フェデリコ・ボネッリ「私のダンサーとしてのストーリーが美しい最終章を迎えます」

ワールドレポート/その他

インタビュー=関口紘一

フェデリコ・ボネッリ(ノーザン・バレエ芸術監督に就任する)

――この度は、ノーザン・バレエ(Northern Ballet)の芸術監督へのご就任決定、おめでとうございます。

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© Bill Cooper

ボネッリ ありがとうございます。

――ノーザン・バレエの芸術監督に就任することが決まり、大いに歓迎する、という声が上がっております。
現在ボネッリさんは、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル・ダンサーとして活躍されていて、たいへん評価も高いです。たとえば、アレッサンドラ・フェリのように、ダンサーとしてもっと踊り続けていきたい、というお気持ちはありませんでしたか。

ボネッリ とても複雑な気持ちです。絶対に、また踊りたいと思ってしまうのでしょう。それと同時に、しかるべき時が来たという気持ちもあります。今までのキャリアについてとても満足していますし、ラッキーでした。多くの素晴らしいダンサーや振付家とご一緒することができましたし、世界中の素敵な劇場で踊ることもできました。自分のキャリアで得た経験のすべてに対して感謝の気持ちでいっぱいなので、次のステップに進む時が来たのだと思っています。
この2つの感情を同時に持ち合わせることは難しいです! また舞台に立ちたくなってしまうでしょうし、でも同時に、これからの芸術監督への道について心の準備ができたし、とても楽しみにしています。ノーザン・バレエの新しい芸術監督に就任することは挑戦ではあるけれども、素晴らしいカンパニーに私のアイデアを持っていくことができるという機会を喜ばしく思います。ノーザン・バレエでは、ダンスを通じてストーリーを届ける文化が大切されています。これは私が情熱を持っていることに重なるので、このカンパニーの伝統を守りながら、さらなる成功に向けて率いて育てていくことができる、たいへんに光栄な機会です。こうしてノーザン・バレエに行くことを喜ぶのと同じくらい、ロイヤル・オペラ・ハウスやカンパニーを去ることは悲しいです。私を支えてくださったお客様、ダンサー、スタッフ、オペラハウスで働くすべての方々は、在籍していた19年間を通じて、家族のような存在に思っています。そのため、今の心境はとても複雑です。同時に嬉しくも悲しくもなることはできないですよね(笑)。

――英国ロイヤル・バレエを退団するまでの出演予定は『白鳥の湖』でしょうか。

ボネッリ はい。『白鳥の湖』全幕にあと2回主演します。3月4日と19日です。19日公演は、医療従事者のための特別公演です。パンデミックが起きてから私たちの生活を守るために闘ってくださっている彼らのための公演が、私の最後の公演となることを嬉しく思います。

――英国ロイヤル・バレエは主要な男性ダンサーを失うことになるわけですが、ボネッリさんが去った後のカンパニーはバランスを失ってしまいませんか。

ボネッリ そのように言ってくださってありがとうございます。一緒に踊ってきたダンサーたちからも多大な愛情を感じています。さよならを言ってくれたり、退団することを聞いて悲しんでくれたりと、皆さんの温かい気持ちを感じていて、感謝の気持ちで溢れています。でも、ロイヤル・バレエには多くの才能あるダンサーたちが育っていることを確信しています。きっと彼らが才能と芸術性で満ち溢れた舞台にしてくれます。それと同時に、ロイヤル・バレエには心強いスタッフ陣がいます。カンパニーの要として、ダンサーたちを支えケアしてくれます。
こうして今、私のダンサーとしてのストーリーが、なんとも美しい最終章を迎えたと思っています。ロイヤル・バレエに入団した時はまだ若かったし、ここで様々な経験をさせてもらったことで、ロイヤル・バレエに育ててもらいました。ダンサーとしてだけではなく人間性も、現在の私を作ってくれたのは、このカンパニーです。ロイヤル・バレエでの私の"旅"は終わりますが、それは他のダンサーの旅の始まりでもあります。彼らもたくさんの素晴らしい経験をして、花開いて行くと思います。

