11月11日より来日公演を行うモンテカルロ・バレエ団の2022〜2023シーズンのラインアップ
- ワールドレポート
- ワールドレポート(その他)
掲載
ワールドレポート/その他
香月 圭 text by Kei Kazuki
11月11日〜13日、モナコ公国のモンテカルロ・バレエ団が来日し、東京文化会館にてジャン=クリストフ・マイヨー振付作品『じゃじゃ馬馴らし』を上演する。本拠地モンテカルロで始動する新年度2022-2023シーズンについてご紹介しよう。コロナ禍の2年間はバレエ団のオンライン・チャンネル「BMCストリーム」を中心に作品やリハーサル、バレエ・クラス、インタビューの模様を配信してきたが、新シーズンからようやく生の舞台での上演が可能となった。
12月10日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
ゴーティエ・ダンス//シュツットガルト劇場舞踊団
『THE SEVEN SINS(7つの罪)』
人間を罪に陥れるとされる「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」の7つの感情や欲を主題に、サシャ・ヴァルツ、シディ・ラルビ・シェルカウイ、シャロン・エイアル、マルコス・モラウ、アズーア・バートン、そしてシュツットガルト劇場の2名のアーティスト・イン・レジデンス:マルコ・ゲッケとホフェッシュ・シェクター、合計7名のコンテンポラリー振付家が創作に挑んだ。本作はヴェネツィア・ビエンナーレでも上演されている。カンパニーに在籍する山本勝利は2022年5月7日シュツットガルト劇場での初演にてサシャ・ヴァルツ、シディ・ラルビ・シェルカウイのパートに出演し、ドイツの舞踊誌"Tanz"にて今年度の最優秀ダンサーにノミネートされた。ゴーティエ・ダンスはシュツットガルト・バレエの元ソリストだったエリック・ゴーティエが2007年に設立した舞踊団で、2008年よりシュツットガルト劇場(シュツットガルト・バレエの本拠地、州立歌劇場ではなく私立の劇場で演劇とダンス、コンサートなどを上演している)の常設ダンス/カンパニーとなった。
12月12日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
『SWAYAMBHU(スワヤンブー)』
シャンタラ・シヴァリンガッパ Shantala Shivalingappa
シャンタラ・シヴァリンガッパは南インドの古代舞踊「クチプディ」の継承者で、ベジャール(『1789...そして私たち』)、ピーター・ブルック(『テンペスト』『オフィーリア』)、ピナ・バウシュ(『オー・ディド』『ネフェス』『バンブー・ブルー』)、天児牛大(『IBUKI』)などの作品に出演している。
『スワヤンブー』はサンスクリット語で「自然に現れるもの」という意味と、象の頭を持つガネーシャ神や舞踊を司どるシヴァ神の姿形に似た石や岩をも指すという。この作品で彼女は4名の音楽家と共演する。動き、しぐさ、表情、指の動き...すべてを極限まで削ぎ落とした、純粋な表現を観客は堪能する。
12月14日 グリマルディ・フォーラム
『Igra(遊戯)』
コルシア Kor'sia
ニジンスキー振付の『遊戯』(1913年)を基にした作品で、夕暮れの公園で若者がテニスボールを探しているシーンなどオリジナルの引用が複数箇所存在する。音楽と風景の選択がこの舞踊団の作品を革新的なものにしている。
コルシアはマドリッドを拠点とするダンス・カンパニーでアントニオ・デ・ロサとマティア・ルッソがプロジェクトの監督と振付師を務めるほか、パフォーミング・アーツの研究者であり共同創設者であるジュゼッペ・ダゴスティーノとパフォーミング・アーツ教授のアニエス・ロペス・リオが芸術顧問を務める。
12月16日 グリマルディ・フォーラム
『SONOMA (ソノマ)』
ラ・ベロナル La Veronal
題名の「ソノマ」はギリシャ語のソーマ(体)とラテン語のソナム(音)に由来する。マルコス・モラウが率いるバルセロナを拠点とする舞踊団ラ・ベロナルはテキスト、風景、メディア、光を駆使し、ダンスを演劇パフォーマンスに変貌させる。スペイン北東部アラゴン地方のカランダの太鼓のリズムに乗せて、彼らのルーツが呼び覚まされる。モナコの舞台に登場するのは2014年『シエナ』で好評を博して以来、二回目となる。
スペイン生まれのマルコス・モラウは母国とニューヨークで振付のほか演劇・写真などを学び、NDT II やキャサリン・アラード率いるITダンサで振付アシスタントを務めた。2005年に自身の舞踊団「ラ・ベロナル」を設立し、スペイン国立ダンスカンパニーやスカピノ・バレエ・ロッテルダムなど様々なカンパニーに振付作品を提供している。
12月17、18日 グリマルディ・フォーラム
『NOCES & OPUS 40 (結婚&作品 40)』
ジャン=クリストフ・マイヨー振付
結婚と青春という人生の大切な瞬間に捧げられたジャン=クリストフ・マイヨー作品のダブル・ビル。 『結婚』 (2003年) は、ストラヴィンスキーが1923年にモナコで完成したスコアに沿って、披露宴の高まりから狂乱、そして穏やかな日常へ戻る一連の流れを描いている。ニジンスカによる原典へのオマージュである。
