50周年を迎えたローザンヌ国際バレエコンクール2023 審査員に熊川哲也、ガラ公演に上野水香ら過去の入賞者が多数集結する

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香月 圭 text by Kei Kazuki

ローザンヌ国際バレエコンクール2023は50周年を記念する大会として、2023年1月29日〜2月5日にわたってローザンヌのボーリュ劇場で開催される。2月3日にセレクション、翌2月4日に決選、2月5日に過去の入賞者・出場者を中心とした23名による「スター・ガラ」が行われる。日本からは熊川哲也が審査員に就任、そして上野水香がガラ公演に出演することが発表された。熊川哲也は1989年に東京で開催された第17回ローザンヌ国際バレエコンクールでゴールド・メダルを日本人で初めて受賞し、このコンクールの知名度を広く世に知らしめることとなったことは周知のとおり。1992年に二十周年を迎えた際に記念ガラ公演で熊川が吉田都と踊った『ドン・キホーテ』パ・ド・ドゥは会場を大いに湧かせた。熊川が審査員を務めるのは1996年、2013年に次いで三度目となる。彼が芸術監督として率いているKバレエ カンパニーは2023年3月22〜26日に『白鳥の湖』をBunkamuraオーチャードホールで上演する。東京バレエ団のプリンシパル 上野水香は令和3年に第72回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞し、その記念の第2弾公演「上野水香オン・ステージ」に主演する(2023年2月10〜12日東京文化会館)。
ローザンヌ国際バレエコンクール2023の審査員長はジャン=クリストフ・マイヨー、副審査員長はディアナ・ヴィシニョーワが務め、その他の審査員には熊川哲也のほかクリストファー・ウィールドン、ジュリー・ケント、マーティン・シュプレップァーなど歴代の入賞者のほか、英国ロイヤル・バレエスクールのクリストファー・パウニー校長などが選ばれた。
「スター・ガラ」には上野水香のほか、英国ロイヤル・バレエからワディム・ムンタギロフ、アリーナ・コジョカル、スティーヴン・マックレー、マルセリーノ・サンベ、マヤラ・マグリ、シュツットガルト・バレエよりフリーデマン・フォーゲルとエリサ・バデネス、マッケンジー・ブラウン、オランダ国立バレエからヴィクター・カイシェタ、ミュンヘン・バレエよりジュリアン・マッケイ、マディソン・ヤング、アントニオ・カサリーニョ、ドレスデン国立歌劇場バレエよりマルセロ・ゴメス、イングリッシュ・ナショナル・バレエよりプレシャス・アダムス、ジョージア国立バレエよりラウラ・フェルナンデスなどローザンヌ国際バレエコンクールOB・OGが多数出演する。そのほかに、ボリショイ・バレエからオランダ国立バレエに移籍したオルガ・スミルノワや英国ロイヤル・バレエのマシュー・ボール、マリインスキー劇場バレエから戦火を逃れて現在はノルウェー国立バレエに在籍するザンダー・パリッシュなどのダンサーたちも出演し、50周年記念ガラ公演に華を添える。

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審査員長:ジャン=クリストフ・マイヨー
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副審査員長:ディアナ・ヴィシニョーワ
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審査員長:ジャン=クリストフ・マイヨー(モンテカルロ・バレエ 振付家兼監督/1977年入賞、2018年生涯功労賞、2019年コンテンポラリー・バリエーション『アブストラクト Abstruct』振付)「振付家であることの特質は、自分の作品が常に他の人たちに左右されるということです。振付家になりたかったのは、人々と特別な体験を共有できるという喜びを持つことができるからです」

