パリ・オペラ座インタビュー :ジョシュア・オファルト

ワールドレポート/パリ

大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長)
text by Mariko OMURA

Josua Hoffalt ジョシュア・オファルト(エトワール)

前シーズン、『ラ・バヤデール』でエトワールに任命され、この夏の「第13回世界パレエフェスティヴァル」で来日

文句なしのプルミエ・ダンスールへの昇格から、今か今かと待たれたオファルトのエトワール任命。3月7日に『ラ・バヤデール』の初日を踊った後に実現した。8月はオペラ座で組むことの多くなったオーレリー・デュポンを相手に、世界バレエフェスティヴァルのBプログラムに参加した。ロビンスの『アザーダンス』、マクレガーの『感覚の解剖学』を日本のバレエファンに披露した彼。優れた身体能力、洒脱な踊りが魅力的だった。繊細さと男らしさを併せ持った貴重なダンサーである。

Q : オペラ座の新シーズンが開幕ですが、怪我で休養中なのですね。

A :はい。ドクターに歩くことの許可はもらっているので、こうして外出できるのですが、頸骨にヒビがはいってしまっていて・・・。ちょっとしたヒビのくせに、昨日まで踊れていたのに、今日は痛くて踊れない、という状況に陥るには十分なものなんです。怪我はこの仕事の一部とはいえ、快適な部分ではないですね。

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photo Agathe Poupeney/ Opéra Natinal de Paris

Q :オペラ座での復帰はいつの予定ですか。

A :おそらく年末の公演からでしょう。でも、この怪我の後ですから、たとえ良くなっていても、いきなり『ドン・キホーテ』というのは、いささか乱暴すぎるように思います。同時期に過去にも踊った『オー・コンポジット』があり、『ドン・キホーテ』よりソフトなので、こちらでの復帰を希望しようと思っています。

Q :世界バレエフェスティヴァルの初参加はいかがでしたか。

A :予告にも出たように、もともとはオーレリーのBプロのパートナーとしてマチアス(・エイマン)が行くことになっていたんです。でも、彼が怪我をしたので、オペラ座で彼女と組むことが多くなった僕に声がかかりました。 

Q :Bプロではロビンスの『アザーダンス』、ガラではマクレガーの『感覚の解剖学』。この演目はオーレリーと二人で決めたのですか。

A :オーレリーから参加の打診があったとき、すでに『アザーダンス』を踊ろうという提案がありました。でも、ガラについては後で考えましょう、と 。『感覚の解剖学』は『アザーダンス』ともタイプが異なるし、とりわけガラには良いチョイスだろう、ということで二人の意見が一致したんです。

Q :『アザーダンス』を踊るのは、これが初めてだったそうですね。

A :はい。オペラ座で踊られたのを過去に見た記憶がありますが、入団した頃だったので、かれこれ10年前のことです。それ以来、オペラ座では一度も・・。オーレリ-は外部でよくこの作品を踊ってるようですね。踊ったことのない僕は、マニュ(注/マニュエル・ルグリ)とキャロル・アルボのビデオを稽古に使いました。彼も何度もこれを踊っています。その彼がフェスティヴァルで日本にいたので、ごく自然に僕とオーレリーの稽古を彼がみてくれることになったんです。

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photo:Kiyonori Hasegawa

Q :日本で『アザーダンス』を踊ることに、ストレスを感じましたか。

A :僕におけるストレスは、何の作品でも初めて踊るときです。オーレリーと踊るということでのストレスは、初めて彼女と組んだときにすごくありました。昨年末の『シンデレラ』です。なぜって、考えても見てください。彼女は世代も上だし、僕が入団したときはすでにエトワールでしたし、女性としても素晴らしい。あらゆる点で彼女には崇拝の念しかありません。彼女のようなレヴェルのダンサーのパートナーとして踊るのだ、というので大変に緊張しましたよ。でもこの『アザーダンス』までの間に、『ラ・バヤデール』『マノン』を一緒に踊ったので、彼女と踊ることについてのストレスは峠を過ぎました。

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photo Anne Deniau/ Opéra National de Paris

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©photo Anne Deniau/ Opéra National de Paris

