「プリセツカヤへのオマージュ」、イルゼ・リエパの圧巻の踊り
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掲載
ワールドレポート/パリ
- 三光 洋
- text by Hiroshi Sanko
Gala Maïa Plissetskaïa
マイヤ・プリセツカヤ ガラコンサート
「マイヤ・プリセツカヤへのオマージュ」
12月6日にガラ公演「マイヤ・プリセツカヤへのオマージュ」がシャンゼリゼ歌劇場で行われた。全体のプログラムは最後に記した。
ドキュメンタリー映画の抜粋の上映が終わると拍手が沸き、平土間の観客が後ろを向いて立ち上がった。二階中央桟敷席正面のすらりとした女性がこれに艶やかな微笑で答えた。マイヤ・プリセツカヤだった。隣には夫の作曲家ロディオン・シチェトリン(彼女のために『カルメン組曲』を編曲した)とピエール・カルダンが座っていた。
出演者にはボリショイ・バレエのスター・ダンサーがずらりと並んだが、前半で圧巻だったのはやはり『タリスマン』のパ・ド・ドゥを踊ったマリア・アレクサンドロワとミハエル・ロブーヒンのカップルだった。二人とも抜群の身体のしなやかさをみせ、優雅そのもののアレクサンドロワときりりとしたりりしいロブーヒンという組み合わせである。ロブーヒンのダイナミックな動きと抜群の身体の切れに大きな拍手が沸いた。弦のピチカートに乗ったはじけるようなアレクサンドロワに陶然としているうちに前半が終わっていた。
出演ダンサーでもう一人、観客の目を釘付けにしたのは、前半は『シェへラザード』を、後半には『ボレロ』と対照的な曲を踊ったイルゼ・リエパだった。視線の鋭さだけでもはっとさせられる。「プリセツカヤの挑発性を思い出させる視線」と言ったヴェテラン批評家ジャクリーヌ・チュイユーも、客席から身を乗り出して観ていた。
リエパは3曲目のミッシェル・ルグランのシャンソンをバックにした『The Meeting』では、男と女の二役を交互に演じ、驚くべき演技力を示し、客席にはブラボーの嵐が飛び交った。
最期は舞台に上がり、出演ダンサー全員に取り囲まれたプリセツカヤが『ボレロ』に合わせて、わずかに腕を動かしたが、それだけでも85歳という年齢を全く感じさせない、女性らしさ、美貌にあふれ、場内を興奮の渦に巻き込んだ。
(2010年12月6日 シャンゼリゼ歌劇場)
Photos:(C)Marc Haegeman