身体能力の優れたダンサーたちと工夫を凝らした照明や小道具により華麗なエンターティンメントを展開したモミックス

"Viva Momix Forever" Moses PENDLETON

「ヴィヴァ・モミックス・フォーエヴァー」 モーゼス・ペンドルトン:振付

クリスマスから正月明けまでのパリではアメリカのダンス・グループ、モミックスがシャンゼリゼ歌劇場で公演を行った。
「ヴィヴァ・モミックス・フォーエヴァー」と銘打たれたスペクタクルは1980年に創設されたモミックスによる数多い作品のハイライトを並べたもの。前半に8場面(50分)、休憩後に7場面(45分)で、各場面はほぼ6分程度の長さで作られている。

(C) Charles Paul Azzopardi

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(C) Max Pucciariello

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(C) Charles Paul Azzopardi

(C) Momix Inc

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振付家モーゼス・ペンドルトン(68歳)は本来はクラシック・バレエのダンサーだったが、1979年に『La Belle Excentrique(奇抜な美女)』を踊った時、杖のような棒を使った。このアクセサリーからヒントを得て、 長い棒や巨大な環といったアクセサリーを使ったモミックスが誕生した。
その好例が南西アメリカの砂漠地帯からインスピレーションを受けて作られた『サボテン』からの抜粋「Pole Dance(ポール・ダンス)」だろう。三人のダンサーが非常に長い棒を使って空中高くに飛び上がる。高度の体操といった感じだが、アメリカンインディアンの戦士たちの踊りをイメージしたものだという。

(C) Charles Paul Azzopardi

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男性ダンサーがテーブルを使ってアクロバットの演技を見せる「テーブル・トーク」(『モミックス・クラシック』の抜粋)もダンスというよりも体操を思わせた。
こうしたパーフォーマンスの一方で、衣装や照明を駆使した幻想的な作品もあった。
「マリゴールド」(『ボタニカ』の抜粋)ではマーガレットの花が動いているうちに、女性に変貌し、最後には空中を飛び去っていく。この変貌はフレンチカンカンに出てくるようなフリルの付いたペチコートの衣装によって可能になっていた。
「ナルシスのエコー」(『ボタニカ』の抜粋)では、床に横たわって自分の姿に見とれる女性が水に消えていく。ギリシャ神話のナルシスは美青年だが、ペンデルトンは女性に置き換えた。鏡を巧みに使い、照明に浮き上がった映像は実にきれいだった。
こうして実に多種多彩な場面が繰り広げられ、最後に等身大の人形を持ったダンサーたちがバッハの『ブランデンブルク協奏曲第2番』をバックに「If You Need Somebody」(『ReMIX』の抜粋)を踊り終わると、大きな歓声が沸きおこった。
身体能力に優れたダンサーたちが自在に動き回り、照明やアクセサリーに工夫の凝らされたエンターテイメントは興行的には大成功をおさめたが、筆者自身はどんなにきれいだったり、意外性に富んでいても、あまり心を動かされることはなかった。振付家の関心が視覚的な効果に集中していて、ダンサーの身体が舞台のごく一部に過ぎないことが原因だったように思われる。ダンサーの視線や表情が身体の動きと一体となったクラシック・バレエやコンテンポラリーの作品とは別のジャンルなのだろう。
(2018年1月5日 シャンゼリゼ歌劇場)

(C) Momix Inc

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(C) Max Pucciariello

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(C) Max Pucciariello

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(C) Momix Inc

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(C) Charles Paul Azzopardi

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(C) Momix Inc

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(C) Charles Paul Azzopardi

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「ヴィヴァ・モミックス・フォーエヴァー」
芸術監督・振付 モーゼス・ペンデルトン
協同芸術監督 シンシア・クイン
衣装 フィービ・カッツィン、モーゼス・ペンデルトン、シンシア・クイン
彫刻 アラン・ボーディング
アクセサリー マイケル・カリー
照明 ジョシュア・スターバック、ハウウェル・ビンクリー、モーゼス・ペンデルトン ダンサー/ジョナサン・エーデン、ジェニファー・シシェポーティッシュ、シー・ハーガン、アマンダ・ヒューレン、モーガン・ヒューレン、ヘザー・マギー、サラ・ナシュバウワー、ジェーコブ・ステンバック、ジェイソン・ウイリアムズ

ワールドレポート/パリ

[ライター]
三光 洋

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