Q :日本では『アザーダンス』が踊られる機会は多く、バレエファンには馴染みの演目だそうです。

A :マニュのファンが日本に大勢いることは知っていましたが、『アザーダンス』が知られている作品だとは知りませんでした。でも、知らずにいてよかったですよ。なぜって、これを踊ることそのものに僕はすごいストレスがあったので。ロビンスの作品はどれも大好きなんです。で、中でも『アザーダンス』は小さな宝石のような作品。バリシニコフとマカロワに創作されて、というような過去がずっしり重く感じられて。 とても、いい加減には踊れません。作品へのレスペクトがありますからね。僕のダンスの結果も、そうであったと願いたいです。

Q :快適でのびのびと自由に踊ってる様子が感じられました。

A : それはロビンス作品のなせる業しょう。僕とロビンスの出会いは『アン・ソル』からです。これを踊るとき、ちょっとした事情があって苦労がありました。ですから、ぜひ別のコンディションで踊ってみたいと思っています。このパ・ドゥ・ドゥは最高ですよ。そして、春に『ダンサーズ・アット・ア・ギャザリング』でグイーンボーイを踊りました。

Q :ロビンス作品のどこに惹かれるのですか。

A :動き、そして音楽性ですね。とりわけ『アザーダンス』は、これほど音楽のニュアンスが大きな役割を演じる作品が他のロビンス作品にあるかどうか、というほど。それに踊り手に自由があるのもいいですね。僕は新しい作品を踊ることになると、いろいろなビデオみるのが好きなんです。過去に踊られたのをみると、その中にどんな自由があるのかわかるし。『アザーダンス』はバリシニコフ、ルグリ、それにニコラ(ル・リッシュ)のを見ましたが、3名がそれぞれ比較のしようがない。どれも別物ですよ。どれも正確さはあるものの、同時に自由があって・・。

Q :では今回、ジョシュアの『アザーダンス』をみつけたのですね。

A :はい、そう思っています。でも4公演の初日は本当にとても緊張しました。それはワールド・バレエフェスティヴァルという場のせいもありました。なぜって、バレエ団に入った頃から、例えばジョゼなどからこのフェスティヴァルについては耳にしていて、夢見ていたんですよ。世界中の素晴らしいダンサーたちが一堂に会するフェスティヴァル! だからオーレリーから提案があったとき、もちろん即答ですよ。頸骨が痛かったので、この夏は何もしないことに決めていたので日程的には問題なし。足はフェスティヴァルの後で休めればいいのだ、と。とても断れるものではないですよね。東京では薬で痛みを抑えて踊りました 。

Q:夏前にオペラ座の公演が続く中、オーレリーとはどのようにリハーサルを進めたのですか。

A :パリで少し始めたところで、僕は『リーズの結婚』があり、彼女はアメリカのツアーに出てしまいました。その後、僕がニューヨークからツアーに参加したときは、彼女はいろいろすることがあって忙しく、リハーサルを二人でする時間がとれず・・。そして、その後は彼女がウィーンに行ってしまい、僕はツアーの後南仏の実家に戻り、10日間、昔通っていたバレエ・スクールのスタジオで一人で稽古をしました太陽も満喫し、仕事もし、というわけです。そして東京で彼女と会って、Bプロが始まるまでの6日間、毎日みっちりとマニュのコーチを受けたんです。

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photo Julien Benhamou/Opéra Natinal de Paris

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photo Julien Benhamou/Opéra Natinal de Paris

Q :マニュエル・ルグリとはどんな関係ですか。

A :彼とはちょっと特殊というのか、なんというか。何か一緒にしようとすると、いつも何か妨げが入る、という関係だったんです。どちらかというと僕は閉じこもりがちで恥ずかしがりやなので、なんとなく彼に自分から向かってゆくことができずにいました。2007年の彼のグループの日本ツアーに声をかけてもらったものの、怪我をしてしまって不参加。そんな感じのことが続きました。彼が若いダンサーを指導するNHK のテレビ番組「スーパーレッスン」で僕は『眠れるの森の美女』のパートに参加し、これが彼と一緒にスタジオで何かをするという最初の経験。そして、今回が二度目ということになります。

Q :彼の指導はいかがでしたか。

A :まず言えるのは、とても厳しいということ。でも、彼のような教え方をしてくれる人を他に知りません。仕事をしていて、本当に彼は指導をするのが好きなんだ、とよくわかりますよ。とてもオープンで、僕のすることに、「あ、君のそのやり方好きだ。それはキープしよう」というようなことが何度もありました。向かい合って仕事をしていて、自由が感じられるんです。でも同時に、厳しくするところはびしっとして。

