ビリー・エリオットを演じたトム・ホランドとジェイミー・ベルがそれぞれ主演するフレッド・アステアの伝記映画が進行中!

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

シルク・ハットに燕尾服を着た端正な紳士の出で立ちがトレードマークで、爽やかに華麗なステップを次々と繰り出すスーパースター、フレッド・アステア。『トップハット』『イースター・パレード』などの作品でハリウッド・ミュージカル映画の黄金時代に君臨したアステアの伝記映画プロジェクトが2本進行中だ。
1作目は俳優トム・ホランドがアステアを演じるソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント製作。このプロジェクトについては、ホランドが主演する新作映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(日本は2022年1月7日公開)の12月5日のロンドン・プレミアで、AP通信のインタビューに答えてアステアの伝記映画に出演することを認めた。
トム・ホランドは、アメリカン・スーパー・ヒーローの実写映画を製作するマーベル・スタジオによる「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズで、主役のトム・パーカー/スパイダーマンを演じて世界中で大いに人気がある。ホランドは幼少期にヒップホップを習っているところをミュージカル『ビリー・エリオット』の振付家に見出さ
れた。その後、バレエやショーダンス、タップダンス、アクロバットなど厳しいトレーニングを2年ほど重ね、2008年、2010年、ロンドンで『ビリー・エリオット』のタイトル・ロールを演じた。ホランドはアメリカの人気テレビ番組「リップシンク・バトル」でも『雨に唄えば』のジーン・ケリーや人気シンガー、リアーナの『アンブレラ』を颯爽と演じている。ホランドは「パイナップル・スタジオ(ロンドンのダンス・スタジオ)にまた通って練習するよ。タップダンスは結構自信があるんだ」(Variety)と語っている。
もうひとつのアステアの伝記映画プロジェクトは、映画『リトル・ダンサー』の主役ビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルと女優アンディ・マクダウェルの娘マーガレット・クアリーが主演するアマゾン・スタジオ製作の『Fred and Ginger(フレッドとジンジャー)』(Variety)。ベルとクアリーは製作も手がける。クアリーはアメリカン・バレエ・シアターの研修の経験がある。2020年12月に報道されたニュースだが、続報が待たれる。

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『気儘時代』1938年、フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャース

フレッド・アステアは劇団を経営する両親の元に生まれ、幼少期から姉アデールと舞台に立ち、ロンドンやブロードウェイに進出する。姉が結婚して引退すると、映画界からも声がかかり、ジンジャー・ロジャーズとコンビを組み、ミュージカル映画史上最高と称されるパートナーシップを体現して観客を魅了した。
ミハイル・バリシニコフはアステアについて「初めてアステアの映画を観たとき、僕はすっかり自信を失ってしまった。アメリカのダンサーはみんな、あんな具合に素晴らしいのかと思ったんだ」(『アステア ザ・ダンサー』)と述べる。
ハリウッドの派手な社交生活からは背を向け、家庭を大切にしたアステアは、マスコミの取材が苦手で、自分の伝記映画を絶対に許可しないという条項が遺言の中にあるほどだった。しかし、世界中を虜にした華麗なダンスが生まれた秘密について、アステアのファンだけにとどまらずダンスを愛する人々や映画ファンであれば誰でも興味を惹かれるのではないだろうか。ビリー・エリオットを演じたトム・ホランドとジェイミー・ベル、個性の異なる二人がそれぞれどのようなアステア像を創り出すのか、期待が膨らむ。

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フレッド・アステア、1941年『踊る結婚式』の宣材写真

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トム・ホランド

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ジェイミー・ベル

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