ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス創立100周年記念の特別展がヴィクトリア&アルバート博物館で開催中

ワールドレポート/その他

香月 圭 text by Kei Kazuki

イギリスでは新型コロナウィルス対策の規制が2021年5月17日に緩和され、劇場に加え美術館も再開の運びとなった。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)も2021年5月19日から再開し、V&Aにほど近いケンジントン宮殿に住む英国王室のキャサリン妃も再開初日に来館し、「不思議の国のアリス展(Exhibition of Alice: Curiouser and Curiouser)」を鑑賞した。このアリス展ではクリストファー・ウィールドン振付による英国ロイヤル・バレエの『不思議の国のアリス』の舞台写真も展示されている。

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『火の鳥』をフォンテインに指導するカルサーヴィナ Photo by Douglas Elston, 1954.

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マーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフ、RADガラのリハーサルの合間に (C) GBL Wilson, 1963

V&Aではほかにも様々な特別展示が行われているが、2021年9月12日までロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)創立100周年記念の特別展「On Point: Royal Academy of Dance at 100」が無料で開催されている。多くの写真と映像資料と並んで衣裳、デザイン画、ポスターなど展示物は60点以上。RADとV&Aによるこの共同企画は、英国バレエの教育機関のRADの歴史を辿り、歴代の総裁となった英国を代表するダンサーたちの足跡を軸に展示されている。1920年にRADが創立され、初代総裁アデリーン・ジュネは就任後15年間に英国王室の勅許を得ることに成功。その後1954年にマーゴ・フォンテインが2代目の総裁となり、1991年に3代目アントワネット・シブレー、そして2012年からはダーシー・バッセルが4代目の総裁を務めている。また、タマーラ・カルサーヴィナ、ルドルフ・ヌレエフといったバレエ史を語るうえで欠かせない、伝説のダンサーたちの写真をはじめとした資料も見逃せない。

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アデリーン・ジュネ『薔薇と蝶の夢』(C) Hugh Cecil

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ウィルヘルムによる『薔薇と蝶の夢』の衣装デザイン© Victoria and Albert Museum, London

【RAD創立100周年記念の特別展「On Point: Royal Academy of Dance at 100」主な展示物】
・英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』公演で全盛期のヌレエフが着用した衣裳。カール・トムズ Carl Tomsによるデザイン(1963年)
・RADの教師たちが制作した、子どものためのバレエ教育シラバスを模範演技とともにフォンテインが紹介する映像の一部が今回の特別展にて初公開される。1972年にフォンテインの兄フェリックスによって撮影されたフィルムで、RADの未整理の資料のなかから最近発見された。
・アルフレッド・ギルバート(ロンドンのピカデリー・サーカスの噴水のエロス像を設計したことで知られる彫刻家)による「アルレキナーダ像」。1924年、バレエ・リュスで活躍したポーランド出身のダンサー、スタニスラフ・イジコフスキーよりRADに寄贈。
・ダーシー・バッセルが引退公演で着用したトウシューズ(2007年)
・ケネス・マクミラン振付『パゴダの王子』の上演時に20歳のダーシー・バッセルが着用したドレス

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フォンテインと子どもたち(c) Felix Fonteyn, 1972

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アルレキナーダ像 (C)Dance Gazette Ali Wright

◆ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)創立100周年記念の特別展
 "On Point: Royal Academy of Dance at 100"
https://www.vam.ac.uk/exhibitions/on-point-royal-academy-of-dance-at-100
ヴィクトリア&アルバート博物館 103〜106展示室「シアター&パフォーマンス Theatre & Performance」 にて公開中。開催期間は2021年9月12日まで/入場無料

V&Aはアートとデザイン分野の世界最高峰のコレクションを誇り、古くは5000年以上昔から現在に至るまで人々が創り続けてきた作品230万点以上を所蔵する。建築・家具・ファッション・織物・写真・彫刻・絵画・宝飾品・ガラス製品・陶磁器・ブックアート・アジアのアートやデザイン、そして劇場とパフォーマンスの分野における所蔵品は最大規模を誇る。
V&Aの「シアター&パフォーマンス(Theatre and Performance)」部門では、演劇、ダンス、オペラ、サーカス、人形劇、ミュージカル、パントマイム、ポピュラー音楽など英国のあらゆる分野のパフォーミング・アーツの歴史的資料と実演の記録が保管・展示されている。劇作家であり,、アマチュア女優の傍ら演劇関係の資料を蒐集・整理・管理するアーキヴィストであったガブリエル・エントヴェンによる広範囲に渡るコレクションがV&Aに寄贈されたことによって、英国の演劇関連コレクションが1920年代から始動することになった。劇団や演者、舞台演出家や舞台デザイナー、民間の蒐集家が所有していた書籍や原稿、公演録画映像などの所蔵品がV&Aに寄贈され、コレクションはさらに拡大。現在、V&Aが所有する衣裳は3,500点を超え、アクセサリーは18世紀半ばのものも存在する。
V&Aの「シアター&パフォーマンス(Theatre and Performance)」部門ではバレエの衣裳やポスター、デザイン画、写真、映像などの歴史的資料も数多く所蔵している。なかでもバレエ・リュス関連のコレクションは有名で、2010年にディアギレフとバレエ・リュスの特別展も開催した。バレエ・リュスのコレクションの一部は現在、オンラインで公開されている。衣裳の概要、歴史、生地や様式、形状、装飾、サイズなどについての詳しい説明もあり、オンライン・カタログのように閲覧できる。このコレクションのハイライトはピカソのデザインによる『パラード』(レオニード・マシーン振付/1917年)の中国人魔術師の衣裳やピカソのデザインによる『青列車』(ブロニスラヴァ・ニジンスカ振付/1924年)の舞台幕、フォーキン振付作品『ダフニスとクロエ』(1912年)レオン・バクストによるデザインの衣裳などである。

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V&A博物館外観(C)Victoria and Albert Museum London MED 2012年5月

ヴィクトリア&アルバート博物館「ディアギレフとバレエ・リュス」コレクション
https://www.vam.ac.uk/collections/diaghilev-and-the-ballet-russes

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