Q :声がかかれば次回もフェスティヴァルには参加しますか。

A :もちろん躊躇なしに行きますよ。よそのカンパニーのダンサーを見ることが出来るのも興味深いですからね。舞台だけでなくクラスレッスンも。彼らがどのように準備をするのか、中央のバーでどうするか・・・と見てるだけで、2週間で数か月分の進歩をした、という気がしたくらいです。

Q :『感覚の解剖学』について話してください。

A :このパ・ド・ドゥはオペラ座でアリス・ルナヴァンと僕が踊ったものです。オーレリーがジェレミー(・ベランガール)と踊ったパ・ドゥ・ドゥというのもあって、どちらにしようか二人して迷いました。でも、僕が踊ったほうがよりユーモアがあって、楽しい。オーレリーのほうは少し暗く、少し長い。僕の方が照明の点でも太陽を感じさせて明るく陽気。ガラなので、こちらに決めてよかったと思っています。

Q :この作品のため髪をとても短く刈ってしまったので、驚きました。マクグレガーからの希望ですか。

A :いいえ。オペラ座での公演のときもヘアは自由でした。『アザーダンス』を踊るたびに、ヘアさんが僕の髪をまとめるのに苦心してたんです。とても時間がかかって。それでロビンスを踊るBプロが終わって、荷を降ろし、ストレスから解放されたところで・・。僕、1つの作品が終わって次にかかる前に、よくヘアカットをするんです。文字通り、頭を切り替えて、というわけです。マクグレガーもきっと気に入るだろうし、コスチュームとも違和感ないし、これくらいラジカルにカットしてもよいだろうと、ガラの前日にヘアさんに刈ってもらいました。「信じられない。本当にいいの?」って何度も何度も彼女から聞かれましたよ(笑)。坊主頭の僕をみて、大勢のダンサーがショックをうけてたのも愉快でした。

Q : ファニーガラについては、来日前から知っていましたか。

A:ええ、ジョゼやマニュの映像がありますからね。で、今回、フリーデマン(・フォーゲル)から参加を勧められたんです。『ラ・バヤデール』のマヌーの踊りというのは彼のアイディア。二人の少女ダンサーが要るというので、マチュー(・ガニオ)にも声をかけて・・。楽しみましたよ。初めてポワントで踊ったんです。ガラの前日はゲネプで、少し時間に余裕があったので、この日に稽古をしました。

Q :トゥシューズで踊るのを、誰かが指導してくれたのですか。

A :いえいえ。ちょっとつま先で立っては、すぐにこけて、の繰り返しだったくらいですからね。トゥシューズはちゃんと大きなサイズが用意されていました。ガラ用でしょうね。僕のサイズの42もありました。でも、なんとまあ痛かったことか。こんなに痛いものだとは、思ってもいませんでした。いつか、例えばジョゼのようにキャリアの後半で『シンデレラ』の継母役でトゥシューズで踊るのって、楽しいんじゃないかな、とか思っていたんですけど・・・。とにかく痛かった。女性ダンサーのように常につま先立ちに慣れてる足とちがって、僕たち男性の足の皮はずっと薄いですからね。フリーデマンもマチューもぼくも、水ぶくれができてしまいました。

Q :フェスティヴァルの後にバカンスですね。

A :はい。スペインのマヨルカ島に行きました。この地の利点は太陽に恵まれてることですね。10日の滞在中、1日も曇もなく。島なので微風がいつも感じられるので、暑すぎず・・。海辺で横になって太陽を浴びて過ごしました。久々のことで、快適でしたね。

Q:3月に『ラ・バヤデール』の初日での任命。でも、あなたの場合は、昨年末に『シンデレラ』で任命されることになっていたのが怪我で流れた、という特別なケースですね。

A :僕を任命したい、ということを耳にしていたので、いつかは任命される日がくるということは確かなこと。その日はいつだろう、って待ちますよね。『ラ・バヤデール』で任命されるといいな、とは思っていました。でもそれが初日、それとも僕の最終日、あるいは映画館でのライブ中継の日なのかは・・・。

Q:任命の瞬間の驚きという点で、他の人と異なりますね。

A:確かに特殊な例ですね。初日の舞台が始まる前に、もしかすると、というように考えたような気がします。でも、いざ舞台が始まってしまうと、とにかくこの作品は肉体的にすごく厳しくて、激しくて、長い作品なので、踊っている間は一度として考えませんでした。舞台が終わり、最初に挨拶にでたときも・・。身体中、あちこち痙攣していて、それどころではない状態。

