ルグリ舞踊監督によるミラノ・スカラ座の初シーズン、2021〜22のラインナップが発表された

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

ミラノ・スカラ座が2021〜22のラインナップを発表した。記者会見には理事長を務めるミラノ市長ジュゼッペ・サーラ、総裁ドミニク・マイヤー、音楽監督リッカルド・シャイーと並んで舞踊監督マニュエル・ルグリが列席。ルグリ監督がイタリア語で2021〜22バレエ・ラインナップを読み上げ、その模様はスカラ座公式Facebookでも配信された。
ルグリは「私にとって初めてのスカラ座のシーズンでは、その歴史や上質な芸術的価値を尊重しつつ、現在、世の中を動かしている新たな声を受け入れる進取の気風も取り入れていきたい」と来シーズンのマニフェストについて語った。

まず2021年12月中旬に開幕する新シーズンの最初の作品は『ラ・バヤデール』。スカラ座ではこれまでナタリア・マカロワ版を上演してきていたが、新シーズンでは1992年ルドルフ・ヌレエフがパリ・オペラ座に振付けたヴァージョンを基に、ルイーザ・スピナテッリによる舞台セットと衣装を採用した新しいプロダクションとなる。ヌレエフ版がパリ・オペラ座以外で上演されるのはスカラ座が初めてとなる。2022年初頭にはスヴェトラーナ・ザハーロワの客演が2回予定されている。ヌレエフが1965年にスカラ座に初めて客演した演目も『ラ・バヤデール』だったという。

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『ラ・バヤデール』© Marco Brescia Teatro alla Scala

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『Anima Animus』サンフランシスコ・バレエ © Erik Tomasson

ルグリが目指す「時代の新しい風」に乗ったコンテンポラリー・ジャンルでは、ドイツ出身のフィリップ・クラッツ振付作品『Solitude Sometimes(時として孤独)』がスカラ座で世界初演される。英国のオルタナティブ・ロックバンド レディオヘッドおよびそのボーカルのトム・ヨークによるエレクトリックな響きとエジプト神話のモチーフを用いて、一人ひとりが味わうカタルシスや再生をテーマとしている。デヴィッド・ドーソンの『Anima Animus (アニマ・アニムス)』は、心理学者ユングの「アニマ(男性の心に無意識に潜む女性)」の概念に着想を経て、「対称」について表現した作品で、音楽はエツィオ・ボッソの「バイオリン協奏曲第一番」。2018年にサンフランシスコ・バレエで初演されている。
ウェイン・マクレガー振付『Afte Rite』は2018年アメリカン・バレエ・シアターで初演され、ストラヴィンスキーの『春の祭典』のスコアの新たな解釈を試みる作品。また、マクレガー振付のストラヴィンスキーの音楽による『結婚』も上演される。

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『シルヴィア』終演後、スカラ座デビューで喝采を受けるルグリ © Brescia e Amisano Teatro alla Scala

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『シルヴィア』マルティナ・アルドゥイーノ、クラウディオ・コヴィエッロ © Brescia e Amisano Teatro alla Scala

2022年5月に上演される『シルヴィア』は、ルイ・ラメントが振付け、1876年にパリ・オペラ座で初演された。狩りの女神ディアナに仕えるニンフ、シルヴィアと羊飼いのアミンタとの恋物語。ルグリがウィーン国立バレエ芸術監督在任中の2018年に新たに振付け、スカラ座と共同制作された作品である。
『ジゼル』はジャン・コラーリとジュール・ペローによる原振付の復元をフランスの名バレリーナ、イヴェット・ショヴィレが手がけた。彼女は1950年スカラ座で『ジゼル』を主演している。ジョン・クランコ振付『オネーギン』にはロベルト・ボッレがゲスト主演する予定。そのほか、バランシン振付『ジュエルズ』、スカラ座バレエ学校の公演が予定されている。

ルグリはドミニク・マイヤースカラ座総裁について、「ウィーンからスカラ座へ、この並外れて優秀なパートナーとの仕事は限りなく楽しい。尊敬の念とともに新たな冒険への準備は整った」と語った。マイヤーとルグリのコンビは、ウィーン国立バレエ団以来続いており、2020年にともにスカラ座に活躍の場を移して、その絆はさらに強まっているようだ。

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『ジゼル』ニコレッタ・マンニ、ティモフェイ・アンドリヤシェンコ © Brescia e Amisano Teatro alla Scala

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『オネーギン』ロベルト・ボッレ
© Brescia e Amisano Teatro alla Scala

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『ジュエルズ』より「ルビーズ」
© Brescia e Amisano Teatro alla Scala

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『Bella Figura』
© Marco Brescia Teatro alla Scala

■ミラノ・スカラ座バレエ 2021〜2022年シーズン・ラインナップ

『ラ・バヤデール』ルドルフ・ヌレエフ振付・演出
2021年12月14日 30歳以下向けプレビュー
2021年12月15日〜2022年1月8日
スヴェトラーナ・ザハーロワ出演:2022年1月5、8日

「ドーソン/クラッツ/キリアン」
2022年1月25〜31日
『Anima Animus (アニマ・アニムス)』デイヴィッド・ドーソン振付
『Solitude Sometimes( 時として孤独)』フィリップ・クラッツ振付/世界初演
『Bella Figura(ベラ・フィギュラ)』イリ・キリアン振付

『ジュエルズ』ジョージ・バランシン振付
2022年3月11〜24日

『シルヴィア』ルイ・メラント原振付/マニュエル・ルグリ振付
ミラノ・スカラ座=ウィーン国立歌劇場共同制作
2022年5月11〜26日

「スカラ座バレエ学校公演」
2022年5月15〜17日

『AfteRite-Les noces』ウェイン・マクレガー振付
2022年6月24日〜7月7日

『ジゼル』ジャン・コラーリ=ジュール・ペロー振付/イヴェット・ショヴィレ復元版
2022年7月9〜16日

『オネーギン』ジョン・クランコ振付
2022年9月14〜30日
ロベルト・ボッレ出演:2022年9月14、17、 20、 23日

◆ミラノ・スカラ座公式サイト
https://www.teatroallascala.org/en/index.html

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