モンテカルロ・バレエの新シーズン 2021〜22年のラインナップが発表された
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ワールドレポート/その他
香月 圭 text by Kei Kazuki
舞台美術や衣装、そして振付がアーティスティックで斬新! 鬼才ジャン=クリストフ・マイヨー率いるモンテカルロ・バレエが 2021年10月〜2022年1月の新シーズンのラインナップの概要を発表した。2020年11月に予定されていた来日公演が新型コロナ禍の影響で中止となったのだが、世界各地へのツアーも再開された。
『ロミオとジュリエット』振付:ジャン=クリストフ・マイヨー/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
10月21〜23日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
1996年モナコで初演されたマイヨーの代表作であり、世界各地での上演は260回を超え、この作品をレパートリーとするバレエ団は7つにのぼる。クラシック・バレエの技法を用いながらも、物語の現代性やスピーディーでエネルギッシュな動き、エロティシズムやユーモアの絶妙な演出など、すべてが現代人の感性にピタリとはまる。
『ロミオとジュリエット』(J-C.マイヨー振付)©Alice Blangero
『In Memoriam』振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ/音楽:ア・ヴィレッタ
10月29〜31日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
『Bach on Track 61』(新作) 振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
昨年、コロナ感染拡大期に上演されたため、モナコでも多くの観客が見られなかった作品を再演。「故人は私たちの思い出のなかで生き続ける」という主題をコルシカ島の男性コーラス・グループ「ア・ヴィレッタ」の荘厳な歌声に載せて展開していく。『Bach on Track 61』は「時は過ぎゆく」がテーマとなっており、61歳になっても創作欲が旺盛なマイヨーの新作となる。
『In memoriam』(シディ・ラルビ・シェルカウイ振付) ©Alice Blangero
『Bach on track 61』(J-C.マイヨー新作)©Alice Blangero
12月11日からは海外からのゲストやカンパニーを招聘しての公演が予定されている。
『しあわせな日々 』振付:モーリス・ベジャール/音楽:アントン・ウェーベルン、W.A.モーツァルト、フランツ・レハール、ヴィンセント・ユーマンス&アーヴィング・シーザー
12月11、12日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
サミュエル・ベケットの同名の戯曲を基に、ベジャールがカルラ・フラッチとミーシャ・ヴァン・ヘッケのために創作した作品。1998年トリノ初演。ヘッケはベジャールの二十世紀バレエ団で活躍したダンサー、振付家。フラッチもヘッケも惜しまれつつ今年急逝した。今回の公演では、アレッサンドラ・フェリが主人公のウィニーを、ハンブルク・バレエ元プリンシパル カーステン・ユングが夫のウィリーを演じる。フェリ58歳、ユング46歳、様々な振付家たちの作品を踊ってきた二人がベジャールの作品で成熟と知性を見せる。
アレッサンドラ・フェリ『しあわせな日々』(ベジャール振付)©ASH
『ハムレット』imPerfect Dancers Company©Oliver Topf
『ハムレット』 振付: Walter Matteini & Ina Broeckx/出演:ImPerfect Dancers Company/音楽:エツィオ・ボッソ、アントニオ・ヴィヴァルディ、マックス・リヒター、フィリップ・グラス、アルヴォ・ペルト
12月14、15日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
ImPerfect Dancers Companyはモンテカルロ・バレエやリヨン国立オペラでキリアン、フォーサイス、マッツ・エク、オハッド・ナハリン、アンジュラン・プレルジョカージュなどの作品に出演したWalter MatteiniとIna Broeckxの二人がイタリアで旗揚げしたダンス・カンパニーで、歴史や文学に多く題材を求めた作品が多い。
『Ce que le Jour Doit à la Nuit (日が夜に負っているもの)』振付:エルヴェ・クビ Hervé Koubi/音楽:マクシム・ボドソン、ハムザ・エル・ディン、クロノス・クァルテット、J.S.バッハ、スーフィー音楽
12月16、17日 グリマルディ・フォーラム内サル・プランス・ピエール
薬剤師の免許を持ちながらフランス北西部カーンの国立舞踊センターでカリーヌ・サポルタのもとで学ぶなど、ダンサーとしての修行を重ねたエルヴェ・クビは2000年に振付を開始。フランスで生まれ育ったクビが西欧から見て東方に位置する自分のルーツであるアルジェリアに旅して、自身のなかに東西2つの文化を感じたという。出演する男性ダンサーたちによる群舞はヒップホップを基盤としつつも、繊細なバレエの演出が加わり、エネルギッシュでありながら優美さも感じさせる斬新な感覚の舞台を作り上げている。
『Ce que le jour doit à la nuit 』Hervé Koubi company ©Nathalie STERNALSK
『La Danse du Soleil』ジュネーブ・カメラータ©Leo Paul-Harlier
