ガニオとアルビッソン、ルーヴェとボーラックが踊り、華麗な絵巻を繰り広げた『ロメオとジュリエット』
- ワールドレポート
- パリ
掲載
ワールドレポート/パリ
- 三光 洋
- text by Hiroshi Sanko
Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
"Roméo et Juliette" Rudolf Noureev
『ロメオとジュリエット』ルドルフ・ヌレエフ:振付
ルドルフ・ヌレエフ振付の『ロメオとジュリエット』が、バスチーユ・オペラで3月19日から4月16日まで上演中だ。
主役カップルには初日がマチュー・ガニオとアマンディーヌ・アルビッソン、その他にジョシュア・オファルトとミュリエル・ジュスペルギー、ユゴー・マルシャンとドロテ・ジルベール、ジェルマン・ルーヴェとレオノール・ボーラック、マチアス・エイマンとミリアム・ウルド=ブラームという5組のカップルが発表されている。
3月23日のマチュー・ガニオ、アマンディーヌ・アルビッソンという第1キャストのエトワール・カップルと、3月29日のジェルマン・ルーヴェ(スジェ)とレオノール・ボーラックという若手カップルという2組を観た。
マチュー・ガニオが舞台にあらわれると、いかにも貴公子らしいロマンティックな雰囲気が周囲に立ち込めて誰でも魅了される。夢見るようなまなざしとすらりとしたシルエットには、エジオ・フリジェリオとパウロ・パガーノがデザインした銀の縫い取りのあるジレに白いタイツ、というイタリアルネッサンス風のおしゃれな衣装がよく似合う。対するアマンディーヌ・アルビッソンは清楚な令嬢にふさわしい、気品のある姿と安定したテクニックを見せ、ガニオとは絵になるカップルだった。ただし、ちょっと気になったのは、この二人からは運命に翻弄され、死に向かって疾走していくかのような若い情念のほとばしりが、今一つ肌で感じられることがなかったことだろうか。
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
一方、29日の公演では今年1月からプルミエール・ダンスーズになったレオノール・ボーラックがジュリエットを踊った。あどけない少女らしさの残る表情、いたずらっぽいまなざしやさりげない手先、ちょっとした身振りからおのずと生きる喜びが周囲に広がった。ロメオとの初めての出会いで大きく見開かれた目。自分の中に生まれた愛にとまどいながらも、やがて否応なしにロメオの方にひきつけられていく姿はとても自然に感じられた。後半でやや演技過剰になった嫌いがなかったでもないが、全編を通して初々しい演技からは目が離せなかった。
これに対しジェルマン・ルーヴェのロメオは、最初はやや硬さが感じられたものの、ドラマが展開するにつれて存在感を増し、すらりとした気品のある身体をいかした優雅な踊りを繰り広げ、まさにロメオにふさわしい表現だった。
この若い二人はエトワール・カップルに比べ、ぎこちなさを残しながらも、初恋の喜びと最愛の相手を失った嘆きといった情感をより直裁に感じさせた。
また、マキューシオに扮したフランソワ・アリュの破格のエネルギーと高い跳躍に客席が沸き、モンテギュー一派を常に挑発し、マキューシオを殺害するに至るティボルト役は、悪意がこもった冷ややかな視線を周囲に放ったステファン・ブリヨンがぴったりとはまっていた。
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
ジュリエットのベッドに死神が登場したり、血まみれのマキューシオとティボルトの亡霊が現れてローラン神父に渡された薬を飲むように仕向けたり、といった演出はややくどいようにも思われた。しかし、ヌレエフの振付は曲想の変化に富んだプロコフィエフの音楽を最大限に生かし、初演から30年以上を経た時間の経過を感じさせない完成度の高いもので、華やかな装置と衣装の効果もあって壮大な歴史絵巻を織り成した。どちらの公演も、最後に幕が下りると大きな拍手が客席から送られていた。
(2016年3月23日、29日 バスチーユ・オペラ)
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
『ロメオとジュリエット』
音 楽 プロコフィエフ
振 付 ヌレエフ(1984年)
装 置 エジオ・フリジェリオ
衣 装 エジオ・フリジェリオ、マウロ・パガーノ
照 明 ヴィニチオ・チェリ
サイモン・ヘーヴェット指揮 パリ・オペラ座管弦楽団
配 役(23日/29日)
ロメオ マチュー・ガニオ/ジェルマン・ルーヴェ
ジュリエット アマンディーヌ・アルビッソン/レオノール・ボーラック
ティバルト カール・パケット/ステファン・ブリヨン
マキューシオ フランソワ・アリュ/エマニュエル・ティボー
ベンヴォリオ ファビアン・レヴィヨン/セバスチャン・ベルトー
ロザリーヌ エロイーズ・ブルドン/ファニー・ゴルス
パリス ヤン・シャイユー/ヤン・シャイユー
キャピュレット ローラン・ノヴィス/ローラン・ノヴィス
キャピュレット夫人 ステファニー・ロンベルク/ステファニー・ロンベルク
乳母 モード・リヴィエール/モード・リヴィエール
ローラン神父 エルヴァン・ル・ルー/エルヴァン・ル・ルー
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou