サレンコ、カニスキン、カブレラ、ガルスティヤンなどが活躍「21世紀エトワールガラ」

ワールドレポート/パリ

三光 洋
text by Hiroshi Sanko

Gala des Etoiles du XXIeme siècle 『21世紀のエトワールガラ』

Théâtre des Champs-Elysées シャンゼリゼ歌劇場

シャンゼリゼ歌劇場の「21世紀のエトワールガラ」が14回目を迎えた。今年は当初予定されていたダンサーのうち、ルシア・ラッカラ/シリル・ピエールのカップルがキャンセルとなったのに続き、初日13日にダニエル・シムキンが負傷した結果、プログラムが大幅に変更された。
最終プログラムは以下の通りだった。

<1部>
1『海賊』パ・ド・ドゥ アレシヤ・ポポヴァ マテ・バコ(ハンガリー国立バレエ)
2『サガロベリSagalobeli』パ・ド・ドゥ ユーリ・ポソホフ振付 グルジアの民族音楽 ラリ・カンデラキ ヴァジル・アクメテリ (トビリシ歌劇場バレエ)
3『パンタ・レイ』フランシスコ・ロレンゾ振付 チェリー・ロバン音楽 ヨランダ・コレア ヨエル・カレーノ(オスロ歌劇場バレエ)
4『グラン・パ・クラシック』ヴィクトル・グソフスキ振付 ダニエル・フランソワ・エスプリ・オーベール音楽 エリス・シー(カナディアン・バレエ・シアター) ミハエル・カニスキン(ベルリン国立バレエ)
5『ファンファーレLX』ダグラス・リー振付 ミヒャエル・ナイマン音楽 エリサ・カリッロ・カブレラ(ベルリン国立バレエ) エヴァン・マッキー(シュツットガルト・バレエ)
6『ブルジョワ』ベン・ファン・コーヴェンヴェルク振付 ジャック・ブレル音楽 ダヴィット・ガルスティヤン(カピトル歌劇場バレエ)
7『ブラック・スワン』ヤーナ・サレンコ マリアン・ワルター(ベルリン国立バレエ)
<2部>
1『ドン・キホーテ』パ・ド・ドゥ ラリ・カンデラキ、ヴァジル・アクメテリ (トビリシ歌劇場バレエ)
2『ウエイ・オブ・ワーズ』レヴェンテ・バヤリ振付 ダリオ・マリオネッリ音楽 ヴァジル・アクメテリ、アレシヤ・ポポヴァ、マテ・バコ(ハンガリー国立バレエ)
3『黄金の偶像』ダヴィット・ガルスティヤン(カピトル歌劇場バレエ)
4『透明』ロナルド・サヴコヴィッチ振付 マリツァ音楽 エリス・シー(カナディアン・バレエ・シアター) ミハエル・カニスキン(ベルリン国立バレエ)
5『エレジー』レイモンド・レベック振付 アルヴォ・ペールト音楽 ヤーナ・サレンコ マリアン・ワルター(ベルリン国立バレエ)
6『エスメラルダ』パ・ド・ドゥ ヨランダ・コレア ヨエル・カレーノ(オスロ歌劇場バレエ)
7『カラヴァッジオ』パ・ド・ドゥ マウロ・ビゴンゼッティ振付 クラウディオ・モンテヴェルディ音楽 エリサ・カリッロ・カブレラ ミハイル・カニスキン(ベルリン国立バレエ)
8「デフィレ」ナディア・ヴェセォヴァ・タンサー振付 チャイコフスキー音楽 全員出演

ハンガリー国立バレエのアレシヤ・ポポヴァとマテ・バコは、一部の『海賊』では硬さが見られたが、後半の『ウエイ・オブ・ワーズ』では紫の光の四角い枠の中でタイプライターの無機質な音を背景に流麗で優美なムーブマンを披瀝し、非現実の世界へと観客を導いた。
グルジア共和国のトビリシ歌劇場バレエから来たラリ・カンデラキ/ヴァジル・アクメテリはグルジアの民族音楽を使ったポソホフ振付の『サガロベリSagalobeli』はダンサーが影絵になったきれいな映像でスタートした。濃厚なローカルカラーに彩られたエグゾチックな魅力にみち、抜粋ではなく全体を見てみたい作品だ。

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© Emmanuel Donny

キューバ人のヨランダ・コレア/ヨエル・カレーノは昨年オスロ歌劇場バレエのエトワールになったばかりだが、モダンの『パンタ・レイ』とクラシックの『エスメラルダ』の双方で卓越した技術と様式性を見せ喝采を受けた。
ベルリン国立バレエのヤーナ・サレンコ(ウクライナ生まれ)/マリアン・ワルターは鍛えられた柔軟な身体の妙を前半の『ブラック・スワン』と2部の『エレジー』という全く違う作品で見せた際、コンクールで話題になったと報じられていたとおり、『グラン・パ・クラシック』で見事なフェッテを見せた。2部の『透明Transparente』には赤いロングドレスで現れ、パートナーのベルリン国立バレエのミハエル・カニスキンとともに官能的な演技で観客を魅了した。わずか数分でも天性の才能が垣間見られ、将来が期待されるダンサーだ。
ルシア・ラッカラとシリル・ピエールの代役として登場したエリサ・カリッロ・カブレラとエヴァン・マッキーは『ファンファーレLX』と『カラヴァッジョ』で破格の技術と表現力を見せ、客席を沸かせた。
当夜、最も注目を浴びたのはアルメニア出身のトゥールーズ・カピトル歌劇場バレエのダヴィット・ガルスティヤンだった。1部を欠場したシムキンが前回踊った『ブルジョワ』を全く違うスタイルだが、エネルギッシュかつユーモアたっぷりに演じ、後半はぴたりと固定されて動かない腕で「黄金の偶像」になり切って、一夜にしてパリのバレエファンの寵児となった。
(2012年1月14日 シャンゼリゼ歌劇場)

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© Emmanuel Donny

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© Emmanuel Donny

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