『La Danse du Soleil(太陽のダンス)』振付・ダンス出演:フアン・クルス・ディアス・デ・ガライオ・エスナオラ Juan Kruz Diaz de Garaio Esnaola/出演・演奏:ジュネーブ・カメラータ Geneva Camerata、音楽:J-B・リュリ『町人貴族』オーケストラ組曲、W.A.モーツァルト『交響曲第40番 ト短調』
12月18、19日 モンテカルロ歌劇場サル・ガルニエ
楽曲を舞台上で演奏する「ジュネーブ・カメラータ」のメンバーと一人のダンサーによるセッション作品。演奏家が舞台を動き回りながら演奏したり、ダンサーが演奏家を床に横たえたり、オーケストラの通常の座席配置での演奏の最中にダンサーが背中を反らしたりと出演者たちは自由闊達な動きを展開する。振付・出演のフアン・クルス・ディアス・デ・ガライオ・エスナオラはスペインのバスク地方出身で音楽を学びカウンター・テナーとしての活動を経て、振付家マルセロ・エヴェリンと出会い、表現の手段としての身体の表現性に着目し、舞踊に開眼。「サシャ・ワルツ&ゲスト」のダンサーとして2013年マリインスキー劇場でのサシャ・ワルツ版『春の祭典』に出演。「ジュネーブ・カメラータ」は世界各地で国際的に活躍する若手演奏家のグループで、クラシックからジャズ、ロック、エレクトロなど多彩なジャンルの音楽と演劇やダンス、視覚芸術などを組み合わせた様々なステージを制作している。「ジュネーブ・カメラータ」の音楽・芸術監督はイスラエルの指揮者デヴィッド・グレイルザンマーが務める。
『くるみ割り人形』振付:ジャン=クリストフ・マイヨー/音楽:P.I.チャイコフスキー/演奏:モンテカルロ交響オーケストラ、指揮:山田和樹
12月28日〜1月5日 グリマルディ・フォーラム内サル・デ・プランス
あるダンス・カンパニーが舞台で、主役のクララと兄のフリッツの両親が経営している。クリスマスの夜、妖精ドロッセルマイヤーがプレゼントをもってカンパニーに現れる。それはイマジネーション溢れる振付家だった...。この作品は2013年、マイヨーがモンテカルロ・バレエ在籍20周年を記念して制作された。
『くるみ割り人形』(J-C.マイヨー振付)©Hans Gerritsen
映画『イサドラの子どもたち』(ダミアン・マニヴィル監督)©DR
モンテカルロ・バレエでは、毎年恒例のワークショップやマスタークラス・シリーズでも様々な振付家についての学びの場を提供している。
12月19日 グリマルディ・フォーラム内サル・カミーユ・ブラン
映画『イサドラの子どもたち』上映会
コンテンポラリー・ダンサー出身のダミアン・マニヴィルが監督を務め、2019年ロカルノ国際映画祭最優秀監督賞を受賞。20世紀初頭に現れたモダンダンスの創始者、イサドラ・ダンカンが不慮の事故で子どもたちを亡くしてしまい、苦悩しながらも『母』という作品を生み出した。それから約100年後、この作品に4人の女性が対峙する、というドキュメンタリー・タッチの物語。日本でも2020年に劇場公開された。
モンテカルロ・バレエの海外ツアーは10月フレジュス(フランス)で『じゃじゃ馬馴らし』、11月ドバイで『Core Meu』、12月ヴェネツイア、ラ・ファニーチェで『LAC』、1月ヴァリャドリード(スペイン)で『ロミオとジュリエット』が上演される。
2021年新シーズンよりジェローム・ティスランJerome Tisserandとローラ・ティスラン Laura Tisserand がモンテカルロ・バレエへ入団した。このカップルはパシフィック・ノース・ウェスト・バレエ(PNB)のプリンシパルで、二人はマイヨー版『ロミオとジュリエット』に出演した経験があり、ジェロームはマイヨー版『シンデレラ』で王子を演じたことがある。ジェロームはパリ・オペラ座バレエ学校、スクール・オブ・アメリカン・バレエ卒業後、マイアミ・シティ・バレエで研修生となり、2007年 PNBに加入した。ローラはルイジアナ出身で スクール・オブ・アメリカン・バレエ卒業後、2003年に PNB に入団。二人とも2014年より主役級のソリストとなった。世代交代が進むモンテカルロ・バレエにおける新たな一員となった二人の今後の活躍が楽しみだ。7月に作品『TSUNAGU』を発表し、カンパニーの中心的存在でもある小池ミモザ、そして田島香緒里の二人の日本人ダンサーにも要注目だ。
ローラ・ティスラン©Alice Blangero
ジェローム・ティスラン©Alice Blangero
モンテカルロ・バレエの付属校で近年は永久メイも学んだプリンセス・グレース・アカデミーでは、新年度が9月にスタートし、20名の生徒が新しく入学した。新入生のうち約半数が日本を含む世界各地(チェコ、メキシコ、ルーマニア、ドイツ、スペイン、ニュージーランド、韓国、ブラジル、ポルトガル、オーストラリア、フランス)から留学している。新年度から新たに加わった教師陣には、元ハンブルク・バレエ・プリンシパルのカーステン・ユングがミシェル・ラーンに代わって男子クラスの担任となり、元モンテカルロ・バレエのリサ・ジョーンズが12月にカロル・パストレルのクラスを引き継ぐ。11月のモンテカルロのアトリエ公演で新人たちが初舞台を踏み、上級生の成長も確認できる。12月と年明け1月、モナコ・グリマルディ・フォーラムでマイヨー版『くるみ割り人形』のセレナーデに生徒たちが出演する。12月と翌年5月に審査員の前で実技試験が行われ、翌年6月に一年間の学習の総括として恒例のガラ公演が行われる。
プリンセス・グレース・アカデミーの公演より©Alice Blangero
モンテカルロ・バレエ公式サイト
https://www.balletsdemontecarlo.com/en
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