喪失を乗り越え、舞台に情熱を注ぐバレエ・ダンサーの青春を描く『RED SHOES/レッド・シューズ』が3月15日より全国公開される

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

main.jpg

『赤い靴』舞台にて、サム(ジュリエット・ドハーティ)とベン(ジョエル・バーク)

オーストラリアの架空のバレエスクールを舞台に、かけがえのない人を失った絶望から再びダンサーとして再生していくまでを描く青春映画『RED SHOES/レッド・シューズ』が3月15日より全国公開される。
ヒロインのサムは、ミス・ハーロウが校長を務めるバレエスクールの有望な生徒だ。彼女は、この学校のコンサートでオリジナル・バレエ『赤い靴』の主役カレンに抜擢された。この役は、この学校の同窓生でニューヨークのバレエ団に入ったサムの憧れの姉アニーもかつて演じた。開幕直前、サムはアニーと電話で主演デビューの喜びを分かち合う。しかし、アニーは突然この世を去ってしまう。サムはショックのあまり舞台を降板、そのまま自堕落な生活を送る日々となる。ある日、出来心で万引きをしてしまったサムは、200時間の社会奉仕活動への参加を余儀なくされる。母親は、荒れる生活を送り続けるサムを案じ、彼女を再びバレエスクールへ連れていく。この学校で渋々始めた清掃活動を通して、サムは仲間たちが変わらず研鑽を積んでいる様子を目撃し、再び踊りたい気持ちが膨らんでいく。学校では『赤い靴』再演のリハーサルが佳境に入っている。ライバルのグレイシーの怪我により、サムは彼女の代役として、カレン役にもう一度挑戦することになる。完璧だった姉アニーへの劣等感に苛まれるサムは、困難を乗り越え、果たして再び舞台に立てるのか...。起伏のあるストーリー展開で、懸命にバレエに打ち込む少女サムの姿がみずみずしく描かれる。
劇中に登場するバレエ作品『赤い靴』をはじめ、映画に登場するバレエシーンの振付は、オーストラリア・バレエ・カンパニーでプリンシパルとして活躍したダニエル・ガウディエッロが担当した。この映画では役を演じたダンサーたちが実際に踊り、迫力あるダンスシーンとなっている。劇中に登場するバレエ作品『赤い靴』はモイラ・シアラー主演(1948年)、近年ではマシュー・ボーン版同様、ヒロインが一度赤い靴を履くと、死ぬまで踊り続けなければならない、という設定だ。

sub4.jpg

中央左より、グレイシー(プリムローズ・カーン)とサム(ジュリエット・ドハーティ)

sub2.jpg

サム(ジュリエット・ドハーティ)とベン(ジョエル・バーク)