――ノーザン・バレエと英国ロイヤル・バレエ、あるいはボネッリさん個人としての交流はあったのでしょうか。まず、ボネッリさんの個人的な関わりから教えてください。

ボネッリ 観客としても、ノーザン・バレエの公演を何度も観に行きました。そうして、彼らの公演のストーリー性に対する尊敬の気持ちが高まりました。彼らのイマジネーションに富んだ表現には親しみを感じます。バレエは、動きと音楽で美しさを表現することができます。それに加えて、感情を表現することで、人々の心情を描くことができます。それを大切にするノーザン・バレエの伝統にとても親近感を持ったことが、アーティストとしてこのカンパニーに惹かれた最も大きな理由ですし、芸術監督としても大きな魅力に感じています。
私自身、ダンサーとしてもノーザン・バレエの公演に出演したことがあります。何度か出演しましたが、創立50周年の祝祭公演にも出演して、ノーザン・バレエのヴァージョンの『ロミオとジュリエット』を踊りました。こうしてダンサーやスタッフや振付家などの皆さんと一緒に仕事をする機会があったので、もともと少しはノーザン・バレエのことを知っていましたが、5月に正式に始動したら、もっと理解を深められると思います。

――英国ロイヤル・バレエとノーザン・バレエの繋がりについては、いかがでしょうか。

ボネッリ 団体としては別々の存在です。バーミンガム・ロイヤル・バレエはロイヤル・バレエの姉妹カンパニーですが、ノーザン・バレエはそのような関係ではありません。ケヴィン・オヘア(現ロイヤル・バレエ芸術監督)は、ノーザン・バレエの非常勤取締役(non executive director)です。このようなケースは他にもありまして、例えば、スコティッシュ・バレエ芸術監督のクリストファー・ハンプソンは、バレエ・ブラック(Ballet Black)の評議員(Board of Trustee)です。とは言え、従事する内容に明確な線引きがあるので、役員(ボードメンバー)であってもバレエ団の運営に言及することはなくて、傍にいる形です。また、別々の団体でありながら、アーティスト間では繋がりはあって、イギリス内の各バレエ団で、お互いのバレエ団の公演に出演したり、私のように芸術監督として別のバレエ団に行ったりということはよくあるケースです。

――やはり、芸術監督として一番最初に考えることは、レパートリーの充実でしょうか。

ボネッリ まだすべてが固まっているわけではないのですが、ひとつ明確なのは、ノーザン・バレエが大切にしてきたナラティブ・バレエ(ストーリーに基づいた作品)の伝統を積み重ねていくことです。
もうひとつは、上演作品の多様性を大切にすることです。それによって広い観点で鑑賞できるレパートリーを目指したいのです。ノーザン・バレエはイギリス国内をツアーで回ることが多く、イギリス国内カンパニーではトップクラスのツアー公演数を有します。そのため、かなり大勢の方々に向けて公演を届ける機会に恵まれています。その一方で、ノーザン・バレエは地元にファンを持ち、とても愛されています。でも、ツアーをすれば、客層は幅広く、バレエ公演をあまり観たことがない方だっているでしょう。公演を通じて、お客様の層も拡大していきたいと思っているので、公演地の地理的な拡大と同時に舞台の上で披露する内容にも多様性を持たせられるようにと思っています。

――デヴィッド・ニクソン芸術監督は21年間その職にありました。そこにはレガシーがあると同時に、長期間に渡ったことによる問題点もあるのではないかと考えますが。いかがでしょうか。

ボネッリ まずは、デヴィッド・ニクソンの21年以上に及ぶディレクターシップを讃えたいと思います。芸術監督としてのリーダーシップだけでなく、素晴らしい作品を多く作っていますし。私が埋めなくてはならないことはたくさんあります。カンパニーには、前任の芸術監督が築いた伝統が積み重ねられているので、それを壊さないようにしながら、新たな時代を重ねていくことが次の芸術監督の務めです。ニクソンも彼の前任のクリストファー・ゲイブルが輝かしい歴史を作っていて、それをベースにしながらニクソンならではの視点から"物語を伝える"というアプローチを行ったと思います。それは、伝統やカルチャーのすべてが継承されなくてはいけないからです。この繰り返しが、バレエ団を築くこと、バレエ団のスタイルをダンサーに伝えること、作品を上演し続けることに繋がると思います。すべてが大切にされるべきこと、つまりは、舞台の上にあり続けなければならないことです。
そこに私が新たな伝統という未来を重ねたいと思っています。今の時代のお客様に向けた新しい伝統を作り、それを未来にまで繋げていきたいです。

