ピアニストのランランとヒューストン・バレエ団のコラボレーション『魂の音』

ワールドレポート/パリ

三光 洋
text by Hiroshi Sanko

Théâtre des Champs-Elyséesシャンゼリゼ歌劇場
Houston Ballet ヒューストン・バレエ

Lang Lang Danse Project「ランラン・ダンスプロジェクト」
Stanton Welch "Sons de l'âme" スタントン・ウエルシュ振付『魂の音』

ピアノ界の中国人スター、ランランがダンスとのコラボレーションを試み、パリで話題を呼んだ。『魂の音』と題されたスペクタクルは休憩をはさんで前半6、後半6の計12のムーブマンから構成されていた。いずれもショパンのピアノ作品から選ばれ、これにオーストラリア出身のヒューストン・バレエ団芸術監督のスタントン・ウエルシュが振付けた。
舞台左に黒塗りのグランドピアノが置かれ、ダンサーたちが中央から右の空間でダンスした。スポットライトはピアノとラン・ランに当てられ、舞台背景のスクリーンにばら色、ベージュ、青といった色が投影された。

ラン・ランは「ダンスは動く音楽で、純粋で複雑でない芸術である。音楽とダンスを対等にしたものをずっと前から実現したいと思っていた」という。ショパンの音楽はジェローム・ロビンズやパリ・オペラ座バレエの開幕公演『椿姫』のジョン・ノイマイヤーといった振付家が作品に使っている。
短い音が並ぶと小刻みなパ、音が旋回するとダンサーがくるりと回り、フォルテになるとジャンプ、ゆったりした旋律が流れるとダンサーがそり身になる、という具合に音楽をそのまま模倣したような動きが振付けられていた。ラン・ランはダンサーに強い視線を投げかけ、舞台全体を支配していた。
どのダンサーも高い技術を持ち、真剣に取り組んでいるのに好感を覚えたが、身体の動きがただただ音楽をなぞるだけになった。それに加えて、頭を前後に振ったり、天井を見上げたりという調子でラン・ランの動きがあまりにも大きく、また照明を始め舞台のすべてがラン・ランに焦点が当てられたために、音楽とダンスという二つの芸術が拮抗することから、別の次元が生まれるには至らなかったのは残念な限りだった。
(2013年11月4日 シャンゼリゼ歌劇場)

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© Vincent Pontet-WikiSpectacle

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『魂の音』
ピアノ/ランラン 
音楽/ショパン バラード第1、2、3、4番 ノクターン作品55N2 作品15N1 作品20 ワルツ第1番 作品22) 12のエチュード(作品10、25)
振付/スタントン・ヴェルシュ
出演/ヒューストン・バレエ団

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