副審査員長:ディアナ・ヴィシニョーワ(コンテクスト国際コンテンポラリー・ダンス・フェスティバル芸術監督兼設立者/1994年金賞)「ローザンヌ国際バレエコンクールは私のキャリアの節目になりました。私の勝利を予測するものは何もないように見えましたが、母校ワガノワ・バレエアカデミー、恩師リュドミラ・コワリョーワ、ビゼーとシチェドリンの音楽に合わせてコンテンポラリー作品の『カルメン』を演出してくださったイゴール・ベルスキーを代表して参加しました。優勝したとき、最初は信じられませんでした。...(中略)...他校の学生がジョン・ノイマイヤーやマッツ・エックの作品を踊るのを見て、私はコンテンポラリー・ダンスを発見しました。それらの経験は、アーティストが海外でどのようにリハーサルを行っているか、コンテンポラリー・ダンスのクラスがどのように行われているかを理解するのに役立ちました。当時の自分のなかでは、あの振付しかあり得ないと思っていたのですが、コンテンポラリー・ダンスの世界に身を投じたいという願望と、新しい考え方を与えてくれました」

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熊川哲也
© Makoto Nakamori

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クリストファー・ウィールドン
© Angela Sterling

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ジュリー・ケント
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以下は審査員メンバー:
熊川哲也(Kバレエ カンパニー芸術監督、英国ロイヤル・バレエ元プリンシパル/1989年金賞)「ローザンヌ国際バレエコンクールは、若いダンサーの登竜門です。候補者への私のアドバイスは、彼らが本当にその瞬間を楽しむことを忘れないようにということです。コンペティションの記念大会に参加できることは素晴らしいことです。私も50歳なので、何という偶然でしょうか! コンクール創設者であるブラウンシュヴァイグ夫妻、そして毎年このコンペを開催するために献身的に尽力してくれたすべてのスタッフに心より感謝致します」

クリストファー・ウィールドン(振付家、英国ロイヤル・バレエ アーティスティック・アソシエイト/1991年金賞)「1991年に出場したので、戻ってくるのはおおよそ30年ぶりくらいです。 50周年というこの素晴らしい機会に審査員の一員になれたことを光栄に思います。ローザンヌ国際バレエコンクールは、英国ロイヤル・バレエおよび英国ロイヤル・バレエスクールが高く評価するコンペティションです。バレエ界にとって、世界中の新進気鋭の才能を評価する絶好の機会であり、若いダンサーが世界の舞台に初めて足を踏み入れる機会を与えてくれます。当時、プロになる直前に必要だった自信を後押ししてくれました。私はすべての候補者に、ローザンヌ国際バレエコンクールを競争の場としてではなく、世界中の若いダンサーの集まりとして見ることをお勧めします。彼らの芸術的スキルを見て学び、彼らの経験についてたずねてみてください」

ジュリー・ケント(ワシントン・バレエ芸術監督、アメリカン・バレエ・シアター元プリンシパル・ダンサー/1986年入賞)「ローザンヌ国際バレエコンクールは、私の心の中で特別な思い出として生涯残ることでしょう...ニュージーランド、(旧)東ドイツ、日本、オランダ、英国など、世界中から集まった同年代のダンサーと一緒にいることは、変革をもたらす経験でした ! 驚くべき才能に囲まれて多くの細かなことがらをこなし、非常に多くのことを迅速に学んだことを覚えています。母国アメリカの<ローザンヌ国際バレエコンクール友の会>の後援により私の参加が可能になり、私たちの世界的な芸術的景観に計り知れないほどの貢献を続けているコンクールのコミュニティ全体にも、今でも感謝しています ! 過去 50 年間にわたりローザンヌ国際バレエコンクールを支えてきた人々と、その歴史の一部であり、愛、寛大さ、献身、情熱、そして高貴な目的をもってこの芸術形式に貢献してきたアーティストに深く感謝します」

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クリストファー・パウニー
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シルヴィアーヌ・バイヤール
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エンダリン・T・アウトロー
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クリストファー・パウニー(英国ロイヤル・バレエスクール芸術監督兼CEO/2014年審査員)「ローザンヌ国際バレエコンクールは世界中のダンサー志望者にとって、一流校でトレーニングを継続する機会を提供される絶好の機会です。また、候補者が決して忘れることのない素晴らしい人生経験でもあります。他のダンサーたちと一緒に一週間を過ごし、一緒にクラスに参加し、世界最高峰のディレクターや教師、振付家からコーチングを受け、実に多くの学校やカンパニーのディレクターに見られることは、本当に素晴らしいことです。 2023年ローザンヌ国際バレエコンクールの候補者への私からのメッセージは、その一週間が提供するすべての側面を楽しむことです。すべてのクラスから学ぶことに集中し、フィードバックを受け取り、パフォーマンスを体験し、さらにトップの学校やカンパニーから非常に特別なオファーを受け取ることができれば、これは勝利に違いありません。最後に、生涯にわたる友情を築くこの機会をお見逃しなく。志を同じくする素晴らしい仲間と一週間を過ごすことになります」