――新しい伝統というと、何かイメージはありますか。

ボネッリ ニクソンは振付家でしたが、私は違って、彼のように自分の作品を作ろうとは今は考えていません。私が目指したいのは、クリエイターを応援すること。振付家、作曲家、舞台美術デザイナーたちのチームが彼らの新たなストーリーを創造することを後押ししたいのです。
また、幅広い経験から成るレンズ(視点)を持たせた公演を行っていきたいです。お客様それぞれが持つ日常生活の体験が、舞台上に描き出されているような形を目指します。バレエは、愛、憎しみ、情熱といった大きな感情を表現する点が強みだと信じています。そういった感情を多角的な視点をもって作品として上演することで、バレエ団としての成功を成し遂げたいです。

――ニクソンは、奥様のヨーコ・イチノさんと一緒にノーザン・バレエのバレエ学校を運営していたと思います。ダンサー教育については、どのようにお考えになっていますか。

ボネッリ ノーザン・バレエには、アカデミー・オブ・ノーザン・バレエというバレエ団附属のバレエ学校があります。バレエ団の芸術監督の役目の1つとして、バレエ学校のディレクターも兼任します。
ニクソンは、芸術監督としてはバレエ団と学校の両方から退任することになります。5月からは私が引継いで兼任します。また、バレエ団で『人魚姫』や『くるみ割り人形』などの彼の作品の上演する時には、きっと来てくれるでしょう。

――ダンサー教育方針については、どうお考えでしょうか。

ボネッリ バレエ学校生にとって大切なのは、"旅"をすることだと思います。子どもたちが最初にバレエに触れるのは、地元のバレエ教室かもしれないし、このアカデミーかもしれません。お教室から、バレエ学校、そしてカンパニー入団へという道を作ること。そして、そのもっと先に、振付家、コーチ、芸術監督へと繋がっていくキャリアを実現していくこと。こうしたダンサーとしての旅路を、できるだけ1つの流れとして考えていけるようにしたいのです。
もちろん、場所を変えていくダンサーは多く、ロイヤル・バレエのダンサーの中にはアカデミー・オブ・ノーザン・バレエで学んだ人もいます。そうして所属が変わることもあるけれど、1人の子供が、学校に行き、カンパニーに入り、作品を作り、芸術監督になる、といった流れが阻まれないようにしたいのです。阻む要因は、例えば、経済的な負担かもしれない。バレエはお金がかかりますから、経済的支援が必要な人もいるかもしれません。
もう1つ、私はバレエ界の多様性を高めたいと思っているので、すべての人種のダンサーが活動していてほしいと願っています。それを実現するために取り除くべきバリアはなにかと問い続けています。
そして、もう1つ考えているのは、スポーツ・サイエンスの導入です。最近では、ロイヤル・バレエを含む多くのカンパニーが採り入れているので、ノーザン・バレエでも、まずはバレエ団に、そしてバレエ学校にも導入の話を進めようと思っています。もちろん、バレエの踊りの知識の習得がバレエ学校教育の要となりますが、スポーツ・サイエンスからは、怪我の予防やパフォーマンスを高める効果などが期待できるので、採り入れたいと思います。

――ノーザン・バレエはリーズに拠点を置くカンパニーです。その地域に根ざす、ということも求められると思います。一方で、ツアーカンパニーとしてはイギリスの多くの観客にアピールしなければならないと思います。そうしたことはどのようにお考えでしょうか。

ボネッリ リーズという地域は、とても豊かな文化に囲まれているところです。オペラ・ノース、リーズ・プレイハウス、ヘンリー・ムーア・ミュージアムなどがあり、その中にノーザン・バレエがあります。もちろん、リーズに住むファンの皆様とイギリス国内の別地域のお客様は異なります。物語を届けることは中心であり続けますが、古典作品による表現を重んじる傾向も大切にしていきたいと思います。そして、抽象的な作品もあります。何シーズンかかけて、様々な作品を上演することで、性別・年齢・所得などにとらわれない幅広い方々に向けて公演をしていきたいと思っています。とても理想に満ちていますが、皆様の力を借りて実現していきたいです。