『OPUS 40』はマイヨーが2000年、40歳のときに創作した作品で、具体的なプロットはない。メレディス・モンクの歌声に乗せて想像力が豊かだった子供時代や青春の喜びへと観客を誘う。
『OPUS 40』ジャン=クリストフ・マイヨー振付 © Marie Laure Briane
12月27〜30日 グリマルディ・フォーラム
『ファウスト』
ジャン=クリストフ・マイヨー振付
マイヨーはゲーテの戯曲などで知られる「ファウスト伝説」のバレエ化にあたり、フランツ・リストの『ファウスト交響曲』の音楽の背後にあるものを解読してこの作品を創った。年老いたことへの不満をもつファウストは、永遠の若さと快楽に満ちた人生と引き換えに自分の魂を悪魔に売らなければならない。彼の前に現れる美しく純粋な少女マルグリットは、女性の理想像とされる。人間性を否定し、破滅へ向かわせる悪魔の代理メフィストはファウストの否定的な側面を投影している。ファウストがメフィストによって人生に翻弄される様子を、スレンダーで官能的な姿をした「死」が傍観している。マイヨーのミューズとして君臨したベルニス・コピエテルスはこの役での出演を最後に2014年、現役を引退している。
2023年4月26〜30日 グリマルディ・フォーラム
『ラ・ベル』
ジャン=クリストフ・マイヨー振付
「眠れる森の美女」の本を読んでいた若者が眠りに落ち、夢の中で王子となる。リラの精に導かれ、子宮に見立てたバブルの中に入った美しい王女「ラ・ベル」に遭遇する。この泡は求婚者である王子たちによって破られ、襲われてしまった彼女は長い眠りにつく。マイヨーのヴァージョンでは、物語後半、義母カラボスとラ・ベルと王子のカップルとの対決の場面など、シャルル・ペロー版のストーリーを採用している。主演にはオルガ・スミルノワが予定されている。
2023年6月28日〜7月1日 グリマルディ・フォーラム
「モンテロ、マイヨー、ヴェルブルッケン」
『火の鳥』(ゴヨ・モンテロ振付、新作)『プルチネッラ』(ジェロエン・ベルブルッゲン振付、新作)
『結婚』(マイヨー振付)
ストラヴィンスキーによるバレエ・リュスの三作品が、現在活躍中の三名の振付家の新しい解釈によって生まれ変わる。バレエ団のレギュラー・ゲスト振付家であるイェルン・フェルブルッゲンは、彼の挑発的で爆発的なスタイルに従って『プルチネッラ』の再構築を試みる。ゴヨ・モンテロは2019 年『Atman アトマン』で好評を博して以来三年ぶりの登場となる。今回の『火の鳥』では、群舞の動きから発せられる圧倒的なパワーが観客の感情を倍増させる。
2023年7月18〜21日 グリマルディ・フォーラム
『シンデレラ』
マイヨー版の『シンデレラ』では、亡くなった母親が妖精の姿をしてヒロインの前に現れ、宮殿の舞踏会へとシンデレラを誘う。シンデレラは母が着ていた服を身につけ、ガラスの靴の代わりにラメで光らせた裸足で王子の前に登場する。バレエの象徴ともいうべき足そのものの存在感を際立たせた演出となっている。
《モンテカルロ・バレエ公式サイト》
https://www.balletsdemontecarlo.com/en
モンテカルロ・バレエ団来日公演
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/montecarlo/index.html
以上、モンテカルロ・バレエ団2022-2023シーズンの概要をお伝えした。NHK BSでも10月16日「プレミアム・シアター」でマイヨー版『じゃじゃ馬ならし』と『コッペリア』がプレオンエアとなる。そのほか、ピカソのイタリア訪問100周年を記念して、エレオノーラ・アッバニャートが芸術監督を務めるローマ歌劇場バレエによるポンペイの野外大劇場で行われた2017年夏の公演「ピカソ・アット・ポンペイ」も放映される。ピカソがバレエ・リュスの舞台美術デザインを担当したレオニード・マシーン振付の『パラード』(音楽:サティ)と『プルチネッラ』(音楽:ストラヴィンスキー)の大変貴重な収録映像である。9月26日に放映されたプレミアム・シアターのシュツットガルト・バレエ『じゃじゃ馬ならし』(クランコ版)はNHKオンデマンドで視聴可能。
《プレミアム・シアター》
10月16日(日)午後11時20分〜午前4時22分
◇モナコ公国モンテカルロ・バレエ「コッペリアCOPPEL-I.A.」
◇ピカソ・アット・ポンペイ バレエ「パラード」「プルチネッラ」
◇モナコ公国モンテカルロ・バレエ「じゃじゃ馬ならし」【再放送】
◇フィリップ・ジャルスキー「インスピレーション」【再放送】
《NHKオンデマンド》
プレミアムシアター シュツットガルト・バレエ「じゃじゃ馬ならし」
購入期限:2022年10月21日
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2022122745SA000/?spg=P201500140200000
記事の文章および具体的内容を無断で使用することを禁じます。