主役のサムを演じるのは、ユース・アメリカ・グランプリで2011年ユース・グランプリ、2014年サンフランシスコ・バレエスクール在学中にゴールドメダルを受賞したオーストラリア系アメリカ人のジュリエット・ドハーティ。代々ダンサーの家系の生まれで、母親のクリスタ・キング=ドハーティのもとでバレエを学んだ。2015年第3回北京国際バレエコンクールでは審査員特別賞を受賞している。歌やピアノなども学び、2018年のニューヨークを舞台にした青春ダンス映画『ハートビート ネクスト・ステージ』、ミュージカルでは『Little Dancer』(スーザン・ストローマン演出)、『巴里のアメリカ人』(ヒロインのリズ役)に出演するなど活躍の場を広げている。シリアスなシーンが多い本作だが、撮影現場は笑いが絶えなかったとドハーティは語る("Paltrocast With Darren Paltrowitz"より)。
バレエスクールでのサムのライバル、グレイシーを演じたのは、プリムローズ・カーン。グラマラスな体格でエネルギッシュな踊りを見せるドハーティに対して、カーンは金髪に白い肌のクールな容貌をもつ。バレリーナらしいスリムな体型で、妖精のように軽やかに踊る。オーストラリアのケアンズ出身。2017年にパリ・オペラ座バレエ学校とロイヤル・バレエ・スクールのサマー・プログラムに参加、2018年と2019年に再び招待された。2019年にはロイヤル・バレエ・スクールよりアチーブメント・アワードを授与される。その後パリ・オペラ座バレエ団の来日公演に参加した。現在はボストン・バレエ団に客演している。グレイシーはサムの才能に嫉妬して意地悪もするという難しい役で、キャスティングは難航した。本作の振付を担当したダニエル・ガウディエッロは、かつてカーンの教師だった時期があったため彼女のことをよく知っており、グレイシー役に彼女を推薦したのだという。カーンはいじめのシーンの撮影のたびに、ドハーティに謝ってばかりいたそうだ("A Dancer's Life"より)。
学校公演でサムのパートナーを務めるベンは、バレエ団をクビになり母校に戻った卒業生という設定。バレエスクールでは教師補佐も務めている。サムを精神的にも支え、厳しいミス・ハーロウに対しても自分の意見を主張するなど、頼もしい性格である。演じるジョエル・バークはオーストラリアのブリスベン出身。クイーンズランド・バレエアカデミー在学中の2018年に出場したローザンヌ国際バレエコンクールではセミファイナリストだった。クイーンズランド・バレエ団では『くるみ割り人形』でフリッツ役を演じた。また、ガラ公演「Ballet International Gala」のプロモーターとして、ロベルト・ボッレやダニール・シムキンなどのスター・ダンサーたちを彼の地元ブリスベンやオーストラリア各地に招き、ガラ公演を開催している。ベンの役は、バークが監督のジェシー・エイハーンと話し合いを重ね、自身の性格が大いに投影された人物になったという("A Dancer's Life"より)。
自身のバレエスクールでサムをはじめ生徒たちに厳しくも熱心な指導を行うミス・ハーロウを演じたキャロリン・ボックは、俳優ながらイスラエル・バレエ団にて1シーズン在籍した経験をもつ。現在、児童向けの多くのダンス作品や演劇作品を創作、プロデュース、演出している。劇中、バレエ・クラスやリハーサルを指導する様子に真実味が感じられたのも、そのようなバックグラウンドがあるからだろう。
監督はドキュメンタリー出身で本作が長編初監督作品となるジェシー・エイハーン、そして母のジョアンヌ・サミュエルが共同で務めた。サミュエルは『マッドマックス』(1979)のメル・ギブソンの妻役で知られる俳優で、『The Legend of the Five』(2020/未公開)で監督デビューした。また、サミュエルはハニーブルック・スタジオでバレエ、タップ、コンテンポラリーダンスを学んだ。

sub3.jpg

サム(ジュリエット・ドハーティ)とミス・ハーロウ(キャロリン・ボック)

sub1.jpg

サム(ジュリエット・ドハーティ)とミス・ハーロウ(キャロリン・ボック)

本作でハーロウ・アカデミー・国際バレエ学校のロケ地となったのは、シドニーのオーストラリア国立演劇学院(NIDA= The National Institute of Dramatic Art )。1958年に設立され、ケイト・ブランシェット、メル・ギブソン、ジュディ・デイヴィス、バズ・ラーマンなど、オーストラリアを代表する俳優や監督の多くが卒業した演劇の名門校である。

昨年3月にパリ・オペラ座バレエ団のエトワールに昇進したオニール 八菜、また現在、オーストラリア・バレエ団の芸術監督を務めるデヴィッド・ホールバーグ、そして英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのスティーヴン・マックレーなど、オーストラリア出身の優れたダンサーは数多い。この映画は、南半球のバレエ大国での新世代のダンサーたちのバレエ・ライフの一端を垣間見ることができる注目の一作だ。

『RED SHOES/レッド・シューズ』

RedShoes_POSTER.jpg

出演:ジュリエット・ドハーティ、ローレン・エスポジート、ジョエル・バーク、キャロリン・ボック、プリムローズ・カーン、ニコラス・アンドリアナコス、ミエッタ・ホワイト、アシュリー・ロス
監督:ジェシー・エイハーン、ジョアンヌ・サミュエル
振付:ダニエル・ガウディエッロ
2023/オーストラリア/英語/シネマスコープ/5.1ch/111分/原題:The Red Shoes: Next Step/字幕翻訳:大西公子/後援:オーストラリア大使館/配給:彩プロ 
© 2023 One Tree Productions

3月15日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

公式サイト:redshoes.ayapro.ne.jp

記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。

ページの先頭へ戻る