――日本では、スターダンサーの存在がバレエ団の集客力に直結しているケースが多いです。ノーザン・バレエには、フェデリコ・ボネッリというスターダンサーはいないわけですが、集客力という観点から考えると、スターの育成についてどのようにお考えでしょうか。

ボネッリ 私が1番大切にしたいのは、やはり作品のストーリー性です。ナラティブ・バレエは、言葉となって観客に語りかけることができるからです。ということは、作品はダンサーたちにも語りかける力があるということです。ダンサーは、踊りたいと心惹かれる作品があれば、その作品が踊れるカンパニーに集まってくると思うのです。ノーザン・バレエでは「Ballet for Children」という活動を行なっていますが、バレエのことをあまり知らない子どもたちに向けて公演するときは、彼らが知っているお話をモチーフにした作品を上演することで、惹きつけることができます。こうしてストーリーによって、違った層のお客様が集まってきます。これと同じことで、上演するストーリーによってダンサーも引き寄せられてくると思いますし、それがやがて才能溢れるダンサーの獲得につながると信じています。

――ノーザン・バレエでは近年は、日本人ダンサーが多く活躍しています。ぜひ、日本のカンパニーとの交流を深めていただきたいと思います。

ボネッリ はい。それは今日お話ししたかったことの1つでもあります。私が知る限り、ノーザン・バレエは今までに日本公演をしていません。私自身は、日本で踊る機会に多く恵まれたり、個人的には日本人の(小林)ひかると結婚していたり、そして日本という国が大好きです。そして、日本のバレエファンの皆様は本当に温かいです。ですから、ぜひ日本のお客様の前でノーザン・バレエのパフォーマンスをお見せしたいのです。今はまだ構想段階ですが、日本での公演に向かってステップを踏んで行きたいと思っています。日本のお客様にも喜んでもらえると信じています。

――とても楽しみにしております。ボネッリさんは、女性の振付家やクリエーターに活躍の場を与えたい、とおっしゃっていたと記憶しています。芸術監督に就任されたら、具体的なプランをお持ちですか。

ボネッリ もちろんです。女性の活躍の促進は、バレエ界全体で取り組まなくてはいけないことです。例えば、女性の振付家を増やすことは、もっと多様なバックグラウンドを持つ振付家を持つことにつながります。多くのカンパニーで少しずつ前進しているように思います。例えば、ノーザン・バレエのキャシー・マーソンは、最近もっとも活躍している振付家の1人です。他のカンパニーでも同様に少しずつ変化が見えます。私はぜひともこの流れを後押ししたい。とても複雑な課題ではあります。学校から始まるダンサーの一生を考えると、キャシーのようなロールモデルを持つことは大切です。女性でも作品を作る人がいるのだと気づかせることです。バレエ団員として女性振付家と仕事をすると、「あ、これは私もできるかもしれない」と実際に目にして気づくことができます。私自身もダンサーとして長年踊ってきましたが、女性振付家の作品は1つくらいだったと記憶しているので、これは今後のバレエ界が力を入れて取り組むべき課題だと認識しています。
私は、PiPA(Parents and Carers in Performing Arts) というイギリスのチャリティグループに所属しています。PiPAは、ダンサー・俳優・音楽家が家庭を持ちながらパフォーマンスを続けることを促進する団体です。これは非常に重要な問題で、もし女性が家庭や子供をもったら踊るのを辞めてしまうとすると、彼女たちが振付家を目指すことはとても難しくなります。ですからノーザン・バレエは、ファミリー・フレンドリーな組織でありたいと思っています。それこそが、女性の次のステップを応援できると思うからです。考えてみれば、ダンサーの50パーセントは女性ですよね。それがなぜ、振付家や芸術監督になると女性の人数が急激に減ってしまうのでしょう。取り除かないといけない壁があるからだと思います。才能は、性別に関係なく平等に与えられているはずです。続けていけないという点が生じると、壁になるのです。その壁は壊さなければなりません。