シルヴィアーヌ・バイヤール(ベルリン国立歌劇場バレエ元芸術監督、シュツットガルト・バレエ エトワール/1973年入賞)「ローザンヌ国際バレエコンクールは私の人生における重要なステップであり、このコンクールの奨学金を得て、ロゼラ・ハイタワー国際ダンスセンターという名門校で勉強を続けることができました。 1年後、16歳のときにシュツットガルト・バレエでプロとしてのキャリアをスタートさせました」

エンダリン・T・アウトロー(ノースカロライナ大学芸術学部[UNCSA]ダンス科 学科長、ダンス・シアター・オブ・ハーレム元プリンシパル・ダンサー)「将来のダンスの展望に強い関心を持つダンス学部長として、そしてこの分野を前進させるアーティストとして、このコンクールの不可欠な部分である才能、トレーニング、情熱が集中している様に直接触れることができ、期待に胸が膨らみます ! UNCSA は世界中の最高の才能を発見、促進、支援することを目標とするこのコンクールに学生が参加できることを誇りに思っております」

メラニー・パーソン(エイリー・スクール共同監督)「ローザンヌ国際バレエコンクール50周年記念大会の審査員に選ばれたことを光栄に思います。このコンクールはダンスの卓越性を表し、参加者は次世代のアーティストを表しています」

マーティン・シュプレップァー(ウィーン国立バレエ監督兼首席振付家、ウィーン国立バレエアカデミー芸術監督/1977年入賞)

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メラニー・パーソン
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マーティン・シュプレップァー
© Andreas Jakwerth

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「スター・ガラ」に出演する 上野水香
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「スター・ガラ The Gala of the Stars」出場予定者
上野 水香(東京バレエ プリンシパル・ダンサー/1993年入賞)
マルセロ・ゴメス(ドレスデン国立歌劇場バレエ バレエ・マスター兼プリンシパル・ダンサー/1996年入賞)
フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ プリンシパル・ダンサー/1997年入賞)
アリーナ・コジョカル(英国ロイヤル・バレエおよびイングリッシュ・ナショナル・バレエ 元プリンシパル・ダンサー/1997年入賞)
マリア・コチェトコワ(フリーランス・プリンシパル・ダンサー、キュレーターおよびプロデューサー/2002年入賞)
スティーヴン・マックレー(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル・ダンサー/2003年入賞)
ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル・ダンサー/2006年入賞)
エリサ・バデネス(シュツットガルト・バレエ プリンシパル・ダンサー/2008年出場)
マルセリーノ・サンベ(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル・ダンサー/2010年ファイナリスト)
マヤラ・マグリ(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル・ダンサー/2011年入賞)
アレハンドロ・アゾリン(ドレスデン国立歌劇場バレエ ファースト・ソリスト/2011年出場)
プレシャス・アダムス(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ソリスト/2014年入賞)
ジュリアン・マッケイ(ミュンヘン・バレエ プリンシパル・ダンサー/2015年入賞)
ヴィクター・カイシェタ(オランダ国立バレエ ファースト・ソリスト/2015年出場)
マディソン・ヤング(ミュンヘン・バレエ プリンシパル・ダンサー/2016年入賞)
ラウラ・フェルナンデ(ジョージア国立バレエ プリンシパル・ダンサー/2016年入賞)
エリック・スナイダー(イングリッシュ・ナショナル・バレエ アーティスト/2018年ファイナリスト、2020年出場)
マッケンジー・ブラウン(シュツットガルト・バレエ ソリスト/2019年入賞)
アントニオ・カサリーニョ(ミュンヘン・バレエ ソリスト/2021年入賞)
オルガ・スミルノワ(オランダ国立バレエ プリンシパル・ダンサー)
マシュー・ボール(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル・ダンサー)
ザンダー・パリッシュ(ノルウェー国立バレエ プリンシパル・ダンサー/2018年幕間公演に出演)
マルガリータ・フェルナンデス(ミュンヘン・バレエ ソリスト)

