアリス・ルナヴァンとフランソワ・アリュの二回目の公演を見た。プレルジョカージュの『ル・パルク』を踊ってエトワールに任命されたアリス・ルナヴァンはキリアン、マクレガー、フォーサイスらのコンテンポラリー・ダンスを得意としている。18世紀のバレエ・パントマイムを1960年にフレデリック・アシュトンが再構成したクラシック・バレエのヒロインは38歳にして初めての挑戦だった。

アリス・ルナヴァンは元エトワールのエリザベット・モーランのリハーサル指導を受け、第1幕のあやとりのパ・ド・ドゥではきれいに模様ができていた。しかし、第1幕最後のファニー・エルスラーのパ・ド・ドゥという細やかなポワントの技術を駆使しなければならない箇所では、今まで見たミリアム・ウールド=ブラーム(2012年6月)やエレオノール・ゲリノー(2015年7月)のようなきめ細かい動きからは程遠かった。

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アリス・ルナヴァン、フランソワ・アリュ ©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

観客の拍手を集めたのはヒロインよりも、コーラス役のフランソワ・アリュで、エネルギッシュな跳躍やピルエットに客席が沸いた。ただ、2012年にジョシュア・オファルトがテクニックを通してコーラスという村の若い青年の感情をそれぞれの場面に応じて的確に表現していたのに比べると、一本調子でワンマンショーのようだった。筋肉質だが比較的小柄なフランソワ・アリュと女性ダンサーとしては大柄なアリス・ルナヴァンという組み合わせはカップルとしても、もう一つしっくりしない印象を拭えなかった。

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フランソワ・アリュ ©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

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フランソワ・アリュ ©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

この点でも第4キャストで出演したミリアム・ウールド=ブラームとマチアス・エイマンの組み合わせが最上だったと思われるが、出演日がシリーズの最後で見られなかったのは残念だった。
パリに残っていたバレエ関係者の話では、レオノール・ボーラックとポール・マルクの第3キャストもテクニック面では第4キャストにははるかに及ばなかったものの、若々しい演技でそれなりに雰囲気が出ていたという。

この作品で主役二人以外に重要なのがリーズの母シモーヌとリーズに求婚している金持ちの若者アランだ。シモーヌは2012年にアランを表情たっぷりと演じたシモン・ヴァラストロが演じた。愛嬌のある、コミカルなセンスのあるダンサーだが、娘のリーズを金持ちと結婚させるために全力を尽くしながら、最後には娘への愛情から企図を諦める母親の感情を明瞭に客席に伝えるという点では、まだ改善の余地があるかもしれない。アリステール・マダンも間が抜けているが人の好いアランを好演していたが、回を重ねて踊っていけばよりいっそう自然な演技に近づくと思われる。

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

この公演では客席には子ども連れや観光客の姿が目立ち、夏のバカンスが近いことを感じさせた。シーズンは革命記念日の7月14日で閉幕し、新シーズンは9月27日のガラ公演(オハッド・ナハリン振付『デカダンス』)で幕を開けることになる。(通常公演は同じ演目で9月28日が初日となる)
(2018年6月28日 ガルニエ宮)

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

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©️ Opéra national de Paris/Fanchette Levieux

『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(リーズの結婚)全2幕バレエ
(第1幕 農家の中庭、小麦畑 第2幕 農家の内部)

音楽 ルイ=ジョセフ=フェルディナン・エロール(1828年)
音楽アレンジメント ジョン・ランチベリー(1960年)
演奏 フィリップ・エリス指揮パリ国立オペラ座管弦楽団
振付 フレデリック・アシュトン
装置・衣装 オズバート・ランカスター
照明 ジャン=ピエール・ガスケ、パスカル・ヌニエーズ
リハーサル指導 クリストファー・カー
(原振付 ジャン・ドーベルヴィル(1789年7月1日 ボルドー グラン・テアトル歌劇場初演 当時の題名は「Le Ballet de la paille, ou Il n'est qu'un pas du mal au bien」 ジャン=ピエール・オーメール振付版として1828年11月17日 パリ王立音楽アカデミーのレパートリー入り)
(フレデリック・アシュトン版は1960年1月28日 ロンドン コヴェント・ガーデン歌劇場初演 2007年6月22日にパリオペラ座バレエ団のレパートリー入り)

配役(6月28日)
リーズ アリス・ルナヴァン
コラ(コーラス) フランソワ・アリュ
シモーヌ シモン・ヴァラストロ
アラン アリステール・マダン
トマ(アランの父親) アレクシー・ルノー
笛吹き アクセル・マリアノ
雄鶏 レオ・ド・ブスロール
四羽の鶏 ブルーエン・バッティストーニ、アデル・べレム、オユン・カン、ニーヌ・セロピアン
公証人 エルヴァン・ル・ルー
見習い公証人 ミロ・アヴェク
リーズの友人たち カロリーヌ・バンス、エロイーズ・ブルドン、シャルリーヌ・ギーゼンダンナー、ファニー・ゴルス、クリステル・グラニエ、エレオノール・ゲリノー、カロリーヌ・ロベール、セヴリーヌ・ヴェスターマン
コラ(コーラス)の友人たち ヤン・シャイユー、マロリー・ゴーディオン、シリル・ミティヤン、マチュー・ボット、ジュリアン・コゼット、トマ・ドキール
村人たち ロクサーヌ・ストヤノフ、カミーユ・ボン、シャルロット・ランソン、ビアンカ・スキュダモア、ジェニファー・ヴィゾッキ、アネモーヌ・アルノー、アンブル・キアルコッソ、ジュリア・コーガン、ユージェニー・ドリオン、リュシー・フェンヴィック、アメリ―・ジョアニデス、ソフィア・パルセン、アドリアン・クーヴェーズ、アクセル・マリアーノ、フロラン・メラック、ジャン=バティスト・シャヴィニエ、アントニオ・コンフォルティ、イサック・ロペス=ゴメス
二人の農民 サミュエル・ミュレーズ、フランチェスコ・ヴァンタジオ

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