リード・プリンシパルとして活躍する高橋絵里奈を始め、イングリッシュ・ナショナル・バレエの新シーズンを彩る日本人ダンサーたち

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)でリード・プリンシパルとして活躍する高橋絵里奈は、今年カンパニー在籍25年目を迎える。この機会に、ENB公式サイトでは彼女のキャリアを振り返っている。高橋は2007年リード・プリンシパル昇進。新人ダンサー、振付家、音楽家、アーティストへの支援を提唱するNew English Ballet Theatreのアーティスティック・パトロンも務めており、ENBの同僚たちからは、その勤勉な姿勢を称賛する声が後を絶たない。芸術監督タマラ・ロホは「この25年間を通して、彼女の芸術性や寛大さ、プロ意識の高さ、バレエへの完全な献身といった特質はENBのメンバー全員にとって常に模範となるような存在でした。彼女の踊りを観た何千という観客にも喜びをもたらしています」と賞賛している。2021〜22年シーズンでは、高橋絵里奈はアクラム・カーンの『ジゼル』に続く2作目の全幕バレエ "Creatures" のほか、『くるみ割り人形』『ライモンダ』への出演が予定されている。

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「エチュード」高橋絵里奈 Photo by Angela Kase

ENBのバレエ・オン・デマンド配信コンテンツでは、現在、『海賊』(2015)で高橋絵里奈がギュリナーラを演じており(メドーラ:アリーナ・コジョカル、コンラッド:ワディム・ムンタギロフ)、有料視聴できる(視聴料800円)。また高橋が出演したシディ・ラルビ・シェルカウイ振付 "Laid in Earth" も配信されている(視聴料370円)。
高橋絵里奈は北海道の釧路バレエアカデミーに学び、イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学、1996年ENB入団。2000年ロイヤル・アルバート・ホールでのデレク・ディーン版『眠れる森の美女』の初日の主役に抜擢された。同年、クリストファー・ハンプソン振付『くるみ割り人形』のクララを演じた際、プリンシパルに昇進。2001年英国批評家協会最優秀女性新人ダンサー受賞も受賞している。

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「エチュード」高橋絵里奈
Photo by Angela Kase

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「海賊」高橋絵里奈
Photo by Angela Kase

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「海賊」高橋絵里奈
Photo by Angela Kase

ENBの2021〜22年シーズンの人事も発表された。ローザンヌ国際コンクール2021で入賞した淵山隼平とアシュリー・クパルの2名が新たに入団し、国際的なゲスト・スターとして活躍するマリア・コチェトコワがカンパニーへ再加入する。一方でソリスト康 千里(こう せんり)とバレエ・ミストレスの勝又ガンリー・まゆみが退団することになった。16年間ENBで教鞭を取ってきた康千里はソリストとして舞台に立つ傍ら、教師としてのキャリアも並行して進めてきており、「エマージング・ダンサー」に出演する新人たちのコーチも務めている。新シーズンからは現役を引退し、カンパニー付属のイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールの1学年女子のバレエ・テューターに着任、教職専任となる。勝又ガンリー・まゆみは2019年からENBでバレエ・ミストレスに着任していた。

ENBの2021〜22シーズンのラインナップは以下のとおり。
"Creature" アクラム・カーン振付(世界初演)2021年9月23日〜10月2日サドラーズ・ウェルズ劇場
『くるみ割り人形』ウェイン・イーグリング振付 2021年12月16日〜22年1月8日 ロンドン・コロシアム
『ライモンダ』タマラ・ロホ新演出版 (世界初演)2022年1月13日〜1月26日 ロンドン・コロシアム

ENBでは過去11年に渡ってカンパニーの新星ダンサーたちを紹介するミニ・コンクール「エマージング・ダンサー」を開催してきた。カンパニーの同僚のメンバーから推薦を受けた6名のダンサーが審査員と観客の前で演技を披露し、選考によりエマージング・ダンサー賞を受賞する。これまでには加瀬 栞(2011年)、金原里奈(2017年)も受賞している。今年はエマージング・ダンサー賞および観客賞受賞者たち12名の出演によるガラ公演が、カンパニーの本拠地イースト・ロンドンのMulryan Centre for Dance内のHolloway Production Studioより無料ライブ配信される。

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『くるみ割り人形』金原里奈, Fernando Carratala Coloma ©Laurent Liotardo-English National Ballet

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"Laid in Earth" シディ・ラルビ・シェルカウイ振付/高橋絵里奈, James Streeter-part-of-ENBs-Reunion- ©Laurent Liotardo-English National Ballet

Emerging Dancer: A Celebration
エマージング・ダンサー:ア・セレブレーション
日本時間2021年9月3日明け方3時より 期間限定にてイングリッシュ・ナショナル・バレエFacebookおよびYouTubeで期間限定無料ライブ配信
《演目および出演者》
・Ivana Bueno ( 2020年エマージング・ダンサー賞) , Victor Prigent (2020年観客賞)
オーギュスト・ブルノンヴィル振付『ラ・シルフィード』より抜粋
・金原 里奈 Rina Kanehara (2017年エマージング・ダンサー賞), Georgia Bould (2017年観客賞) , Alice Bellini (2018年観客賞)
Nikita Goile振付新作
・Alison McWhinney, Junor Souza (2014年エマージング・ダンサー賞同時受賞)
リアム・スカーレット振付 "No Man's Land"よりパ・ド・ドゥ
・Aitor Arrieta (2017年エマージング・ダンサー賞) , Julia Conway (2019年エマージング・ダンサー賞)
ヴィクトル・グゾフスキー振付『グラン・パ・クラシック』
・Rhys Antoni Yeomans (2019観客賞)
Mlindi Kulashe振付新作
・加瀬 栞 Shiori Kase (2011年エマージング・ダンサー賞) , Daniel McCormick (2018 年エマージング・ダンサー賞)
ワシリー・ワイノーネン振付『パリの炎』よりパ・ド・ドゥ

◆イングリッシュ・ナショナル・バレエ公式サイト
https://www.ballet.org.uk/

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『エチュード』加瀬栞-English National Ballet in Harold Lander's Etudes as part of the Company's 70th Anniversary Gala ©Bill Cooper

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『海賊』ギュリナーラを演じる高橋絵里奈©ASH-English-National-Ballet

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