息の合ったスズペルギーのリーズとマニュネのコラのパ・ド・ドゥが楽しい『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』

ワールドレポート/パリ

三光 洋
text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

Frederick Ashton ¨La Fille mal gardée¨ フレデリック・アシュトン振付『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』

7月に入って『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』の第2キャストを見た。
リーズはプルミエール・ダンスーズのミュリエル・ズスペルギーだった。ロッシーニの軽い音楽に乗ってのソロで明るい笑顔を見せてから、リボンにキスし、さらに客席に向かって投げキッスをして退場した。(ランチベリが改訂した音楽には本来のエロールよりも、ロッシーニやドニゼッティの『愛の妙薬』というオペラの人気アリアが多く取り入れられている)同じリーズでも第1キャストのウルド=ブラムとは一味違う。品のよいウルド=ブラムに対してちょっとお転婆な感じだ。

ハープとオーボエのアルペッジオをバックにした最初のパ・ド・ドゥではフローリアン・マニュネ(コラ)と悪戯っ気たっぷりの息の合ったカップルを演じた。この作品で多用されているリボンの扱いは巧みで、このカップルは一日の長を見せた。リボンを手にして特にリフトされた場面では、リボンと身体の線の流れがぴったり合って客席から思わず拍手が沸いた。
パントマイムは第1キャストとかなり細部が違っていた。例えば第1幕で富農の父親に連れられてきた馬鹿息子アランを演じたアリステール・マダンがリーズの母シモーヌ(オーレリアン・ウエット)に紹介される場面。

pari1208a02.jpg

Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

マダンはおずおずと近づいたところで急に顔のところで赤い傘を開いてシモーヌ役のウエットを驚かした。また、シモーヌ役のウエットは第1キャストのステファーヌ・フォアヴァロンが所作で「女性らしさ」を表現したのに対し、顔の表情の豊かさで母親らしさを出そうとしていた。特に木靴のダンスではこっけいな演技にブラヴォーの声がかかったが、ファヴァロンの音楽のリズムにぴったりと合った木靴の高い響きが耳に残っていただけに、ちょっと物足りなさを覚えた。
コラ役のフロリアン・マニュネはすらりとした美青年だが、8本のリボンに囲まれてリーズをリフトする場面でワンテンポ遅れたのとやや安定性に欠けたのがちょっと気になった。
細部にいくつかの問題を残しながらも、全体としては自然に包まれた農村での肩のこらない、ユーモアたっぷりの振付によって明るい笑いが舞台に広がり、夏休みの外国人観光客が目立つ客席から大きな拍手がダンサーたちに贈られた。
(2012年7月5日 ガルニエ宮)

pari1208a03.jpg

© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

pari1208a01.jpg

© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

pari1208a04.jpg

© Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

音楽/ルイ・ジョセフ・フェルディナン・エロール
演奏/フィリップ・エリス指揮 パリ国立オペラ座管弦楽団
音楽改訂/ジョン・ランチベリ
振付/フレデリック・アシュトン(1960年)
装置・衣装/オズバート・ランカスター
照明/ジョージ・トムソン
リハーサル/クリストファー・カール
配役 
リーズ/ミュリエル・ズスペルギー
コラ/フロリアン・マニュネ
シモーネ/オーレリアン・ウエット
アラン/アリステール・マダン
トマ(アランの父)/アレクサンドル・カルニアト
笛吹き/ピエール・アルチュール・ラヴォー

ページの先頭へ戻る