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photo Agathe Poupeney/ Opéra National de Paris

で、舞台の袖にちらっとローラン・イレールの姿が見えて、あ、っと思ったんです。というのも、彼はその時は、ガルニエ宮でロビンスの方の仕事をしてたので。そしていよいよ舞台の上にマイクがセットされたのを見て、アドレナリンいっぱいで心臓がドキドキとなってしまいました。疲労、ストレスも混ざり合って混沌とした状態で、舞台上にいていったい何が起きてるかわからなくなってしまって・・。隣りにいたオーレリーが眼をうるませて僕に微笑んでいて・・・。そんな彼女を見て、自分がエトワールに任命されたことが理解できました。喜び、安堵。このときの気持ちは、何かに比べることはできませんね。人生に一度のことですから。

Q:あなたが任命されて間もなく、『ラ・バヤデール』でリュドミラ・パリエロ、『リーズの結婚』でミリアム・ウルド=ブラームが任命されました。その場に居合わせて、自分の任命のときのことを思い出しましたか。

A:彼女達の任命はとてもうれしいことです。二人とも好きなダンサーですから。でも、奇妙なことに、僕の任命(注・3月7日)から間もないリュドミラの任命(注・3月22日)の時ですら、自分の任命がとても遠いことのように感じられました。任命されたとき、この瞬間を思いっきり享受しろ、って自分に繰り返し言いました。この瞬間は自分だけのものなんだ、一度だけしかないことなのだからって。でも、あまりにもあっと言う間のことで・・。

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photo Julien Benhamou/Opéra Natinal de Paris

Q:任命の後で変わったことは何ですか。

A:大きな変動というのはないですね。少しばかり自分への信頼が増したこと。それから、何だろう・・。役について言えば、この1〜2年、すでに主役を踊っていましたからね。ただ配役が、それまでは第四、第五だったのが、例えば『リーズの結婚』では第一配役になりました。それに、この夏のように立派なフェスティヴァルへの招待があって・・。他の国での大規模なガラには、時々呼ばれたいものですね。他のカンパニーで全幕を踊るようなことがあるとうれしいです。僕、ガラで作品の抜粋を踊るのは、どうにもストレスがあって。作品全体を踊るほうがずっと気楽にできます。それに『ジゼル』や、まだ踊ったことがないけれど『ドン・キホーテ』といった大作が好き。身体的には疲れますが、抜粋を踊るだけでは得られない感動がありますから。作品の一部のパ・ド・ドゥをガラで踊るときに、その前がなく、突然そのパ・ドゥ・ドゥの気持ちに入るというのはすごく難しいです。もちろんガラで人々がいろいろな作品の抜粋を見る機会があるのはいいことだけど。僕自身としては、例えばモスクワで『白鳥の湖』を、ニューヨークで『ジゼル』をというように踊れるのが喜びですね。今後こうしたことがあるといいな、と思います。もっともオペラ座の許可をもらうのは難しいし、そもそも外部に踊りにゆける時間が僕たちにはないですね。

Q:何かのインタビューで、踊りたい作品として『白鳥の湖』、そしてローラン・プティの作品をあげていましたね。

A:はい。古典の中では『白鳥の湖』です。これは早く踊る機会があるとうれしいと願っています。プティの作品は男性の役が素晴らしい。例えば『若者の死』『アルルの女』『カルメン』。こうしたメジャーな作品でなくても、彼の作品は好きです。『狼』だって。毎日牙をつけ、動物に変身するなんて! 狼の役を準備するって信じられないほどのことですよ。時代遅れな感じはある作品だけど、この役は踊る側には最高です。プティのレパートリーには、演じる面での要素が多くあるのがいいですね。

Q:2012 - 13年のシーズン中、来年の3月に「ローラン・プティ」がありますね。

A:はい。『カルメン』『狼』『ランデブー』の3作品です。さすがに3つは踊れないけど、2つは踊りたいですね。まずは『カルメン』。おそらくこれは実現するでしょう。そして、前回怪我で踊り損なった『ランデブー』。これは音楽が大好きなんです。