――ボネッリさんがノーザン・バレエの芸術監督に就任すると聞いた時、最初にタマラ・ロホのことを思い浮かべました。彼女はサンフランシスコ・バレエの芸術監督に転身しましたが、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)在任中は、たいへん成功し注目を集めていました。ノーザン・バレエもボネッリさんにそうした成果を期待しているのではないでしょうか。

ボネッリ タマラは素晴らしい功績を残したと思います。ENBも彼女の成し遂げたことの数々を讃えています。次に向かうサンフランシスコ・バレエでは何を見せてくれるのかとても楽しみです。きっと成功するでしょう。私もノーザン・バレエに彼女のような変化をもたらすことができたら嬉しいです。私は、大きな展望を持っているし、たくさん努力する心の準備ができているので、思い描いている計画の数々がどのように実現されていくかを待っていてください。ノーザン・バレエは素晴らしいアーティストの集団です。私の役目は、彼らが正当に評価されるように導くことです。

――今、世界ではボネッリさんの世代のダンサーたちが続々と各地の芸術監督に就任しています。どのように感じていますか。

ボネッリ タマラ・ロホ、カルロス・アコスタなど、ちょうど同じ頃に一緒にロイヤル・バレエで踊っていた仲間たちのことを、時々思い出します。彼らは皆、素晴らしいダンサーであって、芸術監督に転身してからも別の素晴らしさを発揮しています。私も気合を入れて頑張らないと! と思っています。

――ノーザン・バレエは、子どものためのバレエに力を入れていると聞いていますが、その点についてはどのように考えられていますか。

ボネッリ ノーザン・バレエの「Ballet for Children」は、6〜7人のダンサーで、イギリス各地で公演を行います。私自身も、ロイヤル・オペラ・ハウス内のリンバリー・シアターで公演を行った時に少し関わりました。上演時間としては30分くらいですが、音楽も生演奏で行うので、短いけれど本格的な"ショートヴァージョンのバレエ"というイメージです。これは、子どもたちにとってとても優しいバレエ鑑賞入門の機会だと思います。例えば、私の娘は普段なら5分以上じっとして座っていることは難しいです(笑) ですから30分というのは、一見短い印象もありますが、子どもたちがバレエを鑑賞するというのには適した長さなのだと思います。ライヴ・パフォーマンスを生演奏の音楽と一緒に楽しむというのも非常に大切なポイントです。また、「Ballet for Children」はイギリス中をツアーする際に、とても小さな劇場にも出向きます。
「Ballet for Children」をバレエ団の本公演にどのように繋げていくかという点に、力を入れていきたい。子どもたちが、まずは「Ballet for Children」を観に来て、翌年には本公演を観にいくように成長する姿は、想像するだけで微笑ましいですよね。観客を"育てている"という感覚です。

――最後に、日本のバレエファンに向けて何かメッセージはありますでしょうか。

ボネッリ とにかく「ありがとうございます」と伝えたいです。私を応援してくださった日本の観客の皆様に感謝の気持ちが尽きません。ご存知のように、ロイヤル・バレエは2022年夏に日本公演を行う予定でしたが、コロナウイルス感染症が原因で2023年6〜7月に変更になりました。(今年7月には英国ロイヤル・バレエ団選抜メンバーによるガラ公演が行われる)もしかすると日本のお客様に感謝を伝える機会を失ってしまうかもしれません。でも一方で、私が日本で出演した最後のステージが、妻の(小林)ひかるのプロデュース公演 (2020年ガラ公演「輝く英国ロイヤルバレエのスター達」)であったことは、よかったなと、胸にジーンとくる心持ちです。
日本のみなさん、本当にありがとうございました。最後に日本に行ってこの想いを伝えられなかったことが、とても残念です。これは1つの「さよなら」ではありますが、また、ノーザン・バレエの芸術監督という新しい私として日本に戻れることを願っています。

――ボネッリさん、本日はありがとうございました。未来のバレエ団のあるべき姿が見えるように感じるお話を伺うことができました。大いに期待しております。

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