ENB新芸術監督にドレスデン歌劇場バレエのアーロン・S・ワトキンがタマラ・ロホの後任として就任

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)は、タマラ・ロホに続く新たな芸術監督として、ドレスデン国立歌劇場バレエ(ゼンパー・オーパー・バレエ)を率いているアーロン・S・ワトキン Aaron S.Watkinを任命したと発表した。

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アーロン・S・ワトキン Photo Jubal Battisti 2022

カナダ西海岸のブリティッシュ・コロンビア州カウチン・バレーに生まれたワトキンは、カナダ国立バレエ学校で学び、1988年最も優秀な生徒に贈られるエリック・ブルーン賞を受賞して同校を卒業。スクール・オブ・アメリカン・バレエ夏季講座ではスタンリー・ウィリアムズに師事。またエリック・ブルーン、フェルナンド・ブホネス、ギルバート・マイヤー、リン・シーモワ、ノエラ・ポントワ、イリーナ・コルパコワなどの個人コーチを受け、ワガノワ、ブルノンヴィル、バランシン、フランス派、イギリス派など様々なスタイルのバレエを経験する。
カナダ国立バレエ、オランダ国立バレエなどでコール・ド・バレエからソリストへ昇進。イングリッシュ・ナショナル・バレエにもこの7年間の時期に在籍している。その後、ウィリアム・フォーサイス率いるフランクフルト・バレエでプリンシパル・ダンサーとして活躍し、彼の傍らで数多くの新作の創作現場を経験し、後に彼の作品の振付アシスタントとして世界中のバレエ団に振り渡しやリハーサルを行う責任者となる。
2000年、ナチョ・ドゥアト率いるスペイン国立舞踊カンパニーに入団。2002年6月、マドリッドのビクトール・ウラーテ・バレエの副芸術監督に任命された。2005年、デヴィッド・ドーソンが『レヴェランス』をキーロフ・バレエのために創作した際や、ヨハン・インガーが『Negro con Flores』をクルベリー・バレエのために振付けたときもアシスタントを務めた。
2006年、ワトキンはドレスデン歌劇場バレエの芸術監督に任命され、2007年、初の自身の全幕作品『眠れる森の美女』を上演。以後、それ以来、2008年『ラ・バヤデール』、2009年『白鳥の湖』を発表。2011年、パルッカ・シューレ・ドレスデン舞踊学校校長ジェイソン・ビーチーと『くるみ割り人形』を創作。2016年『ドン・キホーテ』初演。そのほかバランシン、マーサ・グラハム、ピナ・バウシュ、ウィリアム・フォーサイス、ナチョ・ドゥアト、デヴィッド・ドーソン、ヨハン・インガーなど、クラシックの全幕物からコンテンポラリーまで幅広いレパートリーを上演している。

30年ほど前、ENBの団員だったワトキンは、今回の任命について、「ENBに戻り、芸術監督としてカンパニーを率いていくことができて光栄です。この10年間でENBを発展させ多様性を推進したタマラ(・ロホ)の功績を大いに称えたいと思います。ENBはそれ自体、創作を行う有力な一機関としての位置を確立しており、これをさらに発展させることを任されたことを光栄に思います。」と述べた。さらに「伝統を擁しながらも革新を推し進めながら、ダンスの最前線でのカンパニーの独自性をさらに発展させていきたいと思います。世界トップクラスのダンスをより多くのお客様に届けるという、団の設立理念が継続していけるよう、真に開かれて包括的な機関を目指します。」と彼は抱負を述べた。また、「ドレスデン歌劇場バレエでの17年間は、舞台の内外を問わず、皆が活躍できる創造的で育成的な環境を構築してきました。ENBでもこれを継承し、カンパニーの優れたダンサー、クリエイティブ、スタッフと協力して、活気に満ちた未来を創造することを楽しみにしています。」とこれまでの方向性を新天地でも継続すると語った。

ENBでの最後のシーズンを目前に、サンフランシスコ・バレエ芸術監督としての仕事も始動させているタマラ・ロホは「ENBの芸術監督に任命されたアーロンに祝意を表するとともに、過去10年間、ENBを率いてきたことを光栄に思います。ENBの皆さんと共に成し遂げてきたことをとても誇りに思いますが、この称賛と支援はここで終わるわけではありません。私はENBが引き続き成功するのを見守ります。ENBが進化し続け、英国と世界中の観客の皆様に感動を与え続けることを楽しみにしています。」と新生ENBへのエールを送る。

アーロン・S・ワトキンが正式に新芸術監督として就任するのは2023年8月からとなるが、これから徐々にENBのダンサーやスタッフと定期的にミーティングを重ねていくそうだ。

ドレスデン歌劇場バレエは現在、共同振付家としてデヴィッド・ドーソン、バレエマスター兼プリンシパルとしてマルセロ・ゴメスなどが在籍している。ワトキンは2021年シーズンにファースト・ソリストだった藤本佳那子をプリンシパルに、コリフェの綱木彩葉をセカンド・ソリストにそれぞれ任命した。衣装デザイナーとなった竹島由美子がワトキンの在任中にプリンシパルとして活躍したカンパニーとしても知られる。

◆イングリッシュ・ナショナル・バレエ公式サイト
アーロン・S・ワトキン就任を告げるページ
https://www.ballet.org.uk/blog-detail/aaron-s-watkin-new-artistic-director-english-national-ballet/

◆ドレスデン歌劇場バレエ(ゼンパー・オーパー・バレエ)公式サイト
https://www.semperoper.de/en/

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