Q:エトワールになると過去に踊った作品でも、役柄が変わりますね。

A:そうですね。『椿姫』では友人ガストン役を飽きるほどに何度も踊りましたから、アルマン役を期待したいです。『オネーギン』ではオネーギン役を踊ることになるでしょう。でも、この作品を初めて見た時に、レンスキー役が気にいったので、この作品はこの役から始めたいって思っていました。だから、これは満足しています。『天井桟敷の人々』でいえば、バティスト役、好きですよ。僕が踊ったフレデリック・ルメートルとはまったく別のタイプで、内にこもるタイプ。フレデリック・ルメートルの方は自己顕示するタイプで、テクニック的に派手な踊りです。この役で作品のクリエーションに参加してるのですが、前回の公演のときはバスチーユで『感覚の解剖学』があったので、出ていません。ですから、パティストを踊ることになる前に、この役をもう一度踊りたいと思っています。

Q:『ライモンダ』でのベルナールとベランジェの男性二人の踊りが見られなくなるのは、観客として残念です。

A:ああ、もうあれは勘弁!この二人の踊りはフローリアン(・マニュネ)と組んで楽しみましたけど、いったい何回踊ったことか。フローリアンなど、僕のその二倍も踊ってますよ。これはもう本当に結構、という状態です。とにかく振付けが難しい。『ライモンダ』で好きなのはアブディラム役、衣装、舞台装置。ジャン・ドゥ・ブリエンヌは優しいだけのプリンスで人物に深みがないので、キャリアの中で唯一避けたい役です。

Q:自分に似たタイプの人物を踊りたいですか。それとも別のタイプの役のほうが面白いですか。

A:時にちょっと別の物も食べてみたい、と思うことがあるように・・・いろいろとやってみたいものです。でも、同じ役を何度か繰り返すというのが、進歩できるので望ましいと思います。僕が思うのは、各人がそれぞれにレパートリーを持つのがよいということです。将来、いつか僕たち若い世代、つまりマチアス、マチュー、そしてこれから増えるだろうエトワールたちと、役を分担したいのです。今は皆がすべてを踊っています。でも、各人が自分のパーソナリティをだせる役を持てるのがいいと思うのです。マチューはすでにそうした道を歩んでますよね。自分の価値をみせられるものを選ぶようになっていて。僕もいずれそうした可能性が欲しいと思っています。それはカンパニーにとっても良いと思うのです。

Q:これまで一番弾けた舞台は何ですか。

A:クラシックでは前シーズンの『マノン』です。これはもう役柄にすっかり入り込んでしまって。最後の僕の公演が終わったとき、心底落ち込んでしまいました。まあ、いずれ再演はあると思いますが、10回くらい続けて踊っても飽きることはないと思いました。この振付は物語を浮き上がらせる素晴らしいものです。演劇性とダンスのバランスがとても良くって。『ロメオとジュリエット』は振付が難しすぎて物語に浸れませんが、『マノン』は踊る部分と演じる部分のバランスがパーフェクトなので・・。コンテンポラリー作品では、いつも答えているようにマッツ・エック。

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photo Anne Deniau/ Opéra National de Paris

『ア・ソート・オブ』は素晴らしい経験でした。舞台に出るときは普通は演じるのが好きなのですが、この作品では反対。何も装わず、生のままの自分を出して踊りました。

Q:今シーズン、復帰後はローラン・プティの他には何を踊る予定ですか。

A:ノイマイヤーの『マーラーの交響曲第三番』の再演がありますが、この間踊ったときはエトワールではなかったので、今回はどうなるか・・。キリアンの『輝夜姫』はオーストラリアのツアーに重なってるので、今回は踊らないでしょう。『ラ・シルフィード』、これは確実です。

<<10のショート・ショート>>
1. プティペール、プティットメール:どちらもいません。オペラ座の学校に来た時、すでの14〜15歳で、お願いするのは年がいってるように感じたので。
2. 8月の東京での新発見:「龍吟」という六本木の近くの15席くらいの小さな店。
3. パリでおすすめのレストラン : 任命の祝いに招待された7区の「アラン・パッサール」。野菜の味が素晴らしい。
4 .ダンサー以外に考えられる職業:映画監督。
5. コレクションしている品:スニーカー約100足。日本からも4〜5足持ち帰った。
6. 昨日感じた小さな幸せ:南仏の実家で、プールサイドで過ごした夕刻。
7. 自分の性格の特徴:倫理的。聞き分けが良い。
8. 夢みるバカンス行き先:アルゼンチン。まずは車の免許を取ってから。
9. ストレス解消法:映画鑑賞。特に好きな監督はデヴィッド・リンチ。
10. 自由時間にすること:読書、映画。それからアパートのインテリア。そして住民共通の中庭の手入れ。頭を空にして土に触れると、寛げる。 

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