昨年度から新設された新人振付家賞「ヤング・クリエーション・アワード2023」の決勝進出者5名の顔ぶれも発表された。12 月 2 日に審査委員会がローザンヌで開催され、 56名(女子 35 人、男子 21 人)の参加者から提出された映像を視聴し、その中からファイナリスト5名が選ばれた。2023 年 2 月 1 日にローザンヌ国際バレエコンクールの審査員とライブ・ストリーミングの聴衆の前でオリジナルのソロ作品がそれぞれ披露される。2名の受賞枠があり、入賞者の作品は2023 年 2 月 4 日の幕間公演で再上演される。これらの2つの入賞作品は2024年のローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリー・バリエーション・レパートリーのリストの中に入ることになる。
今年のローザンヌ国際バレエコンクール2023のコンテンポラリー・バリエーションには、モーリス・ベジャール(『カンターテ 51』:女性、『コンクール』:男性)、ウェイン・マクレガー(『クローマ』:女性A、男性B、『幽玄』女性A、男性A、『ビカミングス』女性B、男性B)、マウロ・ビゴンゼッティ(『ロッシーニ・カーズ』:女性B、『フリア・コルポリス』:男性A)、キンスン・チャン(『レイン』:女性A、男性A、『エコー』:女性B、男性B)と並んで昨年度の「ヤング・クリエーション・アワード2022」入賞者のルカ・ブランカ振付による『Les Ombres du Temps』とミラ・ルックス振付の『Cognition』が採用されている。両作品とも性別・年齢の制限はなく、すべての参加者が選択できる。

「ヤング・クリエーション・アワード2023」の決選進出者
・マーティン・バラバン Martin BALABAN(チェコ、17歳7ヶ月、ドレスデン・パルッカ舞踊大学)『Open your eyes ...』 音楽:ピーター・サンドバーグ Peter Sandberg「弦楽四重唱 エチュード第1番 Etude #1 for String Quartet」模範演技:クロエ・マイエ MEIER Chloé/ジェンダー・ニュートラル(性別制限なし)
・エレナ・ドンブロウスキ Elena DOMBROWSKI(フランス、19歳1ヶ月、ロゼラ・ハイタワー高等舞踊センター)『Tout va bien ? 』音楽:ヴィエヴェリ Vieveri 「Respawn」模範演技: トム・ベレック Tom BELLEC/ジェンダー・ニュートラル(性別制限なし)
・ハンナ・マクルーガン Hannah MCCLOUGHAN(オーストラリア、18歳4ヶ月、ジョン・ノイマイヤー・ハンブルク・バレエスクール)『Cultivate』音楽:ギャヴィン・ルーク Gavin Luke「Paradigm Shift」模範演技:ケタ・ブロマ Keta BLOMA/ジェンダー・ニュートラル(性別制限なし)
・ニコラス・ミーラー Nicholas MIHLAR(カナダ、18歳6ヶ月、チューリヒ・ダンス・アカデミー)『Rotting Strawberry 』 音楽:ピーター・サンドバーグ Peter Sandberg「弦楽四重唱 エチュード第1番 Etude #1 for String Quartet」模範演技: リアム・ストリックランド Liam STRICKLAND /ジェンダー・ニュートラル(性別制限なし)
・アレイシャ・ウォーカー Aleisha WALKER(アメリカ、21歳6ヶ月、ABTステュディオ・カンパニー)『Do You Care?』音楽:ヨハネス・ボーンロフ・B Johannes Bornlof B
『夜想的ワルツ Nocturnal Waltz』 模範演技:マディソン・ブラウン BROWN Madison/ジェンダー・ニュートラル(性別制限なし)

ローザンヌ国際バレエコンクール公式YouTubeでは、本選出場者たちによる自己紹介ショート動画が続々公開中。
https://www.youtube.com/@PrixdeLausanne/shorts

◆ローザンヌ国際バレエコンクール公式サイト
https://www.prixdelausanne.org/

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